災厄は英国、グラスゴーから始まった。救急外来にきた男性が次々に死んでいったのだ。最初は一般的なインフルエンザの症状に思えたが、男だけが数日で息を引きとってしまう。男児は生まれてすぐ死んでいき、免疫のある男性は十人に一人。この恐るべき疫病はまたたくまに広がり、やがて全世界で人類の半分が亡くなったー愛する者を失い、男性のいない新しい世界を生きていく女たち。衝撃の近未来破滅SF。
スコットランドから始まったウイルス感染は瞬く間に世界へと広がる。このウイルスに感染すると、男性の9割が亡くなる(1割は何らかの免疫を持っていて生き延びる)。女性は感染しても亡くならないが、それでも家族を失う者が続出。男性がほとんどいない世界へと変わっていく。疾病の発生にはじまって新しい世界の構築に向かいだす5年ほどをドキュメンタリー風に描いたSF作品。
原作は2020年前半、まさにコロナ禍の初期に出版された(書かれたのはコロナ禍よりも前になる)。それがさ、もうホントに今現在目にしているコロナ禍の世界混乱の光景と似たようなものが作品中に描かれているのだ。旅客機の国際線停止と再開、ワクチン開発競争、各国の接種プログラム、世界秩序の変化など。
邦題「男たちを知らない女」はちょっと受ける印象が異なるかも。実際には男性はまったくいなくなったわけではないのでなんか違うかなという感じ。あくまで男性人口が極端に減ったというだけで身の回りからまったくいなくなったわけではない。強いて言うなら、主人公の一人が産んだ娘は、男性がほぼいなくなった世界を生きていくわけで、その子が生きていく世界を慮った母親の想いにそれに近いことはちょっとだけ書いてはあるが。ちなみに原題は「The End of Men」。
作風は、先だって読んだ「ダリア・ミッチェル博士の発見と異変」に似ているか。どちらも同時代のある世界的事件の顛末を追うドキュメンタリー仕立てである。
読了:ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日(竹書房文庫 と4-1)[キース・トーマス/佐田 千織]
■ 男たちを知らない女(ハヤカワ文庫SF)[クリスティーナ・スウィーニー=ビアード/大谷 真弓]
■ 男たちを知らない女[クリスティーナ スウィーニー=ビアード]【電子書籍】
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