読了:象られた力(ハヤカワ文庫)[飛浩隆]

象られた力

象られた力

  • 作者:飛浩隆
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2004年09月

惑星“百合洋”が謎の消失を遂げてから1年、近傍の惑星“シジック”のイコノグラファー、クドウ円は、百合洋の言語体系に秘められた“見えない図形”の解明を依頼される。だがそれは、世界認識を介した恐るべき災厄の先触れにすぎなかった…異星社会を舞台に“かたち”と“ちから”の相克を描いた表題作、双子の天才ピアニストをめぐる生と死の二重奏の物語「デュオ」ほか、初期中篇の完全改稿版全4篇を収めた傑作集。

デュオ/呪界のほとり/夜と泥の/象られた力

最初の1篇はサイコスリラーかサイコホラーって感じの作品だけれども、続く3篇はSF。構成力や発想は表題作「象られた力」がうまいこと作りやがったなぁと思う。しかし、読むべきは3番目の「夜と泥の」である。人類が入植したある惑星の夏至の晩にのみ、ロボット、ナノマシーン、もともとの沼の生物群、そして遺伝子工学で一夜の命を与えられた少女の混沌とした戦いが繰り広げられる。その様の描写がすばらしいのだ。吟味された言葉の選択と洗練された美しい描写力はまさに息をのむほど。文字だけなのにその情景に圧倒されたよ。

象られた力(ハヤカワ文庫)[飛浩隆]
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