会社が斡旋している生命保険における同性パートナーの扱い

 ラフの職場では明確な同性パートナーに関する定め(あるいは提言や今後の方針とかも含めて)はない。とはいえ流行りの○○ハラの防止に関してはCSRを明確に宣言している。

 さて、会社が斡旋している生命保険がある。今年から、その案内に同性パートナーに関する事項が追記されていた。保険に本人に加えて配偶者も加入ができるんだけれども、この配偶者には「生計を一に」していれば同性パートナーが認められるとのこと。さらに保険金の受取人にも同性のパートナーを指定することもできる。もちろん別途関係を証明する書類が必要となるようだが(何の書類を指しているのだろう?)。

 時代は変わっていくね。うちは割とホワイト企業だよ(制度的にはね)。

平成生まれというだけで若いと思ってしまう昭和世代幻想

 演奏会後の打ち上げにおいて、さる団員が別の団員に「え?平成生まれなの?若~い!!」なんて言葉を発していたんだけれども、ちょっと待って!!平成だって30年はあったんだから、元年生まれだとしたらもう30なわけで小学生くらいの子供がいる人もたくさんいるんだよ。平成っていうだけで若いなんて思うのは幻想だよ、それこそ昭和の発想だよ、とつっこんでおいた。(とはいえS吹奏楽団のメンバーが概して高年齢に偏っているという事実はあるのだが)

 一時期若い世代がアプリのプロフィールにH〇組とか(〇には数字が入る。概して一桁。平成何年生まれとかいうことらしい)いう表現を使っているのをよく見かけたけれども、そのうち気が付けば「R〇組」とかいう世代が出てくるんだろうね。いや、そのころにはもっと違う表現が生まれているのかな。そういえば、平成18年に「今年はとうとう平成生まれがゲイシーンにデビューする」っていう震撼表現もあったなぁ。

人を紹介する際の意図しないアウティングの可能性

ラフは交友関係がそんなに広くはない。プライベートの関係だと、ゲイの友達かカミングアウト済みの友達(S吹奏楽団の人を含む)くらい。ということで、基本的にはラフのことをゲイだと認識してもらえていない人はあんまり友達とは思っていないのだ。ゲイであることが自分のすべてではないけれども、ゲイであることは自分の大事な部分ではあるのだ。だからそこの部分を知っておいてもらわないと、なかなか友達になるのはしんどい。偏狭なことではあるなという自覚はしているのだが。

さて例えばの話をします。S吹奏楽団は団員募集をしているけれども、例えばラフが人を紹介するとか、あるいは見学者や入団者(場合によってはお手伝いの方も)でラフと面識があると分かった人がいるとすると、S吹奏楽団の方はその人を「ゲイではないか?」とまぁ普通に思うでしょうね。中には「組合の方ですか?」とか平気で聞いちゃう人もいるかもしれない。でも、その人はノンケかもしれない。ゲイだとしてもカミングアウトする気のない人かもしれない。カミングアウトしていないゲイの中には自分がゲイだと疑われることさえ嫌悪している人だっているわけです。そうなると、ラフは自分から友達を紹介するのってあんまり乗り気じゃなくなってしまうんですよ。意図しないアウティングをしてしまうことにもつながってくるわけですから。過去にもそういうことになってしまった人がいる。もう本当に申し訳ないことをしたと思っているんだけれども、彼は「カミングアウトする手間が省けた」と言ってくれているのでまだ助かっているけれども。

ラフの友達に若いゲイの子がいる。彼は世間的にはカミングアウトしていないし、するつもりもないし、ゲイばれすることを非常に恐れている。先日、ラフの知っているある一般楽団を紹介してほしいと頼まれたんだけれども、意図せず彼のことをアウティングすることになってしまうかもと思い、依頼をやんわりと断った。断っただけでは申し訳ないので、ゲイが主体になっている別の団体の紹介ならできるよ?と申し入れたところ、その団体の素性を知っている人を通して、演奏会とかでゲイばれするのが怖いからと、彼のほうから断ってきた。

