読了:家庭用事件(市立高校シリーズ)[似鳥鶏]

こんなはずじゃなかった!?
事件に満ちた葉山君の学校生活を描く、〈市立高校シリーズ〉短編集。
市立高校に入学した頃は、こんなにも不可思議な事件に巻き込まれ、波瀾万丈な学校生活を送ることになるとは、僕は想像だにしていなかったーー。『理由あって冬に出る』の出来事以前に、映研とパソ研との間で起こった柳瀬さん取りあい騒動を描く「不正指令電磁的なんとか」。葉山君の自宅マンションで起こった怪事件「家庭用事件」。葉山君の妹・亜理紗の学校の友人が遭遇した不可解な引ったくり事件から、葉山家の秘密が垣間見られる「優しくないし健気でもない」など、全五編。

不正指令電磁的なんとか/的を外れる矢のごとく/家庭用事件/お届け先には不思議を添えて/優しくないし健気でもない

市立高校シリーズの最初「理由あって冬に出る」の初版が2007年10月31日。で今回読んだ「家庭用事件」の初版は2016年4月28日。なんだかんだと10年ほどで7冊続いたシリーズで(今後も続く予定とあとがきには書いてあった)、一応季節(年月)は進んではいるんだけれども、主人公の高校生葉山君が1年生の冬頃から始まって1年にも満たない期間じゃないかなぁ(話によっては必要に応じて過去だったり1年先だったりするけれども、本筋の進行としてはそのくらいしか進んでいない)。今回は、その間をカバーする期間に起こった小さめ事件の短編集。「家庭用事件」っていう短編タイトルを代表させたように、出てくる事件がどれもちっせぇよ、しょぼいよ(現実ならびっくりなのに強制的に小さくまとめてしまっている感のある事件もあるが)。いわゆる北村薫的・加納朋子的な「日常ミステリー」ではなく、あくまでも日常で起こった出来事を事件として取り上げることにこだわったためかどことなくちぐはぐ感。

wikipediaの「日常の謎」の項

基本的に、このシリーズの主人公の葉山君はワトソン博士的立ち位置で、シャーロックホームズは伊神さんという先輩なのだ(第1作で大学受験直前の3年生で第2作目で高校は卒業して、以後は大学生になっていて事件解決のために母校を訪ねてくる)。そして今作でも葉山君の親友三野君が相変わらず誰かのために黙って余計なおせっかいをすることで犯人になっちゃってることが多い。最後の話では、シリーズ中にもしばしば顔を出していた葉山君の妹が「実は……だった」というのは衝撃的。このシリーズのどっかに伏線あったか?(言わなかっただけで嘘はついていないってやつか……)

あとがきでは、相変わらず好き勝手に妄想ぶっこいてますが、困ったらトイレットペーパーを買い占めてしまう日本人への言及は、2016年の時点で書かれたことを思うと「予言か」と(もっとも、著者は震災を踏まえて書いているのだが)。

家庭用事件 (創元推理文庫) [ 似鳥鶏 ]
家庭用事件(市立高校シリーズ)[似鳥鶏]【電子書籍】

演奏会映えする変態ピアノ連弾曲「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」

ピアノソロの場合であっても、右手と左手が交差する箇所がある曲というのは見栄えが豪華になる(その曲の持つ芸術性とは別にパフォーマンスとして)。今日はローゼンブラットという作曲家の(ピアノ弾きの中では)有名なピアノ連弾曲「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」を紹介しよう。

その前に、連弾とは何ぞや。日本語で「連弾」という場合、1台のピアノの鍵盤を前に、二人の奏者が並んで演奏するアンサンブル形式を指す。高音担当(鍵盤に向かって右側)をPrimo(イタリア語で第1奏者)、低音担当(鍵盤に向かって左側)をSecondo(イタリア語で第2奏者)と呼ぶ。ちなみに英語では連弾は「for 4 hands」と表記される(4本の手のための)。概して連弾はPrimoは旋律担当、Secondoが伴奏担当になってしまうことが多くなるのだが、どちらが技術的に難しいかというとほぼSecondo。音楽の土台を作り曲を支配するのはほぼSecondoの役割として与えられることが多いのだ(ちなみにペダルの操作も通常はSecondoが担当)。よって、多くのピアノ教室の発表会では、先生がSecondoを担当し、生徒がPrimoを担当するという形式がしばしばみられる。まぁ中にはラフマニノフの「6つの小品」のようにPrimoの譜面の方が真っ黒という作品もあるが。

