君主たちは競って宮廷に招き、司教たちは恐れ、医師たちは憎み、女たちは憧れた「最後の魔術師」カリオストロ伯爵ー。シチリア島のごろつきだった男は、いかにして王侯貴族を手玉にとり、フランス革命前夜のヨーロッパ社交界にその名を轟かせるにいたったのか。錬金術師、医師、預言者、詐欺師、フリーメイソン会員といくつもの顔を使い分け、“理性と啓蒙の時代”の18世紀を妖しく彩った男の生涯を追う。
プロローグ バルサモの家/1 フリーメイソン/2 降霊術師/3 シャーマン/4 コプト/5 預言者/6 回春剤/7 異端/エピローグ 不死
「カリオストロ」という響きには、異様なうさんくささがまとわりつく。その正体は何なのか?フランス革命前夜のマリー・アントワネットをまきこんだ「ダイヤの首飾り事件」に関わっていたらしいということは知っているが、本流の世界史ではとりたてて学習する人物ではない。むしろゴシップ扱いの雑学的エピソードで取り上げられる人物だ。
そんなカリオストロ伯爵を名乗った男の人生をたどる本書。18世紀のフランス革命を頂点とした歴史的背景、ヨーロッパ各国を舞台に活躍した生涯。カリオストロ伯爵は、この時代のヨーロッパだからこそ産まれた怪人物なのである。そして死後、いかにして「カリオストロ」は芸術のテーマとしてもてはやされ、今日的キャラクターが形成されていったのかが考察される。
18世紀末、同じくヨーロッパをまたにかけた一世代上のカサノヴァが激動の時代に取り残されていくのと対照的に、あっという間に時代の波に乗ったカリオストロの対比論考が興味深い。そして何よりもやはり「ダイヤの首飾り事件」の運びがおもしろい。
■ 文庫 最後の錬金術師 カリオストロ伯爵(草思社文庫)[イアン・マカルマン/藤田 真利子]
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