年末年始のゲイもの鑑賞

年末年始休みに、ゲイものをいくつか消化したので、その紹介。


あさな君はノンケじゃない! [ あさなさくま ]


 昨年末に出た、普通のゲイの日常エッセイマンガ。エロ要素はなし。絵柄が柔らかくて好き。話題もわかるわかるってところは多い。著者が言うように、主人公はゲイの一例でしかないというのは当然なんだけれども、それでも共感できる部分は多い。そりゃ、美大出でアパレル勤務で女装趣味があってゴージャスな交友関係があってっていう部分だけ取り出せば、特殊なゲイだという面はあるかもしれないけれども、普段感じること考えることは同じだなぁと思う。パートナーとの出会い、生活の章は特にほのぼのとする。でもまぁ、アラサーってことは、20代後半?そんな彼が、年下のゲイ友に新たな世代の到来を感じるとか、自身の肌の問題が気になるとか出てくると、ラフのようなアラフィフおっさんはもう一体どうしたらいいのかと思ってしまうよ。ノンケが読んでもおもしろいように(興味本位に堕することなく)描かれている部分も好感が持てる。

あさな君はノンケじゃない! [ あさなさくま ]


青のフラッグ 1 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 2 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 3 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 4 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 5 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]


 某ゲイブログで絶賛されていた青春マンガ。とりあえず現在出版されているところまで読んだ。恋と友情に揺れる高校3年生の4人組を中心に描かれる。この4人組、男子2名(幼馴染のA君、B君)に女子2名(親友同士のCさん、Dさん)なのだが、心優しいけれどもどんくさいCさんは、スポーツ万能のイケメンB君が好きで、それを知った地味目のA君はCさんの恋を手伝うことになる(やがてA君はCさんに惹かれていく)。でも、B君が好きなのはどうやらA君で(作中では決定的には明らかにはされていないが強くほのめかされている)、A君もCさんもそのことを知らない。そしてCさんの親友Dさんは実はCさんが好きなのだ。B君とDさんはお互いにこのことを知っている。やがてCさんはB君への思いは単なる憧れであることに気づき、A君を好きなっている自分に気づき……。文章にすると分かりにくい関係だなぁ。

 異性間の友情は成り立つか?というのはどうやらノンケ世界では永遠の話題であるようだ。ゲイのラフとしては当然成り立つのであるが。じゃノンケに惚れたゲイが恋をあきらめようとして友情を続けることはできるのか?仲良くしたい、あるいは思いを寄せる相手との関係に、好意を持っているがゆえに思い煩う青春の甘酸っぱさ。今後の展開が楽しみだ。
青のフラッグ 1 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 2 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 3 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 4 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]
青のフラッグ 5 (ジャンプコミックス) [ KAITO ]


Love, サイモン 17歳の告白【Blu-ray】 [ ニック・ロビンソン ]


アメリカでは高評価だったにも関わらず、日本では公開されなかった映画。すごく好感の持てるさわやか青春映画なのに、なんで日本では公開されなかったんだろう。

ゲイであることを隠して生きる普通の高校生が、同じ高校にいるらしい隠れゲイとメールで親しくなっていくものの……。友達や家族との関係、カミングアウトとアウティング、いろんな問題を抱えつつも自分自身が生きていくための力を自分でつかんでいく様に希望が持てる。とりわけ、アイデンティティを模索する中「ゲイのファッション」をネットで検索していろいろ試してみるんだけれども、結局はいつもの自分通りの服装を選ぶシーンがよかった。まぁラストで、やっぱりイケメンはイケメンと出会うのねっていうところがおとぎ話的ハッピーエンドではあるけれども、前向きになれる青春映画。

Love, サイモン 17歳の告白【Blu-ray】 [ ニック・ロビンソン ]


「やがて君になる」
先だってのクールでとても評判が良かったアニメ(原作も評価が高いらしい)。自分自身が何者か、人を好きになるとはどういうことかという青春ものとして至極真っ当なものではあるんだけれども、なのになんだか、同性を好きになるってことをバカにされているような描き方な気がするのはなんで?このザラザラした違和感は何だろう。若干の気持ち悪さと腹立たしさを感じる。ゲイに惚れられるおそらくノンケが主人公ということでは、去年大流行したドラマ「おっさんずラブ」が素直に受け入れられたのに、こっちは受け入れられないのはなぜだろうか?ちょっと考えてみたい。


上に何度も「普通」と書きながら、「普通」ってなんだよと、自分自身に突っ込み続けたラフは、今年もゲイです(当たり前だ)。今年もよろしく。

読了:日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]