ラフはカミングアウト済みだから、ゲイ問題もそんなにないだろうと思われる方もいるかもしれないが、いろいろと面倒なこともまだまだあるんだよ。

会話の際に気をつけてること – fuchi’s diary
カミングアウトしたオープンなゲイこそ気をつけたいこと|LGBTメディア|Rainbow Life

LGBTに該当する人の人口に対する割合調査

S吹奏楽団にはカミングアウト済みのゲイが何人かいるんだけれども(ラフもそのうちの一人ですが、S吹奏楽団は決して性的少数者主体の楽団ではなく一般の吹奏楽団です)、先日ですね、S吹奏楽団の練習後の飲み会で、じゃ世間的にみてこの楽団に所属しているゲイの人数は多いのかどうかってことを話題にした人がいた。S吹奏楽団にはカミングアウト済みの人がいるからには、「LGBTの人に会ったことがない」などとのたまう一般の人しかいない団に比べるととても寛容な団ではある。その人(ノンケ)がいうには「まぁ、LGBTの人って13人に一人くらいはいるらしいからね」と。ん?その数字はどこから出てきたのだ?13人に一人というとだいたい7.6%くらいだな。おそらく、これはよく引用されている電通の調査が根拠と思われる(2015年くらいの調査だったか?)。

電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2018」を実施 – ニュースリリース一覧 – ニュース – 電通

電通さんは継続的に調査を行っているけれども、上記リンクは2018年の調査。ここでは、LGBT層に該当する人は8.9%とのこと。まぁ以前のデータと比べるとちょっと増えてるね。でもさ、これってLGBTの人が増えたわけではなくって、調査に適切に応じる当事者が増えてきたってだけだと思うんだよね。最近巷にあふれるLGBT記事で上がってくる数字はたいてい電通の調査のものを引用するものが多いんだけれども、この数字をもっとも確信が持てる数字として伝家の宝刀みたいに振りかざす記事は、いまひとつ信用がならない。あくまでも、電通が電通なりの調査をした結果のレポートであって、必ずしも実態に近いものであるかどうかはまだ不明だと思うのがラフの見解。

こちらの大阪市を対象に行ったアンケート調査では性的マイノリティーだと回答した人の割合が、3%となっている。

LGBTは約3% 国の研究所グループが調査 | NHKニュース

調査を行った「国立社会保障・人口問題研究所」人口動向研究部の釜野さおり第二室長は「性的マイノリティーの人がどれくらいの割合いるか正確な統計がない中、無作為抽出による大規模な調査には意義があり、実態を表す正確なデータが得られたのではないか」と話しています。

しかも実態を表す正確なデータではないかと主張している。電通の値とは結構異なっていますね(同じ趣旨の数値を比べているかは検討の余地ありだが)。両調査は調査方法も母集団も違うだろうし、それにまだまだ自分で正直にカミングアウトするLGBT層は地域によっても世代によってもばらつきが大きいと思うしね(たとえ匿名調査であったとしても)。

さて、こういう性的少数者に対する嚆矢調査としては、1948年のキンゼイ・レポートが有名。

wikipediaの「キンゼイ報告」の項

今となっては、調査方法(母集団も設問も統計処理手法も)や結論がそうとうに怪しいもので、このレポートの結果を真に受ける人はもういないと思われる。なのに、最近は激減したけれどもこのレポートの数字でLGBTの議論をしている記事をまれに見かける。問題外ですね。キンゼイ・レポートが重要なのは、セクシャルな事柄(同性愛を含む)をはじめて統計的に調査をして発表したという歴史的意義からなんだよ。だからLGBTの歴史ではほぼ必ず言及される。そしてキンゼイ・レポートは映画にもなっている。

映画 愛についてのキンゼイ・レポート – allcinema

「この世界が100人の村だったら」というかつて流行った書籍があるけれども、この中では「100人中、11人が同性愛者である」という記述がある。この数字もキンゼイ・レポートをもとにした数字らしい。

