パート1 死を招く生体分子(インスリンとバーロウ夫人のバスタブ/アトロピンとアレクサンドラのトニック/ストリキニーネとランベスの毒殺魔/トリカブトとシン夫人のカレー/リシンとゲオルギー暗殺事件 ほか)/パート2 土壌由来の死の分子(カリウムと悪夢の看護師/ポロニウムとサーシャの無差別な腸/ヒ素とムッシュー・ランジェリエのココア/塩素とラフキンの殺人看護師)/結び 死神の庭園
序で毒とは何か、毒殺の方法などの概論を軽く述べ、そのあとに続くのは毒物に関する各論。第1部は生体分子の毒、インスリン、アトロピン、ストリキニーネ、トリカブト、リシン、ジゴキシン、シアン化合物を。第2部は土壌由来の毒、カリウム、ポロニウム、ヒ素、塩素を。これらの物質に関する歴史的背景、生体への作用機序、その毒を用いた主要な毒殺事件および裁判等のあらましなどが述べられる。おそらくこれは生理化学教授である著者の大学講義ネタ帳を一般読者向けにまとめたものなんじゃないかなぁ。とにかく面白いのだ。こんな授業だったら喜んで聴講する。生体への作用機序の解説が秀逸で分かりやすい。
昔から使われてきた定番の毒物はもちろん、東欧やロシアが関与したと思われる最近の毒殺事件は未解明な部分が多いにしてもスケールのデカさというかやっていることが大げさすぎて荒唐無稽なバカバカしさまで感じてしまうようなところがかえっておそろしい。とはいえ、著者も言うように物質はあくまでも物質であり、結局はそれをどのように用いるか使う人によるという点は重要。量により毒にも薬にもなるものが多く、それらの物質によって解明された生体の仕組み、そしてその作用機序による医療や薬学への応用も多いのだ。
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