「インドで失踪する人はたくさんいます。インドはそのためにあるような国です。」
不眠の物語でありかつ旅行の物語。失踪した友人を探しにインドにやって来たイタリア人の「僕」が体験した、におい立つ夜のインドで出会う人々との交流が幻想的に描かれる。これがとても美しいのだ。具体的な場面描写というよりも、そこに漂う雰囲気、ひいては文体の美しさというか。そういう点では日本語訳も優れているんだと思う。最後2つの夜でこの小説がメタ小説の一種であることがわかるものの、枠外と枠内の物語も混沌として交じり合う様がこれまたインドの夜にふさわしい。「訳者あとがき」にあるように、とにかく「だまされたと思って、読んでよ。」
メモ:「ナイチンゲール」の和名は「小夜啼鳥」
■ インド夜想曲(白水Uブックス)[アントーニョ・タブッキ/須賀敦子]
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