ま、世間的にはLGBTに寛容になってきたとはいえ、まだカミングアウトを躊躇あるいは拒む当事者も多いわけです。なので実際的な数字はアンケート調査ではわからないですけれども、ラフの実感としてはセクシャルマイノリティー当事者は身の回りに結構いるもんですよという程度のこと。

「え?LGBTの人に実際に会ったことがないって?それはさぁ、あんたがカミングアウトするのにはふさわしくない人物と思われているだけだよ。」

LGBTQの割合「13人に1人」ではなかった 「3%」という”下方修正”をどう見るべきか、研究者に聞いた | ハフポスト

読了:青のフラッグ 6 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]

6巻は秋の文化祭が中心舞台。高校3年生、近づく受験の悩み、恋と友情。太一と二葉の交際は初々しくも順調に進む。二葉の親友真澄は普通じゃない人を好きになってしまうことをトーマの義理の姉に告白する、そしてトーマは秘めていた太一への思いを告白する。ラストは胸の中に腕を突っ込まれて心臓をぎゅっとされるくらいに痛くて苦しかった。好きな人に「ごめんな」というのを聞くのはやっぱりつらいもんだよ。

それにしても、話の運び方とカット割りがすごくうまい。

青のフラッグ 6 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]

絶対おすすめ!次世代青春マンガ『青のフラッグ』の魅力を徹底解説してみた。【ゲイは読むべし】|ライ麦畑のがけ近く

wikipediaの「青のフラッグ」の項

読了:ゲイだけど質問ある? [ 鈴掛 真 ]

オープンリーゲイ歌人の鈴掛真さんが、若い世代を対象にLGBTについて答えるエッセイ。オープンリーとしての覚悟と責任を持ってできるかぎり真摯に答えようとしている態度は好感が持てる。ゲイとして自分がどんなことに苦悩してきたかということも具体的に告白して、オープンリーとして生きていくことを決心したこと、そしてこれからの社会をこうしていきたいという意志と行動と呼びかけもきちんとしている。

鈴掛さんの他の短歌を読んだことがまだないんだけれども、本書の話題ごとに挟まれる短歌はどれも今ひとつ。若さと情熱と感傷は感じられるけれども、言葉が上滑りしているというか伝わってくるものが弱い。

ゲイだけど質問ある? [ 鈴掛 真 ]

得体のしれない存在

ラフのことを指して「LGBTの男性」とか言われたら、「ん?」という感じがする。なんじゃそれりゃ?だ。

「LGBT」という言葉で既存の性の枠組みをゆるめたうえで、そこに「男性」という既存の性表現を重ねることに、すわりの悪さを感じるのだ。生物学的な「男性」という意味でとらえても、それはそれで「LBGT」という言葉と同時に使う必要があるのか?とも思うわけで。

世間的には(メディアでは)「LGBT」はどうやら「性的少数者全般」を指して使われていることが多いように見受けられる。まぁ、それでもいいよ。

LGBT、11人に1人 認知度は7割近くに 電通調査 – 産経ニュース

職場のダイバーシティ大事だと思うが「よく知らない」7割【1万人の調査結果】|ウートピ

「LGBT」という言葉が、一般人にとって、「うかつに使うとこわい活動家にからまれる語」とならないよう願う。

『新潮45』騒動で批判がタブー化!? LGBT議論の着地点を当事者、憲法学者らが激論 (1/2)

ちなみにラフはたまにとんがったことを言うけれども、基本的には緩いです。怖くないよ。

年末年始のゲイもの鑑賞

年末年始休みに、ゲイものをいくつか消化したので、その紹介。


あさな君はノンケじゃない! [ あさなさくま ]


