
生存報告会 〜 ハムチャーハンと酢の物



推理小説好きの文学少女・陸秋槎と、孤高の天才数学少女・韓采芦の2人の謎解きを描く連作短篇、全4篇を収録! 解説:麻耶雄嵩
連続体仮説/フェルマー最後の事件/不動点定理/グランディ級数
現代中国青春メタ的形式の推理小説。「文学少女『対』数学少女」というタイトルだけれども、日本語的には「文学少女『と』数学少女」でしょう。高校生の文学少女「陸秋槎」(作者と同名の主人公)と変わり者の数学好き少女「韓采芦」との、青春連作短編。4つの短編があるんだけれども、それぞれの話に現実のミステリーと劇中ミステリーがあって、そこに数学の話題や歴史を絡めた推理小説理論が展開される。ミステリーそのものよりも、その理論を数学的に説明してアプローチする実験的な要素の強い読み物。「読者への挑戦」系が中心で、はっきりとした結果をあえて書かなかったりするものもある。
■ 文学少女対数学少女(ハヤカワ・ミステリ文庫)[陸 秋槎/稲村 文吾]
■ 文学少女対数学少女[陸 秋槎]【電子書籍】


日本の3つの「ダリ展」、大英博物館の収蔵品、琉球王家の遺骨、表現の不自由展、重要文化財准胝観音立像・・・。
アートの世界の内幕と真実とは?
16の法廷ドラマと15のコラムから美術館・博物館の舞台裏を明らかにする。
日本では、美術館と博物館は別物とされているが、英語ではどちらも「ミュージアム」で、実は両者の間に違いはない。強いて区別すれば、美術品を多く収蔵・展示しているのが美術館、それ以外の歴史資料、自然資料等を収蔵・展示する施設が博物館ということになるが、東京、京都、奈良の国立博物館は美術品・工芸品を中心に扱っているし、古文書や化石などを集めている美術館もある。
本書は、日本と世界の美術館・博物館がその活動や収蔵品、借入品等に関連して巻き込まれた様々な裁判や事件を紹介している。外見は取り澄ましてみえるこれらの施設の舞台裏では何が起きているのか? どんな問題を抱えどう対処しているのだろうか?
【登場する主なミュージアム】
● サルバドール・ダリ劇場美術館、● シカゴ美術館、● スミソニアン国立自然史博物館、● ソロモン・グッゲンハイム美術館、● 大英博物館、● デトロイト美術館、● ニューヨーク近代美術館、● バークシャー美術館、● ハンタリアン美術館、● ピナコテーク・デア・モデルネ、● ペギー・グッゲンハイム美術館、● ポンピドゥーセンター国立近代美術館、● マンチェスター博物館、● ミュージアム・オブ・アーバン・アンド・コンテンポラリー・アート(MUCA)、● レオポルド美術館、● ロンドン自然史博物館、● ワシントン・ナショナル・ギャラリー、● 熱海山口美術館、● 岩手県立美術館、● 京都大学総合博物館、● 高知県立美術館、● 国立アイヌ民族博物館、● 大丸ミュージアム、● チームラボプラネッツ、● 富山県立近代美術館、● 名古屋市美術館、● 奈良国立博物館、● 横須賀美術館
1 美術館・博物館の舞台裏(展覧会のため貸出し中に損壊した現代美術家フランク・ステラの作品/展覧会のために借り受けた名画の返却を禁じられた美術館 ほか)/2 美術館・博物館が直面する倫理的要請とのジレンマ(ユダヤ人銀行家が所蔵していた5枚のピカソ絵画の行方/大英博物館の収蔵品はホロコースト被害者の遺族に返却できるのか? ほか)/3 美術館・博物館の現代的課題(博物館が処分を決めたアメリカの人気画家ノーマン・ロックウェルの傑作/美術館がアーティストから購入した作品を公開しないのは表現の自由の侵害か ほか)/4 文化財の購入、変更、処分の規制(イタリアで重要文化財に指定されたヴァン・ゴッホ作品「庭師」の買主は?/奈良の新薬師寺が所蔵する重要文化財、准胝観音立像の売却 ほか)
著者は、国際法やアート関連を専門とする弁護士。裁判沙汰になった美術や文化財のエピソードを実際の裁判の行方とその影響を考察した読み物。なるほどね、なんとなくはそういう権利があるんだろうなぁと思っていたことも、実際に裁判ではこうやって争点化されるんだ。耳にしたことのある事件もあった。裁判が今後どういう影響を及ぼすのかまで法曹の立場から述べられているのはおもしろい。
ノーマン・ロックウェルの「シャッフルトンのバーバーショップ」って今はジョージ・ルーカスが所有してるんだって。争われた作品のその後についても興味深い。
過酷な冬を越すために人間が冬眠する世界での物語。
ふとした偶然からチャーリーは冬季取締官に志願する。
冬季取締官は眠らずに盗賊(ヴィラン)や冬の魔物(ウィンターフォルク)に対処する過酷な仕事だ。
無事取締官になったチャーリーは、冬眠に失敗しナイトウォーカーになった女性を別の地区まで送り届けることに。
ナイトウォーカーは普段はおとなしいが、
空腹になるとひとを襲うちょっぴり危険な存在だ。
途中で思わぬ事件に巻き込まれながらも、ようやく〈セクター12〉にたどり着いたチャーリーは、
夢の中の夏の楽園(サマートピア)で、美しいベルギッタと出逢うことになるのだった。
二度と還らぬあの夏の砂浜で。
なんだかふわっとした、まさに夢の中のようなファンタジー。舞台は過酷な冬の世界なんだけれども、複雑な人間関係や陰謀論、睡眠や夢にまつわる謎や推理、伝説といったものがてんこ盛り。それなのになんだかのほほ~んとした優しい感じのジュブナイル的な読み物。緊迫したシーンもあることはあって面白くはあるけれども、さらっと流される書きっぷりのためかドラマチックさは今一つ。主人公も何となくの常識的な正義感に従っているって感じで、確固たる意志で生きているという雰囲気ではない。上巻はとにかく世界観と登場人物を把握するためで若干退屈。下巻も後半になってようやく何が問題なのかが分かってくる。そんでもってバンバン身近な死人が出てたのに、おとぎ話的なハッピーエンド。
■ 雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】(雪降る夏空にきみと眠る 【上下合本版】)[ジャスパー・フォード]【電子書籍】

イギリス人作家ジェイムズ・ヒルトンの名作「Goodbye Mr. Chips」の全訳・新訳です。
イギリスのパブリック・スクールであるブルックフィールド校に長年勤めてから退職したチップスは、学校近くのウィケット夫人の家に間借りして、今でもブルックフィールド校とのつながりを保っています。そんな老齢のチップスが、様々な出来事を温かい眼差しで思い出しながら人生の晩年を過ごす様子を描いた傑作です。
縦書き、ルビ付き、豊富な脚注付き。
H.M.ブロックによるモノクロ挿し絵を22点収録。
これまでに2度映画化されている原作。19世紀後半から20世紀にかけての激動のイギリスを舞台にした、生真面目だけれどもちょっと風変わりなチップス先生が回想する教師生活と引退生活。奥さんと子どもの死や空襲の中の授業など劇的なシーンもあるものの、基本は淡々と出来事が語られる。しみじみと読める。