S吹奏楽団にはカミングアウト済みのゲイが何人かいるんだけれども(ラフもそのうちの一人ですが、S吹奏楽団は決して性的少数者主体の楽団ではなく一般の吹奏楽団です)、先日ですね、S吹奏楽団の練習後の飲み会で、じゃ世間的にみてこの楽団に所属しているゲイの人数は多いのかどうかってことを話題にした人がいた。S吹奏楽団にはカミングアウト済みの人がいるからには、「LGBTの人に会ったことがない」などとのたまう一般の人しかいない団に比べるととても寛容な団ではある。その人(ノンケ)がいうには「まぁ、LGBTの人って13人に一人くらいはいるらしいからね」と。ん?その数字はどこから出てきたのだ?13人に一人というとだいたい7.6%くらいだな。おそらく、これはよく引用されている電通の調査が根拠と思われる(2015年くらいの調査だったか?)。
■ 電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2018」を実施 – ニュースリリース一覧 – ニュース – 電通
電通さんは継続的に調査を行っているけれども、上記リンクは2018年の調査。ここでは、LGBT層に該当する人は8.9%とのこと。まぁ以前のデータと比べるとちょっと増えてるね。でもさ、これってLGBTの人が増えたわけではなくって、調査に適切に応じる当事者が増えてきたってだけだと思うんだよね。最近巷にあふれるLGBT記事で上がってくる数字はたいてい電通の調査のものを引用するものが多いんだけれども、この数字をもっとも確信が持てる数字として伝家の宝刀みたいに振りかざす記事は、いまひとつ信用がならない。あくまでも、電通が電通なりの調査をした結果のレポートであって、必ずしも実態に近いものであるかどうかはまだ不明だと思うのがラフの見解。
こちらの大阪市を対象に行ったアンケート調査では性的マイノリティーだと回答した人の割合が、3%となっている。
■ LGBTは約3% 国の研究所グループが調査 | NHKニュース
調査を行った「国立社会保障・人口問題研究所」人口動向研究部の釜野さおり第二室長は「性的マイノリティーの人がどれくらいの割合いるか正確な統計がない中、無作為抽出による大規模な調査には意義があり、実態を表す正確なデータが得られたのではないか」と話しています。
しかも実態を表す正確なデータではないかと主張している。電通の値とは結構異なっていますね(同じ趣旨の数値を比べているかは検討の余地ありだが)。両調査は調査方法も母集団も違うだろうし、それにまだまだ自分で正直にカミングアウトするLGBT層は地域によっても世代によってもばらつきが大きいと思うしね(たとえ匿名調査であったとしても)。
さて、こういう性的少数者に対する嚆矢調査としては、1948年のキンゼイ・レポートが有名。
■ wikipediaの「キンゼイ報告」の項
今となっては、調査方法(母集団も設問も統計処理手法も)や結論がそうとうに怪しいもので、このレポートの結果を真に受ける人はもういないと思われる。なのに、最近は激減したけれどもこのレポートの数字でLGBTの議論をしている記事をまれに見かける。問題外ですね。キンゼイ・レポートが重要なのは、セクシャルな事柄(同性愛を含む)をはじめて統計的に調査をして発表したという歴史的意義からなんだよ。だからLGBTの歴史ではほぼ必ず言及される。そしてキンゼイ・レポートは映画にもなっている。
■ 映画 愛についてのキンゼイ・レポート – allcinema
「この世界が100人の村だったら」というかつて流行った書籍があるけれども、この中では「100人中、11人が同性愛者である」という記述がある。この数字もキンゼイ・レポートをもとにした数字らしい。
ま、世間的にはLGBTに寛容になってきたとはいえ、まだカミングアウトを躊躇あるいは拒む当事者も多いわけです。なので実際的な数字はアンケート調査ではわからないですけれども、ラフの実感としてはセクシャルマイノリティー当事者は身の回りに結構いるもんですよという程度のこと。
「え?LGBTの人に実際に会ったことがないって?それはさぁ、あんたがカミングアウトするのにはふさわしくない人物と思われているだけだよ。」
■ LGBTQの割合「13人に1人」ではなかった 「3%」という”下方修正”をどう見るべきか、研究者に聞いた | ハフポスト