読了:言語学バーリ・トゥード Round 1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか[川添 愛]

ラッシャー木村の「こんばんは」に,なぜファンはズッコケたのか.ユーミンの名曲を,なぜ「恋人はサンタクロース」と勘違いしてしまうのか.日常にある言語学の話題を,ユーモアあふれる巧みな文章で綴る.著者の新たな境地,抱腹絶倒必至!

ここ最近なりをひそめているけれども、ラフは読みようによっては言葉ケーサツみたいなことを垂れ流していたりすることがあるのだよ。でも、これを読んで「あぁ俺のやっていることってばなんて恥ずかしい……」と思うことしきり。

東京大学出版会の広報誌「UP」(University Pressの略でユーピーと読むらしい)に連載している川添愛氏の「言語学バーリ・トゥード」をまとめたもの(+書き下ろし)。「言語学」とあるが、日常シーンに登場する言葉のおもしろさや、なぜそう感じるのかを学術テイストで考察していくエッセイ。堅苦しくないユーモアあふれる読み物で手を付けたら止まらない。おもしろいけれども、こういう文章を書くっていうのは相当な知的バックボーンを持っていないとムリだよなぁ、と思ったり思わなかったり。また随所に著者のプロレス愛があふれていてほほえましい。「バーリ・トゥード」の意味もおもしろいいきさつで説明されているので、気になった方はぜひ読んでみて。

言語学バーリ・トゥード[川添 愛]
言語学バーリ・トゥード(言語学バーリ・トゥード)[川添愛]【電子書籍】

映画鑑賞「ウエスト・サイド・ストーリー」

久々の映画館!!スピルバーグの初ミュージカル映画「ウエスト・サイト・ストーリー」を観てきました。

1961年のオリジナル「ウエスト・サイド物語」がアカデミー賞10部門受賞というバケモンなんですが、それのリメイクというより、もはや「スピルバーグの映画」になっています。オリジナルは冒頭部分がマンハッタン島への俯瞰から始まる以外は物理的な縦方向への広がりがあまりないのだけれども、スピルバーグの映画は縦方向への描写がふんだんに使われたカメラワーク(すごい!!)。より豊かな色彩と光を加え、作中の場面のリアルを追求しつつも、今作るからには何を訴えるかもきちんと含まれたとても現代的なものでもある。それでいてオリジナルへの想いも損なっていない(これに激怒するオリジナルファンがいようか?)。

ストーリーとしてはたった二日間の話ですよ。1日目の晩にマリアとトニーが一目ぼれし、2日目の晩にはトニーが死んじゃって終わる。後半は2日目の晩の悲劇が描かれるんだけれども、ナンバーは比較的穏やかなものが多いため(例外は「I Feel Pretty」くらいか)、ミュージカルとしての見どころはやはり前半。「Mambo」や「America」はエクセレント。

2021年版「America」

1961年版と2021年版「America」比較

1961年版ではアニータ役だったリタ・モレノ(オスカー助演女優賞受賞)が、2021年版でもキーパーソンを演じていて歌も披露してくれているのもうれしい。オリジナル版は若干救いのない終わり方だったけれども、スピルバーグ版は、悲劇ではあったけれどもそれでも夜は明けるし(エンドロールは3日目の朝以降)、こんなことをいつまでも繰り返してはならないという将来への希望的なものが垣間見える。

個人的にスピルバーグ版よりも1961年のオリジナルの方が断然よかったなと思ったのは「Cool」。オリジナルの方がずっとcool。

1961年版「Cool」