読了:カペー朝ーフランス王朝史1 (講談社現代新書) [ 佐藤 賢一 ]



フランスの王朝としては、メロヴィング朝、カロリング朝、カペー朝、ヴァロア朝、ブルボン朝と続くわけだけれども、いわゆるフランス王国として成立してくるのはカペー朝からの流れと考えてよいかと。3世紀半にわたり父親から子への相続がずっと続いたことがすごい(それにしても男子の名はことごとく、ルイ、フィリップ、シャルル)。イール・ド・フランス界隈の小さな領地しかなかった王領も中世十字軍時代を経て、フランス王国内の各諸侯、ノルマン・コンクエストによりフランスにも領地をもつイギリス王、また聖会の頂点に立つローマ教皇と対立しながらもフランスの多くの地を王領として持つまでに成長していく。

カペー朝ーフランス王朝史1 (講談社現代新書) [ 佐藤 賢一 ]

読了:ファンタジーランド 【合本版】狂気と幻想のアメリカ500年史【電子書籍】[ カートアンダーセン ]



今、とても話題になっている書籍。事実よりも、自分が望む幻想を真実として信じ込む現代アメリカ人の特質を、その建国からの歴史とともに、主に宗教の変遷を軸に描いた作品。「フェイクニュース」とか「オルタナティブ・ファクト」なんて言葉が一般に使われるようになる今日の現象は、アメリカの建国以来の歴史を振り返ってみればさもありなんということか。世界で一番キリスト教的な国アメリカはいかにして生まれて形成されたのか。

歴史上初の、プロテスタントによる実験国家としてはじまったアメリカ。何を信じるか、何をするかを自分自身で決められる個人主義国。なんでもショービジネス化(宗教でさえも)し、発達したエンターテイメントメディアで拡散することにより、自分の好きなことを好きなようにとらえるファンタジーランドと化していくアメリカの歴史。一方で建国の父たちに代表される啓蒙主義、合理主義を尊重したきた国でもある。この両者を危うくなることはあってもバランスをとってきたのがアメリカという国なのだが、1960年以降、自分が信じているものに反することは真実ではないとする風潮に大きく傾いていく。良識を権威ととらえ、それを嫌うアメリカ人の気質が、極端な空想や陰謀論、疑似科学をますます受け入れていく。

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」。現在の偏りが再びバランスを戻すこともあるかもしれない。しかし、それを待っている時間はない。ファンタジーランドの住民であってもよいが、その人が信じているものが人に危害を加えるようなものとなってしまうものであってはならない(ワクチン接種が自閉症を起こすと信じて子供のワクチン接種を拒否するなど。これは公衆衛生的に害をなす)。

ラフは、創造論(インテリジェント・デザインを含む)、進化論の対立のくだりはとてもおもしろく読んだ。こんなことが大真面目に裁判沙汰になるアメリカってクレイジーだなとは前々から思っていたけれども、この本を読んで、なるほどそういうバックグランドがあるなら、科学も宗教も考え方(一つとしての意見=その人にとっての真実)なんだから、創造論を本気で信じちゃっている人がいるってそういうことなんだなと思ったり思わなかったり。

ファンタジーランド 【合本版】狂気と幻想のアメリカ500年史【電子書籍】[ カートアンダーセン ]