前作デビュー作「理由あって冬に出る」が1月のある事件を描いた長編だったんだけれども、今度の「さよならの次にくる」はそれに続く卒業式と新学期に渡る期間を扱った(一部数年前を扱ったものが含まれるが今回の登場人物を導くため)、前編・後編2冊にわたる連作短編。それぞれの話は独立しつつも関連していて、ラストに至ったときにすべての伏線が回収されているという構成には拍手喝采。話の随所で小出しに回収されていく一部の伏線がダラダラ感をもたらすところや、短編の間に挟まれる断章があからさまに「これは伏線ですよ」と主張しすぎているところが玉に瑕(こういう形式のミステリは加納朋子が今のところ一番かなとラフは思っている)。
愛すべき変人文化部高校生たちの当意即妙なやり取りはやっぱりおもしろい。「えぇ、それは強引だろう」とか「ありえないよぉ」とか思う部分はあるんだけれども、コメディで展開することにより「まぁいいか、さもありなんということにしておこう」と自然と受け入れられる。大人になり切れていないどうしようもない青臭さの一方で、妙にしっかりとしていて大人の世界に片足突っ込んでいるような部分の同居が「青春・思春期」というもので包まれてうまくまとまっている。
新学期には「曲がり角でゴツン」で「恋なんか芽生えちゃったりして」という定番ネタもきちんと織り込んでいる。またところどころに出てくる脚注も枠外からの笑いを誘う。シリーズはまだ続くので楽しみ。
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■ さよならの次にくる(新学期編)(創元推理文庫)[似鳥鶏]
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