ご如才なきことながら、仕事納めさせていただきます

職場的には30日が年内最終出勤日なのだけれども、月曜日だけ出勤するのもあれなので有休を取得することにして、本日を年内最終出勤としました。本日仕事納めです。

午前中に部内の方から「この作業お願いしますね」メールをいただいたのであるが、そのメールの文言がものすごく固く、そのあまりにもの固さに失神しそうになった。

メールのタイトルを指して「頭書の件」とか、「~頂き度くようお願い致します。」「~できるように取り進め頂けると幸甚です。」とか。締めくくりは「ご如才無き事ながら、~もお願い致します。」

ちなみに「ご如才なきことながら」というのは、「既に十分ご承知とは思いますが、念のために申し上げますと」みたいな感じの意味(知る人ぞ知る官僚表現)。実用に供されているのを見たのは初めてだよ。

そんな大したことは頼まれていないたった数行のメールにここまで書かれると、もはや慇懃無礼の極みである。むしろ才能である。差出人のことを変な奴だとは思ったけれども、自分と同類・同じ匂いの人かもとか思ったことは内緒。

僕はやっぱり英語ができない – 「リコピン」とはトマトなどに含まれる赤い色素である

人間の脳はうまく聞き取れなかった表現があると、自身の知っている語彙や言い回しで補おうとする傾向があることは多くの人が経験しているのではなかろうか。これは日本語だけでなく不慣れな言語に対しても起こりうるわけで。ラフの場合は英語のリスニングがまったくできない。

さて、ミュージカル「オペラ座の怪人」の主要曲に「Think of me」というナンバーがある。この歌い出しがしばらく前まで「リコピ~ン」と聞こえて仕方がなかったのである。まぁ聞いてみてくれたまえ。

いや、もちろん曲のタイトルにもなっている「Think of me」と言っているわけであるが(歌い出しの言葉をそのままタイトルにする例は多いからね)、つい先ごろまでラフには「リコピ~ン」だったのである。最近ようやく「チンコーミー」くらいには聞こえるようになった。

wikipediaの「リコペン」の項

lycopeneを含む例文として心惹かれたもの

To provide an effective method for utilizing tomato juice produced as a byproduct in obtaining lycopene from the tomato. – 特許庁

He always says what he wants to say.

クリスマスでも仕事はあって、クリスマスでもS吹奏楽団練習(吹き納め)。

練習後、いつものように仲間とご飯&飲み会なわけです。そこでA君とO君から、「ラフの言動は容赦がない」と評される。A君が「ラフは一向に忖度しないよね~」と言えば、すかさずO君が「例えば子供が遊んでいるところにも、大人が本気でかかっていくようなところあるよね」と突っ込む。もちろんラフも返す「でも(ラフの言動には)愛があるでしょ?(<自分で言うな)」。A君O君「うん、確かに。だから嫌われないんだよね」。うわぁ~い、ほめられたぜぃ。愛されキャラ認定いただきました(<そこまではほめてない?)。割と言いたいことは素直に口にし、好き勝手にふるまいながら、ラフはもうかれこれ10年以上S吹奏楽団の末席を汚させていただいております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

Silent night, holy night

マライア・キャリーさん(マラが嫌いなキャリーさんという下ネタもございますが)といえば、この季節やっぱり「恋人たちのクリスマス」なんだと思います。今年、リリースから25年にして初の全米シングル・チャート1位になったとか。そうかぁ、みなさん毎年毎年もう聞き飽きたよって感じながらも、やっぱりこの能天気にハッピーで軽薄な曲(<褒めている)を愛しているのね。

さて、日本でこのシーズン飽きるほど耳にするのは山下達郎の「クリスマス・イブ」ですよね。

歌詞の中にある「必ず今夜なら 言えそうな気がした」ですが、どういうことを言えそうな気がしたのでしょうか。直後に続く「んォォォ、Silent night, ウォ~~イェン、holy night」と言えそうな気がしたのなら結構シュールな人です。

googleで「クリスマス・イブ」の歌詞を表示する

この曲の半分近くを占める「Silent night, holy night」ってのは、民謡における合いの手(「ハイハイ」とか「ホイ」とか「ヨッコラセー」の類)なんで、歌詞の意味をとらえるためだけならとりあえず全部外してOK。そうすると、びっくりするくらいこの曲の歌詞は短いことに気づきます。多くを語らないほのめかし美学ともいえる。

さて、スリムになったところで、何が言えそうだったのか読み返してみると、「叶えられそうもない」「心深く 秘めた」「君への想い」なんでしょうね。それを「必ず今夜なら 言えそうな気がした」のに、「きっと君は来ない」。「必ず」言える(気がした)のに、相手である「君」が来ない確信度は「きっと」なんだ。そういう「ひとりきりのクリスマス・イブ」。

Merry Christmas!皆様に沢山の幸せが訪れますように!

