「朝、昼、晩、夜、汝はビールを飲むべし。然らずんば軽蔑されん」

「ノンアルコール飲料は昼間でも気兼ねなく飲むことができる」って文言を見かけたんだけれども、「普通のアルコール飲料でも俺は昼間から気兼ねなく飲むことができるぜ」と思いながら、昼間から家で一人ビールをたしなむ土曜日。

パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」的なビール小話を一つ。
“Beer is proof that God loves us and wants us to be happy.” – Franklin and the American Experiment

前広って誰やねん!!

この日記もどきを定期的に見に来てくれている人はごく限られたほぼ身内の数名なんだけれども、ネット検索結果から訪問してくださる方もまれにいらっしゃいます。ネット検索からは「ご如才なきことながら」という言葉を調べていていらっしゃる方が多いようです。

ご如才なきことながら、仕事納めさせていただきます

すみません、当サイトは言葉の定義や成り立ちを説明する学術サイトではなく、「ただ日常でこういうことがあったよ」という日常報告サイトなので、検索結果からお越しいただいた方のお役には立てていないかと思います。

さて本日は、その「ご如才なきことながら」メールをいただいた彼と、仕事の打ち合わせでチャットをしていたのですが(ラフは相変わらず在宅勤務が続いております)、締めに「間に合わなければ前広にお伝えします。」と書かれていたのです。言葉を知らないラフは「前広さん?誰それ?」とか思った次第です。

「前広」の使い方や意味、例文や類義語を徹底解説! | 「言葉の手帳」様々なジャンルの言葉や用語の意味や使い方、類義語や例文まで徹底解説します。

辞書を引いて(ネットだけど)意味を知ったわけだけれども、「『前広に』なんて使わねぇよ」と一人毒づいてみたり。普段の直接の会話ではごく普通の言葉しか使わないのに、書き言葉になると(チャットでさえ)途端に固くて日常では見かけない官僚系婉曲語彙を駆使してくる彼には一目置いてみたいものです(置くとは言わない)。中途半端なカタカナ語ビジネス用語を濫用されるよりかはこっちの方が個人的には好きだけれどもさ。自分が言うのもなんだけれども、彼はかなりの変態日本語遣いなのだという考えを新たにした昨今なのでありました。

僕はやっぱり英語ができない – 「英語圏の人は日本人のラフには想像もつかないような突拍子もない行動をとることもあるに違いない」

いやね、分かってはいるんですよ。ラフが英語を苦手としているのは、英語に触れている時間と経験が圧倒的に足りていないからなんだってことは。それでもやらないよりはましとちょっとずつでも勉強を続けているわけですよ。

さて、今日のリスニング例文では、オフィスの引っ越しをしたらしいんだけれども大切な書類の入った箱が見つからなくて同僚に聞いたら「見かけてない」との話。で、その同僚が次のように続けたわけさ。

Maybe you should call the moving company and have them check their truck.

「and」がろくに聞き取れていないので、「ウニョウニョウニョウニョ~」とどこで切れるのかわからない英文が流れる間「何をおっしゃっているのかしら?」と耐えているだけのラフ。短文なら聞き取れることが多い「call」も「コゥ?cow?牛?」とか思っていたりする。shouldの後に来るのは動詞の原形と知識ではわかっていても、ラフの頭の中ではすでに「牛をすべきってどういうこと?」とか考えだしている。日本人のラフには理解が及ばないだけで、英語圏の人はなんか知らんけどきっと「牛をする」ってことがあるんだろう。「へい彼女、ちょっと俺と牛しない?」とか。「the moving comapny?(ハウルの)動く会社?」。そのあとに続いている「and」より後の「ウニョウニョ」は次の単語の羅列「half then check there track」だった(音がそれっぽく拾えているところは前よりも進歩か?)。文法的にまったく文章になっていないのでさらに混乱を極めたことは言うまでもない。これがラフのリスニング能力の現状だ(文法力を実際の英文で生かしておそらくこうだったのでは?と捉え直すなんてことはまったくできていない)。

一方、リーディングの例文では、職の応募要項で次のような項目があったわけさ。

You should also include the contact details of a representative at each of your last three employers who can attest to your suitability for this work.

海外(主にアメリカ)ドラマとか映画で、転職の際には前雇用者の紹介状が必要だったり、人事担当者が応募者の前職場への人物照会とかやっているのをよく見かけるけれども、あれのためねと結びついたのは後からである。最初はいい加減に単語の羅列として読んでいたので(というか眺めていただけ<ちゃんと読め)、「contact」を「contract」と見間違え、さらに「attest」を「arrest」と見間違えた。その結果ラフの頭の中には「応募者を拘束する過去の雇用者との契約?拘束というのはお縄になった?縄で縛るとか?SMプレイ(性風俗)か?その詳細な雇用契約書が必要?悪趣味な雇用募集広告だなぁ」と突拍子もないことを考えていたのだ。最初っから文構造を押さえて意味を取ることを放棄して、単語(しかも見間違えている)の羅列でイメージを作っているのだ。

