読了:神は、脳がつくった[E.フラー・トリー/寺町 朋子]

神は、脳がつくった

神は、脳がつくった

  • 作者:E.フラー・トリー/寺町 朋子
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018年09月28日頃

「神(宗教)はいつ、なぜ、どのようにして生まれたのか?」という問いに対し、精神医学の世界的権威の著者E.フラー・トリーが人類史や脳科学、考古学の実証的証拠を組み合わせて迫る衝撃の一大スペクタクル。頭蓋骨の化石、人工遺物、ヒトや霊長類の脳の解剖や脳画像、子どもの成長などから明らかになる神の起源。

 神(神々)というものを信仰できる生物は、進化上ホモ・サピエンスだけらしい。これを人属の脳の進化理論から考察する。人属は進化の歩みとともに「自己認識」、「他者認識」、「内省」、「自伝的記憶」と獲得していくが、「自伝的記憶」を獲得したのはようやくホモ・サピエンスになってからである。そしてこの「自伝的記憶」によってはじめて「神」を想像することが可能になった。そこに至るまでは相当の時間がかかっている(そして本書のほとんどはこの説明に充てられている。「神」が登場するのは本当に終わりの方)。

 他者を埋葬するという宗教「的」儀式は旧人類にも見られるものであるが、本書ではこれはまだ「神」という存在を信じているかどうかとは別とする。なぜなら「他者の死を悲しむことは、自分がいずれ死ぬことを理解していることと同じではない」からである。将来自分も死ぬという理解はホモ・サピエンス特有らしい。ホモ・サピエンスは時間を超越する自己を想定できることで、将来的な自身の死と、過去の亡くなった祖先たちと結びつけてエピソードとして捉えることができるようになった。そしてそれを仲間と共有し、亡くなった祖先たちの中でも特別な地位を与えられたものが、やがて神へと変わっていったようだ。

神は、脳がつくった[E.フラー・トリー/寺町 朋子]
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