第1章 魚の脳は原始的ではなかった/第2章 魚も顔で個体を認識する/第3章 鏡像自己認知研究の歴史/第4章 魚類ではじめて成功した鏡像自己認知実験/第5章 論文発表後の世界の反響/第6章 魚とヒトはいかに自己鏡像を認識するか?/第7章 魚類の鏡像自己認知からの今後の展望
鏡に映った自分を自分だと認識できるのは高度な脳の機能で、ヒトをはじめとした一部の高等生物しかできないと思われてきた。それは進化における脳の発達と機能の分化によるものなので当然だと。ところが、著者らの研究をはじめとして最近の知見では、脊椎動物の脳の構造はそれほど違わないことが分かってきた。
著者の研究室グループが明らかにした、魚にも鏡像自己認知ができるというセンセーショナルな実験結果と科学界の反響のドラマ。まずは仮説の検討、どのような実験で何が示せれば仮説を検証できたと言えるのか。それを論文にまとめ、どの科学雑誌に発表するか、査読とリバイス対応。納得してくれない権威との議論。長年信じられてきた権威学説において検討が漏れていたの何だったのかの考察。これら一連のいきさつが分かりやすく具体的に述べられている。生物学分野における科学的手法とはどういうものかを知る意味でもおもしろいかと。
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