読了:いわゆる天使の文化祭(創元推理文庫)[似鳥鶏]

夏休みも終わりに近づいた文化祭目前のある日、準備に熱の入る生徒たちが登校すると、目つきの悪いピンクのペンギンとも天使ともつかないイラストが描かれた貼り紙が目に飛び込んできた。別館中に貼られた、部活にちなんだ様々な怡好の“天使”を不思議に思いつつも、手の込んだ悪戯かと気を抜いているとー。波瀾万丈で事件に満ちた、コミカルな学園ミステリ・シリーズ第四弾。

今回は、あっと驚くミスリーディングが3回用意されているんだけれども、いかんせん鮮やかと言い切れないところが残念極まりない。このシリーズの主人公は葉山君という男子高校生だったはずなのに、なぜか奏とかいうぽっと出の今一つ特徴のないおなごがもう一人の主役を務めている。ん~、葉山君には柳瀬さんという頼もしい変態女性先輩がいるんだから、彼女をもっと活用しようよとか思いながら読み進めるわけですよ。そして文化部の人たちと比較的仲良くなるはずの美術部員葉山君なのに、なぜかこの吹奏楽部員の奏さんとはどこか関係が薄いのよ。なんでかなぁ、と思ったら中盤にまず、これまでずっと1つの事件だと思っていた出来事が実は2つの場所で起こっていたことだという衝撃。葉山君と奏さんは違う高校の生徒だったのだ!!さらにもうしばらく進むと、今度はこの2つの場所で起きた事件が1年の時間を隔てていることも判明。そして最後には、ずっと男の子だと思い込んでいたある人物が女だったとか。こうもやすやすと作者に乗せられたのは悔しいけれども、じゃ鮮やかに気持ちよく騙されたかというとそうじゃない。ラストで怒涛の如く畳みかけるようにひっくり返されたら「やられっちまったなぁ」と思ったんだろうけれども、後半に間をおいて少しずつひっくり返していくから間延びすることこの上なし(素人のオセロゲームか)。しかも肝心な事件の素となった人物にまったくフォーカスされてこないし(ラストにほんの一瞬姿を見かけるだけ)。テーマがボケボケで詰めが甘い、甘すぎる。名探偵伊神さんもたいして活躍しないし(もはやいてるだけ。この人の常識のなさが面白かったのに)。コメディの切れも今一つだし、そろそろシリーズの限界か。

いわゆる天使の文化祭(創元推理文庫)[似鳥鶏]
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