 昨年末に出た、普通のゲイの日常エッセイマンガ。エロ要素はなし。絵柄が柔らかくて好き。話題もわかるわかるってところは多い。著者が言うように、主人公はゲイの一例でしかないというのは当然なんだけれども、それでも共感できる部分は多い。そりゃ、美大出でアパレル勤務で女装趣味があってゴージャスな交友関係があってっていう部分だけ取り出せば、特殊なゲイだという面はあるかもしれないけれども、普段感じること考えることは同じだなぁと思う。パートナーとの出会い、生活の章は特にほのぼのとする。でもまぁ、アラサーってことは、20代後半?そんな彼が、年下のゲイ友に新たな世代の到来を感じるとか、自身の肌の問題が気になるとか出てくると、ラフのようなアラフィフおっさんはもう一体どうしたらいいのかと思ってしまうよ。ノンケが読んでもおもしろいように(興味本位に堕することなく)描かれている部分も好感が持てる。

あさな君はノンケじゃない! [ あさなさくま ]


青のフラッグ 1 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 2 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 3 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 4 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 5 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]


 某ゲイブログで絶賛されていた青春マンガ。とりあえず現在出版されているところまで読んだ。恋と友情に揺れる高校3年生の4人組を中心に描かれる。この4人組、男子2名(幼馴染のA君、B君)に女子2名(親友同士のCさん、Dさん)なのだが、心優しいけれどもどんくさいCさんは、スポーツ万能のイケメンB君が好きで、それを知った地味目のA君はCさんの恋を手伝うことになる(やがてA君はCさんに惹かれていく)。でも、B君が好きなのはどうやらA君で(作中では決定的には明らかにはされていないが強くほのめかされている)、A君もCさんもそのことを知らない。そしてCさんの親友Dさんは実はCさんが好きなのだ。B君とDさんはお互いにこのことを知っている。やがてCさんはB君への思いは単なる憧れであることに気づき、A君を好きなっている自分に気づき……。文章にすると分かりにくい関係だなぁ。

 異性間の友情は成り立つか?というのはどうやらノンケ世界では永遠の話題であるようだ。ゲイのラフとしては当然成り立つのであるが。じゃノンケに惚れたゲイが恋をあきらめようとして友情を続けることはできるのか?仲良くしたい、あるいは思いを寄せる相手との関係に、好意を持っているがゆえに思い煩う青春の甘酸っぱさ。今後の展開が楽しみだ。
青のフラッグ 1 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 2 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 3 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 4 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 5 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]


Love, サイモン 17歳の告白【Blu-ray】 [ ニック・ロビンソン ]


アメリカでは高評価だったにも関わらず、日本では公開されなかった映画。すごく好感の持てるさわやか青春映画なのに、なんで日本では公開されなかったんだろう。

ゲイであることを隠して生きる普通の高校生が、同じ高校にいるらしい隠れゲイとメールで親しくなっていくものの……。友達や家族との関係、カミングアウトとアウティング、いろんな問題を抱えつつも自分自身が生きていくための力を自分でつかんでいく様に希望が持てる。とりわけ、アイデンティティを模索する中「ゲイのファッション」をネットで検索していろいろ試してみるんだけれども、結局はいつもの自分通りの服装を選ぶシーンがよかった。まぁラストで、やっぱりイケメンはイケメンと出会うのねっていうところがおとぎ話的ハッピーエンドではあるけれども、前向きになれる青春映画。

Love, サイモン 17歳の告白【Blu-ray】 [ ニック・ロビンソン ]


「やがて君になる」
先だってのクールでとても評判が良かったアニメ(原作も評価が高いらしい)。自分自身が何者か、人を好きになるとはどういうことかという青春ものとして至極真っ当なものではあるんだけれども、なのになんだか、同性を好きになるってことをバカにされているような描き方な気がするのはなんで?このザラザラした違和感は何だろう。若干の気持ち悪さと腹立たしさを感じる。ゲイに惚れられるおそらくノンケが主人公ということでは、去年大流行したドラマ「おっさんずラブ」が素直に受け入れられたのに、こっちは受け入れられないのはなぜだろうか?ちょっと考えてみたい。


上に何度も「普通」と書きながら、「普通」ってなんだよと、自分自身に突っ込み続けたラフは、今年もゲイです(当たり前だ)。今年もよろしく。