以前からいつか読まなければと思っていたジャレド・ダイアモンド著の「銃・病原菌・鉄」。ピュリツァー賞受賞の現生人類の進化と文明史。「銃」「病原菌」「鉄」そのものをテーマにした作品ではなく、人類が他地域への侵攻をする際に重要となったものを象徴的に挙げてタイトルにしているに過ぎない。
人類の他地域への侵攻が成功したかしなかったかは、成功したほうの人類が優れているからだという思い込みを否定している。主な要因は地理的あるいは時間的なものであるとする。説明するさいに疑問として提案するものが、天然痘は旧世界から新世界へ広がったが逆じゃないのはなぜ?ユーラシア大陸では馬を家畜化したのにアフリカ大陸ではシマウマを家畜化しなかったのはなぜ?という感じで、「なるほどなぁ、そういう見方で考えれば確かにおもしろい」と思うものばかり。
ただし解説がとにかく懇切丁寧すぎて、今読んでいる話題が全体の流れの中のどの部分なのかを見失うことしばしば(その章の中でさえも)。これは自分の読解力が拙いだけなのかもしれないが、とにかく読みきるのに数ヶ月もかかってしまったよ。さくさくと読み進められなかったのはちょっとつらかった。そうはいっても、じゃ余計な論点やつまらない記述であふれているのかというとそういうわけではなく、どの部分もそのものの話題は面白くてそれゆえに、今どんな文脈でその話しているんだっけ?ということがわからなくなる感じ。
日本語訳にちょっと引っかかる部分がいくつか(個人的思い込みによる部分はあるかも)。例を挙げると
・「アンナ・カレーニナの原則」:自然システムの例としてたとえるのであるから「法則」の方が適切では?
・「自然淘汰」:学術書でもあるわけだから学術用語としての「自然選択」を使うほうがよいのでは?そのほうがより文脈にも則するし。
・「ユーラシア大陸にくらべて、アフリカ大陸、南北アメリカ大陸、そしてオーストラリア大陸では動物の家畜化が進まなかった。その理由は、~」という文を読めば、当然以下に動物の家畜化が進まなかった理由が書いてあると思いながら読むよね?でも実はそうじゃないんだよ、この文は。そのあと4,5行後にようやく文末がくるんだけれども、そこには「~からなのだろうか。」とあるんだよ。疑問文だよ、疑問文。衝撃の文末だよ。激しく脱力だよ。ヘナヘナってなったよ。おそらく英語の構文的には文頭で判断できるのだろうが、これは日本語訳に失敗しているよな。再度この4、5行を読み直す気力はなく、トホホな気分でトボトボと先に進んだよ。こういう点でも読みにくさを感じた。
■ 文庫 銃・病原菌・鉄 上 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) [ ジャレド・ダイアモンド ]
■ 文庫 銃・病原菌・鉄 下 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) [ ジャレド・ダイアモンド ]
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