読了:進化の意外な順序[アントニオ・ダマシオ/高橋洋(翻訳家)]

脳と心の理解を主導してきた世界的神経科学者がその理論をさらに深化させ、文化の誕生に至る進化を読み解く独創的な論考。

第1部 生命活動とその調節(ホメオスタシス)
第1章 人間の本性
第2章 比類なき領域
第3章 ホメオスタシス
第4章 単細胞生物から神経系と心へ

第2部 文化的な心の構築
第5章 心の起源
第6章 拡張する心
第7章 アフェクト
第8章 感情の構築
第9章 意識

第3部 文化的な心の働き
第10章 文化について
第11章 医学、不死、そしてアルゴリズム
第12章 人間の本性の今
第13章 進化の意外な順序

神経科学者アントニオ・ダマシオの集大成ともいえる作品らしいが、科学的な見地からまとめられたものではなく、科学の言葉を使った彼の思索である。読んでひどくがっかり。後半の文化文明論と結び付けたあたりは比較的おもしろかったが、でもそれならユヴァル・ノア・ハラリ読む方がいいかな。とにかくやたらと難解な表現に走っていて(わざと?)、「言い換えると」とかいいながらふわっとした気取った文学的表現で例えていてますますわかりにくくなっていたり、「なんじゃこりゃ!!」の連続。

自分のおつむがポンコツなんだろうが、前半で彼が言いたいのはこういうことらしい(自分が何とかくみ取ったのは以下)。

感情や意識といったものは高等な生物である人間にしかないものと思われている。生物進化的に考えてみると、そもそも生物は自己を維持するための代謝活動としてホメオスタシスという機構を太古の細菌の頃から備えている。生命を維持するためには内部環境の異常や外界からの刺激を検知する必要があり、それらに対してホメオスタシスは発動され、刺激物から身を守ったり、原因を避けたり逃げたりという運動を起こす。やがて、生命を脅かすものに対しては不快、生存に適した刺激には快といった、将来的に感情につながるものの萌芽を持つようになる。神経系が発達してくると、自己の内外環境を、統合されたイメージ(視覚情報とは限らない)として知覚するようになり、その認識が意識となる。

「こういう科学的知見があるからこういう仮説を立てられる」とかいう話ではなく、断片的に切り取られた一場面の現象のみを羅列して思索を積み上げていくだけ。うーん、これは科学ではないな。

とにかく一読しただけでは「何をおっしゃっているのかしら?」な難解な表現てんこもりの本書から、とりわけ狼狽した個所の引用をいくつか行ってみる。(それはあくまでもラフの読解力が足りないだけというのは承知の上だ)

治療Aと治療Bによって痛みに対処する場合、あなたは、どちらの治療が痛みをより効果的に緩和するのか、完全に静められるのか、それとも効果がないのかを、感情に基づいて判断するはずだ。感情は、問題への対処を促す動機として、そしてその対処の成功、失敗を追跡する監視役として機能する。

酷暑に対する賢明な文化的反応は、おそらくは木陰で過ごすことから生まれ、それからうちわを生み出し、やがてはエアコンを発明するに至った。これは、ホメオスタシスに駆り立てられたテクノロジーの発展の好例と見なせよう。

その結果に基づいて脳が生体の変化した幾何学を表わす表象を構築すると、私たちはその変化を感知し、それに関するイメージを形成することができる。

え?なんだ?そうか?そうなのか?の連続をお楽しみいただけただろうか?

私がここで言いたいのは、文化的反応の形成に不可欠な一連の行動戦略から構成される社会性は、ホメオスタシスが備える道具の一つだということである。社会性は、アフェクトに導かれて人間の文化的な心に入って来るのだ。

「言いたい」ことらしいけれども分かった?何かを「言いたい」のは最初にそう宣言しているからわかったが、何を言いたかったのかは理解できなかったよ。

過去の成功は別として、文明的な努力が今日成功する見込みはどれくらいあるのだろうか? 考えられるシナリオの一つでは、個人、家族、独自の文化的アイデンティティを持つ集団、大規模な社会組織など、次元を異にする集団の構成単位の間でホメオスタシスの目的が異なるせいで、感情と理性の複雑な相互作用という、文化的なソリューションの発明を可能にしたまさにその道具の基盤がなし崩しにされ、文明的な努力は結局失敗に終わる。このケースでは、おりに触れて生じる文化の崩壊は、私たちの行動や心的特徴には人類以前の生物学的起源にさかのぼるものがあるがゆえに、言い換えると人間同士の争いを解決するための方法やその適用を阻害する、拭い去ることのできない原罪のようなものが人類には刻印されているがゆえに引き起こされる。

この長い引用はたったの3文しかない。最初の1文は短いが、続く2文は長すぎ。一読目は頭から読んでいくが、とにかくどれがどこにかかっていて、どれが主語でそれに対応する文末はこれであっているんだっけ?とかいうのがちっとも入ってこない。結局一通り目を通した後に再度一文ごと、日本語の構造から分析しなければならない。まぁ日本語の文の構造がなんとか分かっても、言っていることはやはり分かりにくいのだが。これは日本語訳の問題も結構大きいかも(一応それなりの翻訳プロによるものなのだが)。

