「はじめに」にあるように本当に「つまみ読み」(著者自身は「つまみ飲み」と表す)以上のものではない。居酒屋に関する文献の断片紹介。著者の専門がドイツ史であるためか、主にヨーロッパ社会を居酒屋というものを通して覗いてみるという意図があるのであろうが、いかんせん内容が薄い。居酒屋を「金銭の見返りに酒類を提供する営業空間」と定義し、論展開のキーワードとして「農村への貨幣経済の浸透」「居酒屋の多機能性」「棲み分け」をあげる。ここにおいて狭義の「居酒屋」というものを定義したのに、本文中では一般的な広義の「居酒屋」とごっちゃに扱っている点はいただけない。たとえば、ヨーロッパ中近世を居酒屋の最盛期、ヨーロッパ近現代を居酒屋の衰退期と題しておきながら、19世紀フランスの居酒屋(広義)の軒数が多いことで「居酒屋天国」と表すなど。一文が短いので勢いよくポンポン読めるので居酒屋の歴史概要を知るにはいいかも。雑学書というべきで学術書的な内容を期待すると期待外れ。
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