去年は米原万里没後10年でフェアをしていたんだけれども、著作が電子化されていたので、再読。ほぼ完全に内容を覚えていなかったので、初見のように面白く再読できた。自分の記憶力のなさにもびっくり。とりあえずまずは3冊読んでみた。
■「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」
冷戦中の「ソビエト学校」の同級生だった3人の友達を、ソ連崩壊後に探し尋ねる3つのエピソード。どの話も構成がうまくて見事。とりわけ、タイトルにもなっているアーニャのエピソードが深く考えさせられておもしろい。タイトルに含まれる「真っ赤」はドップリ浸かった「共産主義思想」のことでもあり、建前でしか生きていけない、建前であることさえわからなくなってしまう人生に対する作者の思いの複雑さは考えさせられる。
■「魔女の1ダース─正義と常識に冷や水を浴びせる13章」
祖国、郷土、言語を愛するとはどういうことなのか。さまざまな立場の人と自己を相対化することによって見出すことのできる価値の重要性。「チン・ボコ」を連呼するエピソードや「ヤキマンコ通り」のエピソードが自分の中でずっと引っかかっていたんだけれども、この本で読んだのか。
■「不実な美女か貞淑な醜女か」
「通訳」とはどんなものかをこんなにおもしろくわかりやすく、しかも具体的な例を引いて表したものが他にあろうか。とりわけ失敗談はやっぱりおもしろい。最近やたらAIが騒がれているけれども、自動通訳(翻訳)はまだまだ当分無理だろうな。
こちらの記事もぜひ!!
- 読了:異常【アノマリー】[エルヴェ・ル・テリエ/加藤 かおり] (2023年1月27日)
- 読了:夢の本(河出文庫)[ホルヘ・ルイス・ボルヘス/堀内 研二] (2019年8月23日)
- 読了:科挙 中国の試験地獄 (中公新書) [ 宮崎市定 ] (2019年3月16日)
- 読了:教養としての「ローマ史」の読み方 [ 本村凌二 ] (2018年6月20日)
- 米原万里を再読中その2 (2017年3月17日)