読了:美術館・博物館の事件簿[島田真琴]

美術館・博物館の事件簿

美術館・博物館の事件簿

  • 作者:島田真琴
  • 出版社:慶應義塾大学出版会
  • 発売日: 2024年12月17日頃

日本の3つの「ダリ展」、大英博物館の収蔵品、琉球王家の遺骨、表現の不自由展、重要文化財准胝観音立像・・・。
アートの世界の内幕と真実とは?
16の法廷ドラマと15のコラムから美術館・博物館の舞台裏を明らかにする。

日本では、美術館と博物館は別物とされているが、英語ではどちらも「ミュージアム」で、実は両者の間に違いはない。強いて区別すれば、美術品を多く収蔵・展示しているのが美術館、それ以外の歴史資料、自然資料等を収蔵・展示する施設が博物館ということになるが、東京、京都、奈良の国立博物館は美術品・工芸品を中心に扱っているし、古文書や化石などを集めている美術館もある。

本書は、日本と世界の美術館・博物館がその活動や収蔵品、借入品等に関連して巻き込まれた様々な裁判や事件を紹介している。外見は取り澄ましてみえるこれらの施設の舞台裏では何が起きているのか? どんな問題を抱えどう対処しているのだろうか?

【登場する主なミュージアム】
● サルバドール・ダリ劇場美術館、● シカゴ美術館、● スミソニアン国立自然史博物館、● ソロモン・グッゲンハイム美術館、● 大英博物館、● デトロイト美術館、● ニューヨーク近代美術館、● バークシャー美術館、● ハンタリアン美術館、● ピナコテーク・デア・モデルネ、● ペギー・グッゲンハイム美術館、● ポンピドゥーセンター国立近代美術館、● マンチェスター博物館、● ミュージアム・オブ・アーバン・アンド・コンテンポラリー・アート(MUCA)、● レオポルド美術館、● ロンドン自然史博物館、● ワシントン・ナショナル・ギャラリー、● 熱海山口美術館、● 岩手県立美術館、● 京都大学総合博物館、● 高知県立美術館、● 国立アイヌ民族博物館、● 大丸ミュージアム、● チームラボプラネッツ、● 富山県立近代美術館、● 名古屋市美術館、● 奈良国立博物館、● 横須賀美術館

1 美術館・博物館の舞台裏(展覧会のため貸出し中に損壊した現代美術家フランク・ステラの作品/展覧会のために借り受けた名画の返却を禁じられた美術館 ほか)/2 美術館・博物館が直面する倫理的要請とのジレンマ(ユダヤ人銀行家が所蔵していた5枚のピカソ絵画の行方/大英博物館の収蔵品はホロコースト被害者の遺族に返却できるのか? ほか)/3 美術館・博物館の現代的課題(博物館が処分を決めたアメリカの人気画家ノーマン・ロックウェルの傑作/美術館がアーティストから購入した作品を公開しないのは表現の自由の侵害か ほか)/4 文化財の購入、変更、処分の規制(イタリアで重要文化財に指定されたヴァン・ゴッホ作品「庭師」の買主は?/奈良の新薬師寺が所蔵する重要文化財、准胝観音立像の売却 ほか)

著者は、国際法やアート関連を専門とする弁護士。裁判沙汰になった美術や文化財のエピソードを実際の裁判の行方とその影響を考察した読み物。なるほどね、なんとなくはそういう権利があるんだろうなぁと思っていたことも、実際に裁判ではこうやって争点化されるんだ。耳にしたことのある事件もあった。裁判が今後どういう影響を及ぼすのかまで法曹の立場から述べられているのはおもしろい。

ノーマン・ロックウェルの「シャッフルトンのバーバーショップ」って今はジョージ・ルーカスが所有してるんだって。争われた作品のその後についても興味深い。

美術館・博物館の事件簿[島田真琴]
美術館・博物館の事件簿[島田真琴]【電子書籍】

読了:雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】(雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】)[ジャスパー・フォード]【電子書籍】

雪降る夏空にきみと眠る(上)

