不穏な響き

職場にて。「これはチカンできない」「これならチカンできるんじゃない?」「その場合は警告が必要では?」とか言っていたら、近くにいた総務の人から「ちょっと響きが不穏なので『置換』は『置き換え』って言ってもらえませんか?」とやんわり提言された。うかうか仕様の確認もしてられん。

読了:意識と感覚のない世界[ヘンリー・ジェイ・プリスビロー/小田嶋由美子]

意識と感覚のない世界

意識と感覚のない世界

  • 作者:ヘンリー・ジェイ・プリスビロー/小田嶋由美子
  • 出版社:みすず書房
  • 発売日: 2019年12月18日頃

2012年、権威ある医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』は、その200年の歴史において掲載した論文のなかから、もっとも重要な一本を選ぶ読者投票を行った。読者が選んだ「栄えあるベストワン」は、1846年に掲載されたエーテル吸入による初めての無痛手術についての論文であった。今日では、麻酔は脳や心臓の手術から虫歯の治療にいたるまで、医療現場になくてはならないものになった。しかし、発見から170年以上が経ったいまでも、麻酔薬が私たちに作用するメカニズムは多くの謎に包まれたままなのだ。メスで身体を切り刻まれているあいだ、痛みを感じないのはなぜなのか?手術のあと、何事もなかったように目を覚ますことができるのはなぜなのか?3万回以上の処置を行ってきた麻酔科医が、麻酔薬の歴史から麻酔科医の日常までを描く、謎めいた医療技術をめぐるノンフィクション。

深い眠り/麻酔科医のコマンドセンター/五つのA/線路のような麻酔記録/マスクの恐怖/絶飲食/心臓の鼓動/特別変わった患者/つきまとうミス/待たされる側になると/折り鶴/囚われた脳/目で見て、やってみて、教えてみよ/覚醒/安全な旅路

麻酔って医学分野においてなくてはならないものであるにもかかわらず、そのメカニズムっていまだに謎なんだってね。

さて、本書は麻酔科医による医学エッセイ。麻酔の歴史や、麻酔科医の医療現場における役割や作業、そして使命について、著者のこれまでの経験からの麻酔科医の未来の展望までを語る。手術を受ける患者にとっては、麻酔科医というのは手術直前に初めて会って、かつ術前最後に会う医者でもある、そして手術後にはあまり会わない医者。じゃ、そんな大したことがないのかというとさにあらず。手術前からその患者のことを調べ、患者の不安を取り除くのも仕事。また手術中もつきっきりで患者の様態が安定するようにコントロールする責任を負っている。医者としては花形ではないのかもしれないが、欠くべからざる役割を担っている。それでいながら一般には知られていないため軽視されがちな麻酔科医の仕事と存在意義を知るには、非常に勉強になる。

意識と感覚のない世界[ヘンリー・ジェイ・プリスビロー/小田嶋由美子]
意識と感覚のない世界ーー実のところ、麻酔科医は何をしているのか[ヘンリー・ジェイ・プリスビロー/勝間田敬弘]【電子書籍】