さらに、もうちょっと先に進むよ。1台のピアノの前に3人の奏者が並んで演奏する場合これを「6手連弾」と呼ぶ。1台の前に3人が並ぶとかなり狭いしそれぞれにかなり演奏しにくくなる。この形式でもっとも有名なのはラフマニノフの2つの小品であろう(ピアノ協奏曲第2番を思わせるというか酷似箇所あり)。英語表記では「for 6 hands」。

一方で、1台のピアノは独りで担当するのだが、それを2台のピアノでやる演奏形式がある。この場合適当な和訳語がないためか明確に「2台のピアノのための」と表記される(略して「2台ピアノ」)。英語で「for 2 pianos」といえばこの形式。当然、ピアノを3台以上使う形式も考えられるけれども、ピアノを一度にたくさん用意するのは大変だし、演奏スペースもとるしで、3台以上の作品はあまりない(あるにはある)。

また、連弾と2台ピアノの組み合わせとして、通常の1台4手連弾を2台のピアノでやる演奏形式というのもあって、これを「2台8手(for 2 pianos 8 hands)」と呼ぶ(つまりピアノ2台に奏者が4人)。

(連弾と2台ピアノとどちらがどのように面白いのかという話はまた別の機会があれば述べようかと思う。ラフは20代のある時期、ソロよりもピアノだけのアンサンブルばっかりやっていた)

通常、楽器は個人持ちの楽器を演奏会場まで自分で運んで個人の楽器を演奏するものだが、ピアノは通常個人持ちの楽器をホールに持って行って演奏するということはまずない(どんなプロ奏者であっても。強いて言うなら自分専属の調律師を連れて行く)。ピアノの場合通常は会場付帯の楽器を使うのだ。どこのホールでもちゃんとしたホールであれば、最低2台はピアノ庫にピアノがしまわれている(少なくともそのうち1台はスタインウェイが望ましい)。

さて、ローゼンブラット作曲のピアノ連弾曲「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」。ピアノデュオ作品による第5回作曲コンクール(1999-2000)(このコンクールはピアノデュオでも活躍された児玉夫妻がはじめた、日本で開催される国際コンクールで、作曲部門と演奏部門が隔年で開催され、作曲部門で受賞した曲が翌年の演奏部門での課題曲になる)において、ローゼンブラットが特別賞・毎日新聞社賞を受賞した作品。有名なロシア民謡の「カリンカ」(テトリスの音楽だ!)と「モスクワ郊外の夕べ」を組み合わせた、ジャズ的要素も多分に含む、ヴィルトゥオーゾ作品。日本では「二人羽織」とも呼ばれる見ていても楽しい曲。ピアノ連弾の演奏会向け「映え」レパートリーとして重宝されている。いくつか演奏動画を紹介しておこう(二人羽織の見られるところのタイムも)。


6:36あたりから、primoがsecondoを後ろからまたいで演奏する。


5:57あたりから、secondoがprimoを後ろからまたいで演奏して、やがてsecondoがprimo担当に役割交代する。


6:00あたりから、secondoがprimoを後ろからまたいで演奏して、やがてsecondoがprimo担当に役割交代する。ラフ個人的にはこの演奏が一番エキサイティングで好み。

最後に作曲家ローゼンブラットご本人自らの演奏もご紹介しておきます(動画のsecondo担当がローゼンブラット)

ローゼンブラット / Rosenblatt, Alexander – ピティナ・ピアノ曲事典

また、2台8手のための「日本の主題による幻想曲」というものも作曲している。
A. Rosenblatt. Fantasia on Japanese Themes for 2 pianos 8 hands.