間違った解釈で間違ったイメージを抱いても、「英語圏の人は日本人のラフには想像もつかないような突拍子もない行動をとることもあるに違いない。まぁ文化の違いってやつだよね。」と勝手に対処してしまうことが多いのだ。でも同じ人間なんだしそんな奇天烈なことはそうそうありえないということを平気で忘れている。ましてや簡単な日常ビジネスコミュニケーションの話なんだから。

読了:ラッシュライフ(新潮文庫 新潮文庫)[伊坂 幸太郎]

ラッシュライフ

ラッシュライフ

  • 作者:伊坂 幸太郎
  • 出版社:新潮社
  • 発売日: 2005年05月

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場ー。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

 エンターテイメント小説としては今は池井戸潤のほうが人気あるのかな。でも、ラフはビジネスエンターテイメント小説にはどうも食指が動かない。読めばきっと面白いんだろうけれども。また百田尚樹のビジネス英雄譚みたいな伝記っぽいものもあまり好まない。そうなのだ、ビジネスというものに根本的に興味がないのだ。

 なので、若干ファンタジー色が強いものの一般の市井人が主役で日常を苦悩しながらも生きていく、そしてちょっとした事件に巻き込まれて奇想天外な展開をしていくが、人生を生きることに絶望しない伊坂幸太郎の小説は好きなのだ。伊坂幸太郎が仙台在住なので仙台を舞台にした作品も多く、本作も主に仙台市街で話が展開される(仙台駅や市街の通り名やアーケードのある商店街の位置関係などを知っていると面白く読めるかも。ドラマなんかでこのシーンは東京のあそこだ!とかわかるとうれしいみたいな感じ?)。

 並走する4つの物語と書いてあるけれども、ちょっと弱めのもう1つのグループがあって全体で5つの話が並行して進んでいく。駅前に新たにオープンしたカフェや、展望台のある駅前ビルで開催されているエッシャー展、駅近くで道行く人に好きな日本語の調査をしている外国人などどの話にも出てくるガジェットがあって、それぞれの話が並行して進行していることを示唆する。正直言うと常識的にはあり得ない設定もちらほら出てくるけれども、そこは伊坂幸太郎の絶妙なファンタジー描写で「まぁそういうことでいいか」と流せる。とりわけ、軽妙洒脱でさりげない教養溢れる会話は伊坂幸太郎ならではで楽しめる。そして各話で出てくるエピソードや小道具がそれぞれほかのエピソードにも登場してきたりすることで、だんだんと話が整理集約されていく。それぞれのエピソードは独立しているけれども完全に別個ではない。しかも読者がちりばめられた仕掛けをパズルのように組み立てていく過程でわかってくるのは、各エピソードが実は同じ時刻に同時進行しているのではなかったということ。各グループの出来事は日が一日ずつずれていたのだ。

「人生がリレーだったらいいと思わないかい?」
「リレー?」
「私の好きだった絵にそういうものがあってね。『つなぐ』という題名だった。それを観て思ったんだ。一生のうち一日だけが自分の担当で、その日は自分が主役になる。そうして翌日には、別の人間が主役を務める。そうだったら愉快だな、と」
「そうだとしたら、お前の出番はいつだよ」
 佐々岡はあまり考えなかった。「昨日だよ。君と久しぶりに会えて楽しかった。昨日は私が、私たちが主役だった」
「子供じみた考えだな」
「昨日は私たちが主役で、今日は私の妻が主役。その次は別の人間が主役。そんなふうに繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように続いていけばいいと思わないか? 人生は一瞬だが、永遠に続く」
「人の一日なんてどれも似たり寄ったりだよ。俺たちの昨日も、おまえのカミさんの今日も、別の人間の明日だって、重ねて一度に眺めてみればどれも一緒に見えるさ」
「そんなことはない」と佐々岡は笑った。

 そうか、この物語の仕掛けはこれだったんだね(ネタばれゴメン)というわけ。これは市井の人への人生賛歌だな(登場人物はことごとくとんでもないことに巻き込まれたりやっていたりするけれども)。こういうところが伊坂幸太郎のエンターテイメントの気持ちいいところなんだよね。

「私には賭けるものなんてない」
「もし金庫があったら、俺のアドバイスを聞けよ」
「アドバイス?」
「泥棒なんていう孤独な仕事を続けているとな、誰も自分の言うことを聞いてくれない事実に愕然とするんだ。人は誰かに忠告されたい。同時に誰かにアドバイスしたいと思っている。そういうものだ」
「そういうものかい?」
「誰だって人生のアマチュアだからな。他人に無責任なアドバイスをしてだ、ちょっとは先輩面したいんだ」

ラッシュライフ(新潮文庫 新潮文庫)[伊坂 幸太郎]
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デビルイヤーは地獄耳

 7月半ばからS吹奏楽団の練習が再開したんだけれども、3月末以来しばらく楽器を吹いていなかったもんだから、再開後の練習でどうも自分の出している音に激しい違和感を感じていたんだよね。まるで自分の音ではないような感じ。まぁしばらく吹いていなかったんだから慣れてきたら前みたいに聞こえるようになるかなぁとか思っていたんだよ。でも、最近左耳がプールで水が詰まったような感じがするようになり、左側にいる人の話がとっても聞きづらいということを自覚しだした(在宅勤務が続いているので人と話をすることがほぼなくて気付かなかった)。どうも左耳がフィジカルによく聞こえていないようなのだ。

