一筋に伸びる二車線のハイウェイ/そしてわれらは暗闇の中/記憶が戻る日/いずれすべては海の中に/彼女の低いハム音/死者との対話/時間流民のためのシュウェル・ホーム/深淵をあとに歓喜して/孤独な船乗りはだれ一人/風はさまよう/オープン・ロードの聖母様/イッカク/そして(Nマイナス1)人しかいなくなった
きれいな表紙だなぁとジャケ買いしたSF短編集(買ったのは電子書籍だけど)。設定や背景やガジェットにSF要素は使われているんだけれども、登場人物はどの作品も人類で、彼女彼らの不安や焦りやどうしようもないやるせなさに溢れた心理描写に重きが置かれている。一般的な人間ドラマなのである。そして、どの作品も種明かしはされるんだけれども、オチは読者にゆだねられる。解決されないちょっとモヤっとした妙な読後感に、あぁ自分はやっぱり彼女彼らと同じ思いを抱える人間なんだなって思う次第。
地球を離れて新天地を目指す宇宙船内の文化活動を通して、過去の歴史(主に地球文明)とこれからの新しい文化の衝突や葛藤、世代間の価値観の違いとその行く末が描かれる「風はさまよう」がとりわけおもしろい。「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」のびっくり設定もユニーク。数多の並行世界にいるオリジンを共有するサラという女性が一堂に会するイベントで起きる、あるサラの殺人事件。
■ いずれすべては海の中に(竹書房文庫 ぴ2-2)[サラ・ピンスカー/市田 泉]
■ いずれすべては海の中に(いずれすべては海の中に)[サラ・ピンスカー]【電子書籍】
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