読了:日本人の英語(続)(岩波新書)[マーク・ピーターセン]

アメリカ人は日本人をthe Japaneseというのに、自分たちをthe Americansといわず、Americansというのはなぜだろう。「読めるけれど書けない」とよく言われる日本人の英語だが、どこまで的確に読み取っているのだろう。楽しい文例と徹底比較を通じて英語の新しい世界を広げてくれる、ベストセラー『日本人の英語』の待望の続編。

1 小指に結んだ赤い糸/2 ここはカンザスじゃないみたいよ/3 花椿と赤いねこ車/4 ぼつぼつ寝ませんか/5 心の揺れから生まれる言葉/6 ことばの情景

前作では日本人の書く英語論文を添削する英語ネイティブの経験から感じたことの小論が中心だった。

読了:日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]

今作は、書く方は前作で述べたから、じゃ今回は読む方。日本人がネイティブの使う英語のニュアンスをどこまでくみ取れているかということを取り上げていく軽めのエッセイ集(なので前作よりはるかに親しみやすく読みやすい)。いわゆる英文法の教科書には書いていないところまで踏み込んだ、冠詞の使い方に始まり、ゲルマン系の短い動詞と前置詞や副詞を組み合わせた多様な表現の使い分けなど、事細かに英語ネイティブの感覚を説明していく。大切なのは文脈でどういう使い分けがされるのかという点なのだ。日本人がさっと読み流してしまう英文であっても、英語ネイティブはそこでどういった印象を受け取っているのかなどおもしろい。日本人の英語理解だけでなく、反対に英語ネイティブが日本語に対してどう感じているのかなども、英語から日本語、また日本語から英語への、映画の字幕訳や文学作品の訳の違いなどから例を挙げて具体的に説明が供される。言語にはそれぞれのネイティブの文化が根差していることがわかる。

川端康成の「山の音」の作品で限られた範囲に登場する各登場人物がそれぞれに使う複数ある「やさしい」という言葉(日本語ネイティブなら同じ単語だけれどもシチュエーションによって意味しているニュアンスがちょっとずつ違うことは感じ取れるし、場合によっては同じ言葉だけれども意味をあえてずらして解釈しておかしみを出す効果などもある)を、ある著名な英語訳ではどのように訳し分けているのか。一方で日本語では「分からないわ」と「知らないわ」では受ける印象が違うが、英語ではどちらも「I don’t know.」が普通だ(そうはいっても文脈からその違いは英語ネイティブだってちゃんと捉えている)。

日本語と同じように冠詞のないスラブ系ネイティブの英語初心者は冠詞を抜かして「I read book yesterday.」とか言いがちだそうだが、それだと英語ネイティブにとっては「どの本だよ」と突っ込むわけだし、一方で冠詞のルールが厳密なフランス語ネイティブだと「I play the tennis.」とか言いがちなんだって。それはもうそれぞれの言語(ひいては文化)の違いがあるのだから、そういうことが起こるのは仕方のないことで初学者のうちは間違えて当然なもんだと。でも、どの言語であれその言語を学ぶのであれば、きちんと意図を感じとって伝えることのできるようにしたいものだ。というわけで結論は前作と同じで、自然な英語に習熟するためには興味のある分野でいいから徹底して多くの実例にあたって学んでいくしかないよと。

それにしても、この著者の日本語の能力はすごい。自身の日本語の能力を謙遜してはいるのだが、一般生活者としての日本人でさえそんな細かい違いまできちんと認識していないぞ(場合によっては日本人なのに日本語に不自由だったりする人だっているぞ)というようなことまで、誤解のないように丁寧でしっかりとした日本語を駆使して日本人相手に日本語の文章で説明するのだから舌を巻く。

日本人の英語(続)(岩波新書)[マーク・ピーターセン]
続 日本人の英語(日本人の英語)[マーク・ピーターセン]【電子書籍】

技術用語としての「レガシー」と「枯れた」もの

 東京オリンピックは延期されましたが、競技場だのなんだのを作る口実として盛んに「レガシー」という言葉が使われておりましたね。次の世代、未来へ残すに値する将来も活用できる「遺産」としての建造物を作ろうという狙いで(実際にそういう意図が本当なのかお題目なのかは知りませんが)。

