■ソナタ形式(1つの曲における楽曲構成形式)
ソナタ形式は三部形式の一形態で、形式を重んじる古典派の時代において確立した。基本は「主題提示部」「展開部」「主題再現部」の三部から構成される。さらに細かく見ると「主題提示部」には第1主題と第2主題が含まれ、2つの主題は主題再現部で再度登場する。調性については第1主題は主調(その曲のメインとなる調)で、第2主題は属調(主調の完全5度上の調、主調がハ長調であれば属調はト長調)が原則。「主題再現部」では第1主題は提示部と同じく主調で、第2主題も主調。
・主題提示部(第1主題(主調)、第2主題(属調))
・展開部
・主題再現部(第1主題(主調)、第2主題(主調))
ただし、これは原則であって、必ずしもこれに従うもののみがソナタ形式というわけではない。主題提示部の第2主題が下属調(完全5度下の調。ハ長調に対してはヘ長調)などの属調以外の近親調(場合によっては遠隔調もあり)が選ばれる場合もある、主題再現部も主調とは異なった調ではじる場合もある。さらに始まる前に序奏がついたり、最後にコーダ(エンディング)が追加されたりもする。
■ソナタ(ソナタ形式の楽章を含む複数楽章からなる器楽曲に与えられる代表的な命名)
さて、器楽曲の形式の一つに「ソナタ」というものがある(漢字だと「奏鳴曲」。かつて流行った韓流ドラマ「冬のソナタ」は「冬の奏鳴曲」である。やかましそうな印象に早変わり)。これは通常3ないし4楽章形式で(器楽曲としてのソナタは前者が多い)でその中にソナタ形式の楽章を含むもの(たいがいは第1楽章)に名づける。ただしモーツァルトの有名なピアノソナタ第11番 イ長調 K. 331 (300i)、いわゆる「トルコ行進曲付き」は、ソナタ形式の楽章を含まないのにソナタと名付けられている。(形式ではなく規模的にソナタ程度の複数楽章からなる器楽曲という意図であろうか)
■ wikipediaの「ピアノソナタ第11番 (モーツァルト)」の項
また、複数楽章というのも時代が下って来ると縛りがゆるくなってきて、ベートヴェンのピアノソナタ第32番(最後のピアノソナタ)ではもはや2楽章しかない。
■ wikipediaの「ピアノソナタ第32番 (ベートーヴェン)」の項
スクリャービンはピアノソナタ第4番で間をあけずに連続して演奏される2楽章形式に、第5番以降は単一楽章でソナタを書いている。プロコフィエフなどはピアノソナタ第1番(しかも作品番号も1)からして単一楽章である。
■ wikipediaの「ピアノソナタ第1番 (プロコフィエフ)」の項
ちなみに「ソナチネ」は「小さいソナタ」という意味。「ソナチネ」アルバムとか小学生などがよく習わされる古典派の「ソナチネ」を集めた曲集が有名。ただし「小さい」かどうかという基準は、その作品の規模感や技術的難易度、意図したことなど作曲者がその都度の基準で自由に決めてよい。ラヴェルのソナチネなんかは求められる音楽的表現力も技術的難易度も小学生なんかが弾くには相当むつかしい。
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