読了:シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選(竹書房文庫 て2-1)[シェルドン・テイテルバウム/エマヌエル・ロテム]

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

  • 作者:シェルドン・テイテルバウム/エマヌエル・ロテム
  • 出版社:竹書房
  • 発売日: 2020年09月30日頃

エルサレムを死神が闊歩したり(「エルサレムの死神」)、進化した巨大ネズミに大学生とぽんこつロボットが挑んだり(「シュテルン=ゲルラッハのネズミ」)、テルアビブではUFOが降りてきてロバが話し出すこともある(「ろくでもない秋」)。あなたは、天の光が消えた空を見つめる少年(「星々の狩人」)や悩めるテレパス(「完璧な娘」)とも出逢うだろう。アレキサンドリア図書館(「アレキサンドリアを焼く」)に足を踏み入れ、無慈悲な神によって支配されている世界を覗くだろう(「信心者たち」)。未知なる星々のまばゆいばかりの輝きをあなたは目にする。その光はあなたの心を捉えて放さないはずだー。ロバート・シルヴァーバーグによる序文、編者による「イスラエルSFの歴史」をも含む、知られざるイスラエルSFの世界を一望の中に収める傑作集。

オレンジ畑の香り(ラヴィ・ティドハー)/スロー族(ガイル・ハエヴェン)/アレキサンドリアを焼く(ケレン・ランズマン)/完璧な娘(ガイ・ハソン)/星々の狩人(ナヴァ・セメル)/可能性世界(エヤル・テレル)/鏡(ロテム・バルヒン)/シュテルン=ゲルラッハのネズミ(モルデハイ・サソン)/夜の似合う場所(サヴィヨン・リーブレヒト)/エルサレムの死神(エレナ・ゴメル)/白いカーテン(ペサハ(パヴェル)・エマヌエル)/男の夢(ヤエル・フルマン)/二分早く(グル・ショムロン)/ろくでもない秋(ニタイ・ペレツ)/立ち去らなくては(シモン・アダフ)

これまでも、国別SFアンソロジーを紹介してきた。

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読了:折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー(ハヤカワ文庫SF)[ケン・リュウ/中原 尚哉]

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今回はイスラエル発のSFファンタジーアンソロジー。なんといっても、ユダヤの民はヘブライ語聖書(キリスト教の旧約聖書のオリジナルに相当するもの)という多くの人に知られている、ある意味壮大なるファンタジーをものした民族である。とはいえ、近代のシオニズム運動においては、敬虔なユダヤ教徒からすれば、聖書は唯一の聖典でありそれ以外の創作物語というものは認められてこなかったという背景を持つらしい(このあたりの事情は解説の「イスラエルSFの歴史」に詳しい)。で、本著に取り上げられている作品も多くは今世紀に入ってからの作品ということだ。著者紹介を読むと専門フィクション文筆業の人よりも、兼業作家や芸術家といった感じの人が目立つ。

におい立つ地中海と中東の香りにあふれた話があれば、突拍子もない奇想天外な話もある。冒頭の「オレンジ畑の香り」が幻想的な話で引き込まれた。また「アレキサンドリアを焼く」と「立ち去らなくては」の2編はとりわけ面白かった。

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選(竹書房文庫 て2-1)[シェルドン・テイテルバウム/エマヌエル・ロテム]
シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選(シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選)[中村融/安野玲/市田泉]【電子書籍】

銀のコロッケ

近所のコーヒーショップで読書。ここはいつも冷房が効き過ぎで寒い。「冷やしラフ始めました」

読んでたSF小説の一節も「首から下げた平たい卵形の銀のコロッケを握りしめる。」と寒さにやられた脳は誤読してしまい「ふーん、銀色のコロッケかぁ、アバンギャルドな表現だなぁ」とか思ってしまったり。もちろん「ロケット」の誤読だけれども、それくらい寒い店内だったというお話。