 IT業界には「レガシーシステム」という言葉があります。これは概してネガティブな印象を受ける言葉で、むしろ時代遅れの「負の遺産」という感じです。昔々のメインフレーム時代に構築された基幹システムであることが多く、今でも銀行系のシステムはこれで動いているとか動いていないとか(ラフはへなちょこなので、シビアなお金と命がかかわるシステムには怖くて関わりたくない)。レガシーシステムをモダンな技術に移行する legacy migration というのがそういう企業のIT命題だったりもするわけです。でも、何とかしたいと思っても不用意に手のつけようがなくて手をこまねいてしまうものでもあったりして、うかつに移行プロジェクトに関わるとデスマーチに巻き込まれたりひどい目に遭う場合があります。

レガシーシステムとは – 意味の解説|ITトレンドのIT用語集

 IT業界では「枯れた技術」という言葉もよく使われます。これはどちらかというとポジティブな言葉です。一般的には「オワコン(終わっているコンテンツ)」みたいな印象を受けるかもしれませんが。「枯れた技術」とは、「広く使われてきたので、その知識や活用法のノウハウが十分に蓄積されているため、安心して使える技術」という感じなのです。

枯れた技術 – Enpedia
枯れた技術こそ、安定する。 | 情報を見極める力がつく30の方法 | HAPPY LIFESTYLE

ボタン逆じゃね?

家の卓上にあるBluetoothスピーカーに曲送りと音量調整のボタンが付いている。いや、付いているのは当たり前なんだろうけれども、ちょっと違和感があるのだ。

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こんな風に2つのボタンが向かって左右に並んでいるのだが、軽く1回押す場合は、左側のボタンが前の曲に戻る、右側のボタンが次の曲に進むなので、まぁ普通だろう。長押しする場合は音量の調整ができるんだけれども、なんと左側のボタン長押しが音量大、右側のボタン長押しが音量小なのだ。この音量の調整の役割逆じゃね?左が音量小、右が音量大っていうのが感覚的にわかりやすいインターフェースなのではなかろうか?これって設計ミスでは?どうも違和感を感じて仕方がない。慣れれば問題ないんだろうけれども。

読了:ネットワーク超入門講座 第4版[三上 信男]

幅広い知識がやさしく学べる入門書のベストセラー!図解と丁寧解説で企業ネットワークの重要事項と全体像を理解しよう。最新事情に対応。写真も多数掲載。

1 ネットワークの全体像/2 LAN超入門/3 WAN超入門/4 スイッチ超入門/5 ルータ超入門/6 セキュリティ超入門/7 VoIP超入門/8 無線LAN超入門

自分は基本的にはソフトウェアエンジニアだと思っていて、ITインフラの知識が決定的に欠けていることは昔から認識していた(ITインフラって何?それっておいしいの?レベル)。いやソフトウェアエンジニアであろうと、IT業界の片隅に籍を置かせてもらっている以上は、ITインフラであるネットワークの基本を知らないのは由々しき問題であるとはうすうす感づいてはいた。そこでようやく重い腰を上げて取り上げたのが本書。「入門」と銘打っているからには本当に基本的なことしか書いていないんだけれども、ふわっとしかわかっていなかったラフのITインフラに関する怪しげな知識を具体的に整理できたので、読んでよかった。そもそも、ネットワークというものがどのように組まれているのか全く知らずにセキュリティとか議論するって、基盤工事がちゃんとされていないうえに家を建てるようなものだしね。

情報処理の試験でネットワーク図によく出てくるL2スイッチとかルータとかファイアウォールとか、まぁ機器をつないでいるハブみたいなもんで、それぞれ何となくこんなことやっているんだろうなぁというくらいの認識でこれまで挑んでいたのだ。つまり、なんでそういう風なネットワーク構成になっているのだとかいうその意図や背景となるものについては詳しくは分かっていなかったのだ。そういうわけで、本書の第2章から第5章は本当にすごく役に立った。あ、そういう機械だったんだなと。マシンルームとは縁遠く本物を見たこともないラフには、具体的にそれぞれの機器の写真も掲載されていて(どの機械も平べったい四角でケーブルを差し込む穴が側面にいっぱいあるだけの似たようなものばかりではあったものの)、現実に存在していたんだという衝撃もあった(まぁそういう物理的な装置の存在を知らなくても使えるというのがネットワークのすごさとも言えるが)。