 SちゃんやIYに「突発性難聴かもよ」と脅されたので、耳鼻科に行って診てもらった。先生が耳の中をのぞくや否や「耳垢栓塞ですね」と一発診断。左耳は耳垢で鼓膜が見えていないほどの状態だとか。また左耳だけでなく右耳も相当らしい(ちょっとでもすき間があれば聴力には影響が出ないそうだ)。というわけで、吸引と洗浄で両耳とも耳垢栓塞を取ってもらってきましたよ。取った耳垢を見せてもらったんだけれども、黒い小豆を割ったくらいの大きさがあった(色は黒いんですよ。No Picture)。先生曰く「数年物ですね」と。

診療明細書_処置:耳垢栓塞除去(複雑なもの)(両側)
処置:耳垢栓塞除去(診療明細書より)

耳垢栓塞 | 病気スコープ

 ラフの耳垢のタイプは湿性なのだ。湿性タイプは耳垢栓塞になりやすいらしい。ちなみに耳垢の表現型(phenotype)には湿性と乾性があって、これはほぼメンデル遺伝する典型的な例として教科書によくとりあげられる。湿性が顕性(優性)だけれども、世界的分布から見ると東アジアは乾性のほうが多い(日本人も含む)。

耳かきで分かるあなたの先祖 意外な勢力図|エンタメ!|NIKKEI STYLE

 耳垢栓塞を除去してもらって、左耳の違和感もなくなってすっきりはしたんだけれども、なんだか聞こえすぎるのだ。今までだったら聞こえていなかったような小さな音まで拾ってしまっている。え、世の中ってこんなにうるさかったの?ってくらい。パソコンの音とかクーラーや換気扇の音、火のついたガスコンロの音、トイレの水を流す音にいたるまでこんなにうるさかったの?俺の耳はデビルイヤーになっちまったよ。

 そういえば、昔見たアジアンホラー映画に、盲目の少女が角膜移植手術により視力を回復したのだが、見えてはいけないもの(幽霊)が見えてしまうようになっていたというのがあったなぁ。ひょっとしたら、ラフも聞こえてはいけないものまでが聞こえているのではないかという気がしておびえている。

the EYE 【アイ】 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

Brush my face!!

朝、仕事前にシャワーを浴びたのであるが、シェービングジェルを顔に塗りたくった後、シェーバー(3枚刃T字カミソリを使っている)ではなく隣に立ててある歯ブラシを手にしてしまい、今自分が何をしようとしているのか混乱に陥った。数秒フリーズしたあと、シェービングジェルを塗りたくったのだから、ひげをそるという行為が next to do だろうと思い出して、歯ブラシを置いてシェーバーに持ち替えた。ルーティンワークのように頭使わずにやっているはずのことでも、ちょっとした不具合が発生して混乱してしまうのは、それだけ年を取ったということだろうか。今日は最終的には気づいたからいいものの、シェービングジェルを塗りたくった顔を歯ブラシでこすりだすのも時間の問題なのではないかと戦々恐々。

「社長は課長だったんです!!」

S吹奏楽団の仲間と親睦飲み会の席で、ある女性が突然次のようにのたまった

「聞いてください!!うちの社長は課長だったんです!!」

その場にいた全員、彼女が口にした日本語の意味が取れずに「この女はいったい何を言いだしたんだ?」。

彼女はさる非営利系の団体に勤めているのであるが、その団体は各センターみたいなものをいくつか持っている。彼女は、その中の1つで働いている。そして彼女が属しているセンターみたいな所の一番偉い人のことを彼女は「社長」と呼んでいるのである(会社ではない非営利系団体の中のいくつかあるセンターのトップなのだから、「社長」ではなく「センター長」とか「所長」だろうとか思うのだが、彼女にとっては「社長」らしい)。そしてその「社長」の指示の出し方や仕事のやり方が、彼女の合理的精神とは相容れないようで、これまでにも「社長」について、よく愚痴をこぼしていたのである(愚痴をこぼすだけでなく、職場でも直接「社長」本人にダメ出しをしているらしい)。

おそらく、彼女の発言に出てきた「社長」というのはその「社長」のことであろうことは理解した。でも「社長が課長だった」とはどういう意味だ?

よくよく聞いてみたところ、彼女が「社長」と呼んでいる人が、非営利系団体全体の中では「課長」相当の役職だったということらしいのだ。いつも「社長」と呼んでいた人が実はそういう立場の人だったことに彼女が勝手に驚いただけなのだが、それが上述の突拍子もない日本語となったわけであった。(そして同じセンターに彼女が言うところの「副社長」という人もいるのだが、その人は「係長」相当だったらしい)

仕事の合理化は結構だが(実際彼女は仕事ができる)、彼女が口にする独りよがりな合理化された日本語発言はちょくちょく必要な要素が足りていなくて結構おかしい。まぁそこが彼女が皆から愛されている理由の1つではあるのだが。