 東京に戻ってくる新幹線の中で読んだ一冊。前から読みたいと思っていたんだけれども、確かに面白かった。もともとは理系向けの専門雑誌に掲載されていた記事。日本人の書く英語論文の添削をしてきた著者の経験から、日本人の奇妙な英語がなぜ生まれるのか、ネイティブはどういう発想をしているのかについて具体的な例文(これがまたもとの掲載が掲載だけに論文系の堅い例文)をあげながら解説される。主に冠詞や前置詞、副詞などの細かい語のレベルの話が本書の大半を占めているが、語の選択を誤ると論の展開もおかしくなる点は納得。でもまぁ、新書なので、これを読んだから自然な英文が書けるようになる指南書とかは期待できない。こういうことがあるよ、こういうところに気を付けるといいんだよというエッセイ程度で読むのが吉か。著者も言うように、自然な英語に習熟するには「読んで、読んで、読んで」「書いて、書いて、書いて」いくしかないのだ。今年はちゃんと英語勉強しようかな(抱負として宣言できないところが弱い)。

日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]

家族と過ごす大みそかと元旦

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

大みそかの夕方に実家に帰り、正月の午後に東京に戻る。年末年始に帰省したのって何年振り?

まずは、大みそかの話から。

帰省したら、弟一家と兄も帰っていた。弟一家は晩御飯後に帰っていくというので、姪に一日早くお年玉をあげた。姪にお年玉をあげたのは初めてだ。小学校5年生になってはじめてお年玉をあげるというのは、おじさんとしてダメだったのか?自分には子供がいないし、兄にもいない。弟の子供はこの姪のみなので、もし自分が死んだ場合、自分の遺産は(あったとして)法的にはこの姪にいくことになる。別に嫌だとか言うわけではない。ただ、母方の祖母(義母)が亡くなったとき、うちのおかんが遺産相続でえらい面倒くさいことに巻き込まれて消耗したことがあったため、おかんからその旨(法的には姪に相続権がある)を強く言い含められた。父はすでに終活をはじめていて、遺書や遺言書(私的なものと法的なものを用意している)が用意されていた(中身は見ていない)。ネットの様々なサイトの各種アカウント・パスワードも一覧にまとめてあったのだが、紙に印刷されてパソコンの隣に堂々と張り出されてあったのには笑った。いざというときには役立つ必要情報ではあるが……。家にいるのは、おかんとおとんのみとはいえ、公開パスワード状態だよ。

紅白歌合戦を見ながら、みんなで鍋をつついていたんだけれども、兄が「そもそも今時、男女に分かれてチームを組むって時代に即してない。それに『合戦』って(失笑)」とかいうことを言っていた。そしたら、番組内でおげんさんも「男女チーム」に異論を述べていて、あぁもうそういう時代になったんだなぁと思ったりもした。一方で、男性チアを見た姪が「(ああいうの)気持ち悪い」と言ったことをラフは聞き逃していないぞ。もちろん姪が悪いと言いたいわけではないし、その親(弟夫婦)を非難するわけでもない。おそらく弟夫婦は明示的には多様性を否定する立場にないことを感じているし。ダイバーシティがどうのこうのという時代になってきたとはいえ、普通に(普通ってなんだ?)小学生までやってきた子にとっては、そういう考え方(チアは女性のものであり、男性チアは男らしくなくて気持ち悪いと思うこと)をいつの間にか刷り込まれているんだなと思った次第。

で、明けて正月。年が明けて初めて見る夢を初夢という。通常は、1月1日に寝て、よく朝起きた時に認識している夢のことらしいので、1月2日の夢のことを指す。でも、まぁ元旦に見た夢だって初夢だよね。で、昨晩そういうことがあったこともあって、初夢は、母親に自分(ラフ)がゲイであることをどうしても受け入れてもらえないというものだった。当然うなされて起きる。寝覚め最悪な年明け。ラフは両親にはすでにカミングアウトしているが、しただけで、その後のフォローはうまくできていない。結局両親にとっても、自分にとってもなんだかわだかまりが残ったままのカミングアウトだったのだよ。ラフがカミングアウト積極論には加担できないのはそういうこともある。カミングアウトはえらいわけでもしたほうがいいものとは限らない。元旦から面倒くさくてやっかいで心が重くなる目覚めだったよ。リビングからは、朝っぱらからおかんがテレビで上沼恵美子のトークを大音量で見ながら「あははは」と大笑いしているのが聞こえてきた中で……。