読了:おあとがよろしいようで[喜多川 泰]

おあとがよろしいようで

おあとがよろしいようで

  • 作者:喜多川 泰
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2023年10月04日頃

人は皆、出会ったものでできている。

金も夢も友もない上京したての大学生・暖平。
ひょんなことから落語研究会に入ることになり、
“背負亭(しょいてい)こたつ”として高座に立つ羽目に!?

累計100万部突破の名手がおくる、
新しい自分に出会える人生応援小説。

あらすじ

大学進学を機に群馬から上京したばかりの門田暖平は一人、新品のこたつを亀の甲羅のように背負い佇んでいた。配送料が払えず自力で下宿に持ち帰ろうと思ったが、帰宅ラッシュで電車に乗り込むことができない……。
途方にくれる暖平の前に、一台のワゴンが停まる。乗っていたのは、入学式当日、構内で落語を演っていた落語研究会の部長・忽那碧だった。落研に誘われるが、金もなく、コミュニケーションにも自信がなく、四年間バイト生活をして過ごすつもりだと語る暖平。
「必要なのは扇子一本。あとは座布団さえあればどこでもできる」という碧の言葉に背中を押され、暖平の人生が大きく動き出すーー。

・「面白さ」「上手さ」は一つじゃない
・明日が来るのが楽しみになるくらい準備する
・徹底的に同じ型を踏襲し、初めて個性は爆発する
・追い詰められてはじめて、人は真価を発揮する
・どんな時も楽しむ。自分がやりたいことをやる

斜に構えた大学新入生の主人公はふとしたきっかけから、落語研究会に所属することとなる。そこで出会う仲間との一年を描く青春もの。形式的にはこの手の青春ものにありがちな季節を巡る青春劇で、当然クライマックスは学園祭。そしてプロローグとエピローグは入学式のサークル勧誘という循環形式。

ただ家族の話はストーリーにうまく親和しきれていない感じがする。部長の兄弟の話になるとやりすぎでちょっと説教くさい。もっと落語で押し切った後先考えない青春コメディでも良かったのではないか。それはそれとして、落語ってものすごくおもしろいんじゃない?寄席にでも行ってみようかなと思わせる筆は見事。

おあとがよろしいようで[喜多川 泰]
おあとがよろしいようで[喜多川泰]【電子書籍】

読了:おまわりさんと招き猫 あやかしの町のふしぎな日常(ことのは文庫)[植原翠/ショウイチ]

おまわりさんと招き猫 あやかしの町のふしぎな日常

おまわりさんと招き猫 あやかしの町のふしぎな日常

  • 作者:植原翠/ショウイチ
  • 出版社:マイクロマガジン社
  • 発売日: 2021年10月20日頃

しゃべる猫・おもちさんの住み着いた、ちいさな海辺の町の交番で起こる、ちょっと不思議でとても優しい「人」と「あやかし」の物語。

おいでませ、かつぶし町/迷子と口下手/ジュブナイル/大騒ぎはお断り/夏に至る/わだつみの石/キュウリ泥棒/狐の社の神隠し/憧憬、そして今/おまわりさんと招き猫/番外編 土地神様と油揚げ

海辺の漁師町かつぶし町。交番勤務の若手おまわりさんと、そこにいるしゃべる猫を中心とした、季節を巡るほのぼの物語。不思議な出来事や妖怪の類がたくさん出てくるんだけれども、特に致命的な出来事とかは起こらず、全体的にゆるーい。子供向けの話をちょっとだけ大人の言葉で書き直してみましたって感じ(語彙の選択等に洗練さがまったくないのだ)。著者もそれを狙っているようなのだが、深みは一切ない。頭使わずになんとなく優しくて緩い雰囲気を楽しみたい人には向いているかと。

おまわりさんと招き猫 あやかしの町のふしぎな日常(ことのは文庫)[植原翠/ショウイチ]
おまわりさんと招き猫 あやかしの町のふしぎな日常(おまわりさんと招き猫)[植原翠]【電子書籍】

読了:文学少女対数学少女(ハヤカワ・ミステリ文庫)[陸 秋槎/稲村 文吾]

文学少女対数学少女

文学少女対数学少女

  • 作者:陸 秋槎/稲村 文吾
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2020年12月03日頃

推理小説好きの文学少女・陸秋槎と、孤高の天才数学少女・韓采芦の2人の謎解きを描く連作短篇、全4篇を収録! 解説:麻耶雄嵩

連続体仮説/フェルマー最後の事件/不動点定理/グランディ級数

現代中国青春メタ的形式の推理小説。「文学少女『対』数学少女」というタイトルだけれども、日本語的には「文学少女『と』数学少女」でしょう。高校生の文学少女「陸秋槎」(作者と同名の主人公)と変わり者の数学好き少女「韓采芦」との、青春連作短編。4つの短編があるんだけれども、それぞれの話に現実のミステリーと劇中ミステリーがあって、そこに数学の話題や歴史を絡めた推理小説理論が展開される。ミステリーそのものよりも、その理論を数学的に説明してアプローチする実験的な要素の強い読み物。「読者への挑戦」系が中心で、はっきりとした結果をあえて書かなかったりするものもある。

文学少女対数学少女(ハヤカワ・ミステリ文庫)[陸 秋槎/稲村 文吾]
文学少女対数学少女[陸 秋槎]【電子書籍】