とりわけ役に立ったのは、それぞれの機器がOSI基本モデル(覚えるのが面倒くさくてラフがずっと苦手意識を持っていてなんとなくしか理解していない代表)のどの層担当の機器なのかが整理されていたこと。これがわかってくると、俄然おもしろくなった。また、時代はIPv6に移ろうとしているとはいえ、まだまだ現役のIPv4のIPアドレスのルールも詳しく説明されていて、自分で計算しながらどうやって決まるのか説明できるようになったよ。今までのラフの知識はIPv4のIPアドレスにはクラスA~Cくらいがあって(意味はよく分かっていないし、実際はEまであるということを知った)、プライベートアドレスの最初は192とか172とかが多いんだなぁ、サブネットマスクって何?とかいうレベルだったのだ。

あと、第7章のVoIPはこれまでまったく手つかずの分野だった。いわゆるIP電話の話。音声データと通常のデータが同じネットワーク上を流れていること(実は流す仕組みは同じだけれども、ネットワーク回線は物理的に分けるものだと思っていた)、そして音声データは通常データよりもシビアに優先されなければならないということが絶対的に重要であるとは!!今までの認識を覆されたよ。たかだか「音声」じゃんとか思っていた自分を強く恥じた。

本当に「超入門」だけれども、新しい知識を得るというよりも、苦手意識を持っていたから今までふわっとあやふやでしかなかったITインフラ知識を具体的に整理して理解することができたという点で、最近読んだ仕事関係の実用書の中では断トツに役に立った一冊だった。

ネットワーク超入門講座 第4版[三上 信男]
ネットワーク超入門講座 第4版[三上 信男]【電子書籍】

やっぱり僕は英語ができない

僕は英語ができないシリーズだ。

もう恥ずかしくなるくらいほんのちょっとずつだけれども通勤電車の中では英語の勉強をしているのですよ。主にヒアリングを。つくづく思い知るのは、やっぱり人というものは、よく聞き取れなかったフレーズは自分が知っているものに脳内で強引に結び付けてしまうものなのだということ。

今日は題材は、空港のカウンターで乗る予定の便の確認をしたら機材トラブルでその便がキャンセルになっていてどうのこうのっていう話だった。


  1. 「11ぴきのねこ」
  2. 「due to mechanical problems」の「due to」が「じゅういち」に聞こえて「え?11?『じゅういち』って日本語じゃん……」。そして、11ということで、ラフの頭の中にはもはや空港ではなく、1機の飛行機とその機体を見上げる「11ぴきのねこ」(馬場のぼる)の絵が浮かんでいるのだ。

    11ぴきのねこ|絵本ナビ : 馬場 のぼる みんなの声・通販

  3. 「オフィーリア」
  4. さらに話は進み、今日は他の便もすでに満席なので、明日の早朝の便とおわびの宿泊施設を手配してくれるんだけれども、

    「we can offer you a place to stay」

    の「offer you a」の部分が「オフィーリア」に聞こえてしまい、「can オフィーリア?オフィーリアなんて動詞知らないぞ?オフィーリアできる?なんじゃそりゃ?ラフの知っている一番有名なオフィーリアといえばこれだよ」

    オフィーリア
    John Everett Millais / Public domain

話の内容を自分事としてとらえると分かりやすいよというアドバイスがあるけれども、ラフの頭の中はこんなものが頭に浮かんでいるので、まず状況の理解がすんなりといかないのである。

謎のクスリ

未使用の点眼薬を冷蔵庫に保存しているんだけれども、いくつかたまっていたので使用期限チェックをしてみた。その中に「点眼薬」と印刷されている袋なのに(「点眼後は、この袋に入れて保存してください。」とも書いてある)、なぜか中に入っているのは「うがい用(目に入れないこと)」とラベルされた容器だったものがあった。口内やのどの炎症を抑えるうがい液のようなのだが、なぜこれが「点眼薬」と書かれた袋に入っているのか?そもそもどこの薬局で処方されたものなのか?(いつも使っている薬局でもらう袋とは違っている)。自分で入れ替えたのか?謎が謎を呼び次回に続く。