雪降る夏空にきみと眠る(上)

  • 作者:ジャスパー・フォード/桐谷 知未
  • 出版社:竹書房
  • 発売日: 2019年06月27日頃
雪降る夏空にきみと眠る(下)

雪降る夏空にきみと眠る(下)

  • 作者:ジャスパー・フォード/桐谷知未
  • 出版社:竹書房
  • 発売日: 2019年06月27日頃

過酷な冬を越すために人間が冬眠する世界での物語。
ふとした偶然からチャーリーは冬季取締官に志願する。
冬季取締官は眠らずに盗賊(ヴィラン)や冬の魔物(ウィンターフォルク)に対処する過酷な仕事だ。
無事取締官になったチャーリーは、冬眠に失敗しナイトウォーカーになった女性を別の地区まで送り届けることに。
ナイトウォーカーは普段はおとなしいが、
空腹になるとひとを襲うちょっぴり危険な存在だ。
途中で思わぬ事件に巻き込まれながらも、ようやく〈セクター12〉にたどり着いたチャーリーは、
夢の中の夏の楽園(サマートピア)で、美しいベルギッタと出逢うことになるのだった。
二度と還らぬあの夏の砂浜で。

なんだかふわっとした、まさに夢の中のようなファンタジー。舞台は過酷な冬の世界なんだけれども、複雑な人間関係や陰謀論、睡眠や夢にまつわる謎や推理、伝説といったものがてんこ盛り。それなのになんだかのほほ~んとした優しい感じのジュブナイル的な読み物。緊迫したシーンもあることはあって面白くはあるけれども、さらっと流される書きっぷりのためかドラマチックさは今一つ。主人公も何となくの常識的な正義感に従っているって感じで、確固たる意志で生きているという雰囲気ではない。上巻はとにかく世界観と登場人物を把握するためで若干退屈。下巻も後半になってようやく何が問題なのかが分かってくる。そんでもってバンバン身近な死人が出てたのに、おとぎ話的なハッピーエンド。

雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】(雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】)[ジャスパー・フォード]【電子書籍】

読了:チップス先生 さようなら[ジェイムズ・ヒルトン]【電子書籍】

イギリス人作家ジェイムズ・ヒルトンの名作「Goodbye Mr. Chips」の全訳・新訳です。
イギリスのパブリック・スクールであるブルックフィールド校に長年勤めてから退職したチップスは、学校近くのウィケット夫人の家に間借りして、今でもブルックフィールド校とのつながりを保っています。そんな老齢のチップスが、様々な出来事を温かい眼差しで思い出しながら人生の晩年を過ごす様子を描いた傑作です。
縦書き、ルビ付き、豊富な脚注付き。
H.M.ブロックによるモノクロ挿し絵を22点収録。

これまでに2度映画化されている原作。19世紀後半から20世紀にかけての激動のイギリスを舞台にした、生真面目だけれどもちょっと風変わりなチップス先生が回想する教師生活と引退生活。奥さんと子どもの死や空襲の中の授業など劇的なシーンもあるものの、基本は淡々と出来事が語られる。しみじみと読める。

チップス先生 さようなら[ジェイムズ・ヒルトン]【電子書籍】

読了:鹿男あをによし(幻冬舎文庫)[万城目 学]

鹿男あをによし

鹿男あをによし

  • 作者:万城目 学
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2010年04月06日頃

テレビドラマ化もされた大ベストセラー。
「さあ、神無月だーー出番だよ、先生」。二学期限定で奈良の女子高に赴任した「おれ」。
ちょっぴり神経質な彼に下された、空前絶後の救国指令とは? 「並みの天才じゃない」
と金原瑞人氏激賞!

いや~、万城目ワールド全開で面白かった。なんでこんな面白い設定を作れるかねぇ。あれとあれを組み合わせてこんなことになるのかぁと、ともかくその作品構築力には舌を巻くばかり。ファンタジー色のかなり濃い青春もの。奈良の市街地図でも眺めながら読むのが良いかと。

鹿男あをによし(幻冬舎文庫)[万城目 学]
鹿男あをによし[万城目学]【電子書籍】

読了:人は、こんなことで死んでしまうのか!(知的生きかた文庫)[上野 正彦]

人は、こんなことで死んでしまうのか!

