横浜市郊外のごくふつうの家庭で育ち女子大に進学した神立美咲。渋谷区広尾の申し分のない環境で育ち、東京大学理科1類に進学した竹内つばさ。ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。渦巻く人々の妬み、劣等感、格差意識。そして事件は起こった…。これは彼女と彼らの、そして私たちの物語である。
4,5月の新学期シーズンになると渋谷に東大の学生証をちらつかせてナンパをする輩が現れる──という都市伝説的笑い話が、かつてあった。
本作品は男子東大生による女子大生に対する集団わいせつ事件に着想を得たフィクション。直木賞作家でもある著者としては問題提起も込めて発表したと思うのだが、一部で激しい議論を呼んだ。東大ではこの作品について著者を招いてのシンポジウムまで開かれるという問題作になった。当時のシンポジウムの様子を記事で読むと、多くの東大関係者には作品中の東大生の描き方にリアリティがないと感じられたようだ(かなり否定的な意見が多かったようだ)。一方で著者はあくまでもフィクションであり「東大」や「東大生」そのものを貶める意図はないことをおっしゃっていた。むしろこういう風に問題になったことに著者自身が当惑している感じでまとめられていたように思う。
以下いくつか書評を紹介しておく。
■ 東大OGが『彼女は頭が悪いから』を読んで思うこと。私たちも「クソ東大生」と同じ穴の狢かもしれない | DRESS [ドレス]
■ 僕は頭がいいけれど…東大生が抱く「彼女は頭が悪いから」への違和感|好書好日
■ 「彼女は頭が悪いから」読了感想と考察。|Randy|note
■ 女子大生の服を脱がせて叩き……「東大わいせつ事件」に着想を得たエグい本 | 文春オンライン
■ 書評:「彼女は頭が悪いから」 姫野カオルコ・著 : タイム・コンサルタントの日誌から
■ 『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ(書評): trivialities & realities
確かに、実名で登場する他の大学の学生の描き方に比べると、5人の東大生は具体的に描くことで「東大生とはこういうものだ」という十把一絡げ的な扱いだなぁという印象は読んでいても感じた(この著者は何か東大に対してルサンチマンを抱えているのか?と勘繰りたくなるほど)。この作品が議論を呼んだのはそこなんじゃないかな。明らかに東大を指してはいるけれども架空の大学名を使った方が、フィクションとして登場人物のリアリティが増して説得力を持ったんじゃないか?ルポルタージュではないのだから、人間性を描く小説においてこれは失敗だと思う。しかし著者としては「東大」というブランドというか記号(実際に作品中でもあえて「『todai』の音」と書いていたりする)が持つ威力を利用することで作品の説得力が増すと考えた次第だとは思うが。そうはいってもフィクションの力をもっと信用してよかったのでは?それが作家の力量でもあると思う。
読後が非常に不快になる強烈な作品ではあるが、被害者の神立美咲の大学学部長が彼女に寄り添ってくれた点には救いがある。
■ 彼女は頭が悪いから[姫野 カオルコ]
■ 彼女は頭が悪いから[姫野カオルコ]【電子書籍】
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