キエフの大きな門

昨日に続いて今日もラベルの話題で。(ラフはクラシックではフランス近代音楽が結構好き)

組曲「展覧会の絵」という作品があります。原曲はロシアの作曲家ムソルグスキーが作曲したピアノ独奏のための組曲ですが、それをオーケストラに編曲したのがフランス人のラベル。ちなみにオーケストラに編曲した人はラベルのほかにもいますが、ラベルの編曲が一番有名。オーケストラに編曲するに際して組曲中何度か登場する間奏曲的役割の「プロムナード」がいくつか省かれたりしていますが、もともとラベルは自身のピアノ曲をオーケストラ編曲する際も、オーケストラで効果的になるようにとこういうことをやっている例が多々あります。

wikipediaの「展覧会の絵」の項

さて、この組曲「展覧会の絵」の最後を飾るのは「キエフの大きな門」という曲です。素朴で堂々とした曲で締めくくるのです。ちなみにこの曲のピアノ楽譜は結構白いです(細かい動きの音符が少ない)。

一方で、ラベルが編曲した組曲「展覧会の絵」の「キエフの大きな門」はこんな感じ。エンディングはラベルの異名「オーケストラの魔術師」にふさわしいやりすぎ感あふれるまでの豪華絢爛きらびやかなものになっています。ロシアの雰囲気、原曲や作曲者の意図もあるだろうけれども、オーケストラでやるならオーケストラの良さを活かさなきゃっていうラベルの意気込みを感じずにはいられません。まさに換骨奪胎の極みともいえる新たな作品。

ちなみに、ピアノ原曲の作曲者であるムソルグスキーが展覧会で見たといわれる「キエフの大きな門」の絵はこちら。
Hartmann -- Plan for a City Gate
ヴィクトル・ハルトマン / Public domain

ピアノの原曲でさえ多少大げさかなと思われるくらいの、立派ではあるけれども素朴な門という印象をラフは受けた。それに比べると、ラベル編曲による「キエフの大きな門」は、ド派手にライトアップされた威風堂々としたパリの凱旋門を思い浮かべてしまうのであった……(それが悪いと言っているわけではない)。

ボレロの演奏動画各種

「ボレロ」という楽曲といえばラベル作曲のオーケストラ作品が有名でしょう。メロディーは2種類しかなく、それをいろんな楽器で奏しながら、ひたすらクレッシェンドしていく15分ちょっとの曲。最後の最後で一瞬だけ転調するものの基本的には調も変わらず。テンポも変わらず。それでいてアイデア倒れにならず素晴らしい芸術作品に仕上がっている点がすごい。

wikipediaの「ボレロ (ラヴェル)」の項

さてはまず、ネットで一時話題になった「死ぬほどヘタクソなBolero」から。わざと笑いを取りにいっているのかと思えてしまうほどの演奏。トロンボーンソロ、なぜそんな有様になった(笑)。技術は足りないけれども演奏したかったという熱意だけで挑戦したのか?

(ちなみに動画は、デュトワが指揮しているプロのオーケストラのものを合わせてあるので実際の演奏とは違います)

昨今のコロナウイルス禍のもとリモートワークを実践されている方も多いでしょう。リモートワークを彷彿とさせるオーケストラ演奏動画。楽器が増えていくのに伴って画面分割されていく様が曲の展開を視覚的に見ているようで楽しい。

その一方で、リズム伴奏(カラオケ?)を背景に、ソロ楽器部分(木管楽器)を一人でやってしまう方も。(実際の原曲伴奏とは違ってコードが変わっていないところがありかなり奇妙な感じはするが)

最後に「本当はこんな曲なんですよ」ということで本物の原曲動画をどうぞ。いろいろアップされていますが、とりあえずラベルがフランス人なのでフランスのオーケストラの演奏を紹介。

wikipediaの「ボレロ (ダンス・音楽)」の項
ボレロはラテン系の3拍子の踊りで、そのリズムを使った曲に「ボレロ」と名付けているわけです。ワルツという踊りのための曲に「ワルツ」と名付けるのと同じです。ピアノ弾きの中で有名な「ボレロ」といえば、やはりショパンのボレロですかね。

【参考】wikipediaの「ボレロ (衣服)」の項