人は、こんなことで死んでしまうのか!

  • 作者:上野 正彦
  • 出版社:三笠書房
  • 発売日: 2024年01月17日頃

二万体の検死・解剖を行なった、元監察医が解き明かす「死のメカニズム」!

65万部を超えたベストセラー『死体は語る』の著者、上野正彦が
死にまつわる常識・迷信・疑問を一刀両断!

●「笑い死に」はあり得るのか
●カラオケで死ぬかも……
●人間の体温の限界は?
●凍死者が裸で発見される理由
●泳げる人でも溺れるのはなぜ?
●人はニオイで死ぬのか
●絞殺は首つり自殺に偽装できるか
●ゴルフ場で死者が多いミステリー

「こんなことで死んでしまうの!?」と言いたくなるような日常にひそむ死の危険から、
生と死の境界線、意外な死の真相、死の医学までを徹底解説!

「知っておけば死なずにすんだのに……」
「人体はどこまで耐えられるのだろうか……」

知っているようで意外と知らない、「こんなことで死なない」ためのトリビアを気楽に学べる一冊!

第1章 日常にひそむ死の危険(ゲップを我慢して死ぬー胃が膨らんで心臓を圧迫する/菓子の小さなかけらで死ぬー喉にものが詰まると意識を失う ほか)/第2章 生と死の境界線(呼吸停止の限界は?-理論上の限界は八分だが…/心臓停止は何分なら大丈夫?-電気ショックは心臓が完全に止まる前に ほか)/第3章 意外な死の真相(水に落ちても人は死ぬのかー水面がコンクリートに変わる/なぜ泳げる人でも溺れるのかー水の中で方向がわからなくなる ほか)/第4章 死の医学(首つりの死因は窒息死ではない?-気管が絞まるか、血管が絞まるか/首つり自殺と絞殺の違いー偽装工作は一〇〇%不可能 ほか)

ヒトの死にまつわるトリビア集。上野正彦の過去に読んだいくつかの著書はおもしろかったけれども、これは「あぁそうですか」って程度。エピソード的におもしろいものが紹介されるわけでもなく、ヒトはこういう場合にこう死ぬよっていう原理原則の話が分かりやすく綴られているだけで深みがない。ざっと読んでおけば十分かな。

人は、こんなことで死んでしまうのか!(知的生きかた文庫)[上野 正彦]
ヒトは、こんなことで死んでしまうのか(ヒトは、こんなことで死んでしまうのか)[上野正彦]【電子書籍】

読了:われはロボット 決定版(ハヤカワ文庫SF)[アイザック・アシモフ/小尾 芙佐]

われはロボット 決定版

われはロボット 決定版

  • 作者:アイザック・アシモフ/小尾 芙佐
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2004年08月06日頃

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。

ロビイ/堂々めぐり/われ思う、ゆえに…/野うさぎを追って/うそつき/迷子のロボット/逃避/証拠/災厄のとき

アイザック・アシモフの古典SF。「ロボット工学三原則」をテーマにしたロボット短編集。ロボット工学三原則は耳にしたことがありだいたいどういうものかも知っているけれども、じゃこの名作古典SFを読んだことがあるのか?と問われると、ない。それどころか、こういう短編連作だということさえ知らなかった。

wikipediaの「ロボット工学三原則」の項

ロボット心理学者のキャルヴィン博士が語る、自身の半生と関わってきたロボット開発の歴史。架空の歴史とは言え、なるほどよく考えたもんだ。ロボット工学三原則の原則をかたくなに守るはずのロボットが、その原則ゆえに想定外の動きをしたり、そこから外れる道があった場合や、穴をついたり、いろいろなエピソードが語られる。

われはロボット 決定版(ハヤカワ文庫SF)[アイザック・アシモフ/小尾 芙佐]
われはロボット 決定版[アイザック アシモフ]【電子書籍】