かつて受験生だったころの自分が、英文和訳において、内容がさっぱり理解できないんだけれどもとにかく知ってる単語の訳を並べてなんとか書きなぐった逐語訳風の拙い答案を読み返している気分だったよ。

進化の意外な順序[アントニオ・ダマシオ/高橋洋(翻訳家)]
進化の意外な順序[アントニオ・ダマシオ/高橋洋]【電子書籍】

やったやった!旗立てちゃお。

みなさま、どうもご無沙汰しております。

さて、昨年の今頃こんなエントリーをした。

パトラッシュ、僕はもう疲れたよ

というわけで、今年もこのシーズンがやってまいりました(年中行事にすることは褒められたことではないのだが)。そして今年、ようやくにして情報処理安全確保支援士試験受かりました。

令和元年秋期SC合格

いや、ギリギリ滑り込んだという成績ですが。結局かれこれこの試験を5年間受け続けてしまったよ。だからといってこの分野に詳しくなったかというとそんなことはなくって……。合格した喜びよりも、もう来年はこの試験を受けなくてもいいという開放感のほうが大きいことは内緒(だったらちゃんと勉強してさっさと受かってくればよかっただけなのにさ)。

本日のエントリータイトルは、もちろん橋本治の桃尻娘に影響を受けている。

読了:ギリシア人の物語(1)[塩野七生]

古代ギリシアの民主政はいかにして生れたのか。そしていかに有効活用され、機能したのか。その背後には少ない兵力で強大なペルシア帝国と戦わねばならない、苛酷きわまる戦争があったーー。累計2000万部突破のベストセラー『ローマ人の物語』の塩野七生が、それ以前の世界を描く驚異の三部作第一弾!

第1章 ギリシア人て、誰?(オリンピック/神々の世界 ほか)
第2章 それぞれの国づくり(スパルターリクルゴス「憲法」/アテネーソロンの改革 ほか)
第3章 侵略者ペルシアに抗して(ペルシア帝国/第一次ペルシア戦役 ほか)
第4章 ペルシア戦役以降(アテネ・ピレウス一体化/スパルタの若き将軍 ほか)

古代において、ギリシアという領土型の国があったわけではない。それでは「ギリシア人」というのは何者か?
1:ギリシア語を話す人々であること
2:ギリシアの神々を信仰する人々であること
という文化的バックグラウンドを共有している人を指すそうだ。ギリシアはいわゆる都市国家(ポリス)群からなるもので、ギリシア人というのは独立心が強く、議論好き、戦争ばかりしている民族だ。だからたまには争いを一時停止するためのイベントとして生まれたのがオリンピック。

さて、古代ギリシャとはいえ、この書が扱うのはいわゆる歴史時代に入ってからのギリシアだ(「古典ギリシア」時代)。どのくらいの時期かというと紀元前700年代くらいから。ギリシア神話やトロイ戦争はもっと大昔の話で、その後いわゆる「ギリシアの中世」というのがやってくる(「アルカイックなギリシア」時代)。実はこの時代がギリシアの植民活動の時代で、多くの都市国家が地中海世界に広がっていった。ここまでの状況があってからあとの時代がこの書では扱われるのだ。

この時代は都市国家スパルタとアテネが2台巨頭。前半では、この2都市国家の制度改革が描かれる。まずはスパルタでリクルゴスの改革(一般に「改革」とされているが、その後のスパルタを金科玉条のように縛っていくことになるがゆえに憲法制定という位置づけの方がふさわしいと塩野は述べている)。その後150年ほど遅れてアテネのソロンの改革が始まる。アテネの民主政への道のりはソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレス、ペリクレスとリレーのように受け継がれていく。そして後半に描かれるのは、この時代最大の出来事ペルシア戦役。専制国家ペルシアがギリシアに攻めてきて、日ごろ仲違いをしている都市国家群のギリシアがどう対応したのか。なぜ強大国ペルシアは惨敗したのか?

サラミス海戦のアテネの勝将テミストクレスは、のちに陶片追放(政敵排除の仕組みとして使われたが、別に刑罰ではない)され、さらには指名手配されて、かつての敵ペルシアにまで逃亡する。戦役当時のペルシア王クセルクセスの息子で王位を継いでいたアルタ・クセルクセスは、彼を顧問として迎える。この時の、アルタ・クセルクセスの気持ちを塩野は次のように推測して記述している。

「テミストクレスが来ちゃった、ランランラン。来ちゃった、来ちゃった、ランランラン」

塩野はたまにこういうお茶目さんになる。

それにしてもローマ人の名前はなんとか覚えられるが、ギリシア人の名前はなじみがなくて覚えにくい。ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレス、ペリクレスの5人を覚えるより、五賢帝の名前(ネルヴァ、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス)を覚えるほうがはるかに簡単だよ(ラフには)。

次の巻ではアテネの民主政完成期ペリクレスの時代と、その後の崩壊が描かれるようだ。

ギリシア人の物語(1)[塩野七生]
ギリシア人の物語I 民主政のはじまり(ギリシア人の物語)[塩野七生]【電子書籍】