古代ギリシアの民主政はいかにして生れたのか。そしていかに有効活用され、機能したのか。その背後には少ない兵力で強大なペルシア帝国と戦わねばならない、苛酷きわまる戦争があったーー。累計2000万部突破のベストセラー『ローマ人の物語』の塩野七生が、それ以前の世界を描く驚異の三部作第一弾!
第1章 ギリシア人て、誰?(オリンピック/神々の世界 ほか)
第2章 それぞれの国づくり(スパルターリクルゴス「憲法」/アテネーソロンの改革 ほか)
第3章 侵略者ペルシアに抗して(ペルシア帝国/第一次ペルシア戦役 ほか)
第4章 ペルシア戦役以降(アテネ・ピレウス一体化/スパルタの若き将軍 ほか)
古代において、ギリシアという領土型の国があったわけではない。それでは「ギリシア人」というのは何者か?
1:ギリシア語を話す人々であること
2:ギリシアの神々を信仰する人々であること
という文化的バックグラウンドを共有している人を指すそうだ。ギリシアはいわゆる都市国家(ポリス)群からなるもので、ギリシア人というのは独立心が強く、議論好き、戦争ばかりしている民族だ。だからたまには争いを一時停止するためのイベントとして生まれたのがオリンピック。
さて、古代ギリシャとはいえ、この書が扱うのはいわゆる歴史時代に入ってからのギリシアだ(「古典ギリシア」時代)。どのくらいの時期かというと紀元前700年代くらいから。ギリシア神話やトロイ戦争はもっと大昔の話で、その後いわゆる「ギリシアの中世」というのがやってくる(「アルカイックなギリシア」時代)。実はこの時代がギリシアの植民活動の時代で、多くの都市国家が地中海世界に広がっていった。ここまでの状況があってからあとの時代がこの書では扱われるのだ。
この時代は都市国家スパルタとアテネが2台巨頭。前半では、この2都市国家の制度改革が描かれる。まずはスパルタでリクルゴスの改革(一般に「改革」とされているが、その後のスパルタを金科玉条のように縛っていくことになるがゆえに憲法制定という位置づけの方がふさわしいと塩野は述べている)。その後150年ほど遅れてアテネのソロンの改革が始まる。アテネの民主政への道のりはソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレス、ペリクレスとリレーのように受け継がれていく。そして後半に描かれるのは、この時代最大の出来事ペルシア戦役。専制国家ペルシアがギリシアに攻めてきて、日ごろ仲違いをしている都市国家群のギリシアがどう対応したのか。なぜ強大国ペルシアは惨敗したのか?
サラミス海戦のアテネの勝将テミストクレスは、のちに陶片追放(政敵排除の仕組みとして使われたが、別に刑罰ではない)され、さらには指名手配されて、かつての敵ペルシアにまで逃亡する。戦役当時のペルシア王クセルクセスの息子で王位を継いでいたアルタ・クセルクセスは、彼を顧問として迎える。この時の、アルタ・クセルクセスの気持ちを塩野は次のように推測して記述している。
「テミストクレスが来ちゃった、ランランラン。来ちゃった、来ちゃった、ランランラン」
塩野はたまにこういうお茶目さんになる。
それにしてもローマ人の名前はなんとか覚えられるが、ギリシア人の名前はなじみがなくて覚えにくい。ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、テミストクレス、ペリクレスの5人を覚えるより、五賢帝の名前(ネルヴァ、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウス)を覚えるほうがはるかに簡単だよ(ラフには)。
次の巻ではアテネの民主政完成期ペリクレスの時代と、その後の崩壊が描かれるようだ。
■ ギリシア人の物語(1)[塩野七生]
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