古典SFを読もう第3弾はハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」(第1弾「夏への扉」もハインライン)。タイトルだけは知っていたけれどもどんな話なのかはこれっぽちも知らない。読んでみなければ。
近未来、流刑の地としての月では、その子孫たちも増えて地球とは異なる都市や文化を形成していたものの、地球政府により搾取されていた。そのことに不満を抱く月世界人たちは地球政府への不満を募らせている。月世界人のコンピュータ技師であるマニュエル(通称マニー)は、月世界をコントロールする中央計算機のメンテナンスに従事していたが、この中央計算機が自我を持っていることに気付き「マイクロフト」(通称マイク)と名付けて交流をはじめる。やがてマニーは少数の仲間とともにマイクを使って月独立を目指す。
マニーが主人公でそれを支えるマイクという感じの月世界独立物語になるかと思いきや、革命から月世界独立まではすべてマニーの古くからの知り合いである教授とマイクによって裏で綿密に計画され進められているのだ。マニーはしばしば事後に知らされるため、事の中心にいるもののよくわからないまま革命や地球との交渉・戦争に翻弄されている印象を受ける。しかしそれさえも教授とマイクによる計画のうちだったのかもしれず、月世界独立後の教授とマイク無き世界に残るマニーに対してあえてそうしていたとも考えられるのだ。これが読後に一抹の寂寥感を覚える要因になっているのかもしれない。
■ 月は無慈悲な夜の女王(ハヤカワ文庫SF)[ロバート・A・ハインライン/矢野 徹]
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