Classic : A book which people praise and don’t read.
「古典とは、人々が賞賛するが、読みはしない本のことだ」(マーク・トウェイン)
というわけで、ドストエフスキーの「罪と罰」。もちろん世界的に有名な文学作品で、あらすじは何となく知っているけれども、実は読んだことがないんだよねという作家4人の座談会。
前半は、自分たちが知っている知識を総動員して、ちゃんと読んだことがないけれども「罪と罰」はこんな話なのではないかとあれこれ推測する。後半は「罪と罰」を実際に読んでから後日再度集まって、感想や意見を交わす。「罪と罰」未読の読者のために、前半と後半の間に「罪と罰」の登場人物紹介(ロシア人の名前覚えられない……)とあらすじが載っているので安心。
ラフもまだ「罪と罰」は読んだことがない。主人公の青年が老婆を殺害する話だということは知っているが、それ以外には何も知らないということでは、座談会メンバーとほぼ同じ状態。
知らない話を自由奔放に想像することっておもしろいんだけれども、前半で最初に与えられる情報は、最初の1ページと最後の1ページを英語版から日本語にメンバーの一人岸本氏が訳したもの。当然ドストエフスキーはロシア語で書いているのだが、ロシア語専門家はいないので、英語翻訳を生業としている岸本氏が英語版から訳出。しかし原作を知らないでごく一部を訳すので正しく意図が伝えられているかは不明。この状態で長い長い中間部を自由気ままに想像する(とはいえ彼らは作家なので作品とするならこうだろうという意見はある)。おそらく、この本「罪と罰を読まない」の面白さはこの前半にあるんだと思うんだけれども、ラフには今一つだった。座談会を進めるにあたり、あまりにも突拍子のないことにならないようにだろうが、「罪と罰」の一部分(1ページ程度)をモデレータ(進行役:この人は読破しているそうだ)がところどころ朗読して情報を小出しにし、途中では登場人物紹介が配られたり、本物の「罪と罰」に寄せることが正解みたいな推理ものになってしまっている。「だったら最初から素直に読めばいいじゃん」と思ってしまった。
でもまぁ、後半の「読んでみたら、私たちが想像したよりずっと面白かった」という結論が生きるのは、この前半があるからなんだよね。
三浦 小説として変ですよね。でも、そこがやっぱり面白い。そして、恐れていたほど重厚ではなかった。
浩美 うん、意外にね。
三浦 エンタメでしたね。
篤弘 これから読みたいと思っている、とりわけ若い人たちにお薦めしますか?
三浦 私はお薦めしますね。わりとぐんぐん読めて、登場人物もみんな変で面白いよ、って。
立ちはだかる長編古典文芸大作だけに、興味はあっても手を出せずにいたんだけれども、だったら読んでみようかなという気にはなった。座談会でも指摘されているように「罪と罰」の問題は「長いだけ」のようだし。
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