読了:男たちを知らない女(ハヤカワ文庫SF)[クリスティーナ・スウィーニー=ビアード/大谷 真弓]

男たちを知らない女

男たちを知らない女

  • 作者:クリスティーナ・スウィーニー=ビアード/大谷 真弓
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2022年02月02日頃

災厄は英国、グラスゴーから始まった。救急外来にきた男性が次々に死んでいったのだ。最初は一般的なインフルエンザの症状に思えたが、男だけが数日で息を引きとってしまう。男児は生まれてすぐ死んでいき、免疫のある男性は十人に一人。この恐るべき疫病はまたたくまに広がり、やがて全世界で人類の半分が亡くなったー愛する者を失い、男性のいない新しい世界を生きていく女たち。衝撃の近未来破滅SF。

スコットランドから始まったウイルス感染は瞬く間に世界へと広がる。このウイルスに感染すると、男性の9割が亡くなる(1割は何らかの免疫を持っていて生き延びる)。女性は感染しても亡くならないが、それでも家族を失う者が続出。男性がほとんどいない世界へと変わっていく。疾病の発生にはじまって新しい世界の構築に向かいだす5年ほどをドキュメンタリー風に描いたSF作品。

原作は2020年前半、まさにコロナ禍の初期に出版された(書かれたのはコロナ禍よりも前になる)。それがさ、もうホントに今現在目にしているコロナ禍の世界混乱の光景と似たようなものが作品中に描かれているのだ。旅客機の国際線停止と再開、ワクチン開発競争、各国の接種プログラム、世界秩序の変化など。

邦題「男たちを知らない女」はちょっと受ける印象が異なるかも。実際には男性はまったくいなくなったわけではないのでなんか違うかなという感じ。あくまで男性人口が極端に減ったというだけで身の回りからまったくいなくなったわけではない。強いて言うなら、主人公の一人が産んだ娘は、男性がほぼいなくなった世界を生きていくわけで、その子が生きていく世界を慮った母親の想いにそれに近いことはちょっとだけ書いてはあるが。ちなみに原題は「The End of Men」。

作風は、先だって読んだ「ダリア・ミッチェル博士の発見と異変」に似ているか。どちらも同時代のある世界的事件の顛末を追うドキュメンタリー仕立てである。

読了:ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日(竹書房文庫 と4-1)[キース・トーマス/佐田 千織]

男たちを知らない女(ハヤカワ文庫SF)[クリスティーナ・スウィーニー=ビアード/大谷 真弓]
男たちを知らない女[クリスティーナ スウィーニー=ビアード]【電子書籍】

読了:危機と人類(上/下)[ジャレド・ダイアモンド]

危機と人類(上)

危機と人類(上)

  • 作者:ジャレド・ダイアモンド/小川 敏子
  • 出版社:日経BP 日本経済新聞出版本部
  • 発売日: 2020年10月05日頃

遠くない過去の人類史から学ぶべき、危機対応の叡智とは何か。『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』『昨日までの世界』で知られるジャレド・ダイアモンド博士が、日本、フィンランド、チリ、アメリカなど国家的危機に直面した世界7カ国の事例から、全世界が一致して持つべき危機への認識を解き明かす。文庫化にあたり、世界が直面するコロナ禍を分析した序章を新たに追加。

プロローグ ココナッツグローブ大火が残したもの/第1部 個人(個人的危機)/第2部 国家ー明らかになった危機(フィンランドの対ソ戦争/近代日本の起源/すべてのチリ人のためのチリ/インドネシア、新しい国の誕生)

危機と人類(下)

危機と人類(下)

  • 作者:ジャレド・ダイアモンド/小川 敏子
  • 出版社:日経BP 日本経済新聞出版本部
  • 発売日: 2020年10月05日頃

国家的危機に直面した国々は、選択的変化によって生き残るーでは、現代日本が選ぶべき変化とは何か。現代日本は、基本的価値観を再評価して取捨選択し、「新常態」に適応できるか。そして人類はいま全世界を襲う危機に対し、協調した行動をとれるだろうか。国家的危機を左右する12の要因は、世界の危機にも応用できるのか。博覧強記の著者が解決への道筋を提案する。

第2部 国家ー明らかになった危機(承前)(ドイツの再建/オーストラリアーわれわれは何者か?)/第3部 国家と世界ー進行中の危機(日本を待ち受けるもの/アメリカを待ち受けるものー強みと最大の問題/アメリカを待ち受けるものーその他の三つの問題/世界を待ち受けるもの)/エピローグ 教訓、疑問、そして展望

近現代史における国家の危機と克服の例7つを紹介。そして著者の克服のための12分類フレームワークによる検討。どういう危機に直面しどのように乗り越えたのか。そして、日本とアメリカを例としてそれぞれの国が現在直面している危機は何か?さらに私たちがこれから直面するだろう危機は何で、それを乗り越えていくにはどうすればよいのか?を考察する。近現代史としてあまり詳しくは勉強していない話題が多いので(日本の部を除く)おもしろかった。無知は怖いねぇと思ったり思わなかったり。日本の部も含めて欧米の知識人がどのように世界をとらえて考えているのかを垣間見れるという面からもおもしろい。(さすがに日本のデートにおけるケータイ会話はジョークの類かと思うが)

危機と人類(上)(日経ビジネス人文庫 B たー21-3)[ジャレド・ダイアモンド/小川 敏子]
危機と人類(下)(日経ビジネス人文庫 B たー21-4)[ジャレド・ダイアモンド/小川 敏子]
危機と人類(上)(危機と人類)[ジャレド・ダイアモンド]【電子書籍】
危機と人類(下)(危機と人類)[ジャレド・ダイアモンド]【電子書籍】
危機と人類(上下合本版)(危機と人類(上下合本版))[ジャレド・ダイアモンド]【電子書籍】