読了:孟嘗君 全5冊合本版(孟嘗君)[宮城谷昌光]【電子書籍】

孟嘗君(1)

孟嘗君(1)

  • 作者:宮城谷 昌光
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 1998年09月

斉の君主の子・田嬰(でんえい)の美妾・青欄(せいらん)は、健やかな男児・田文(でんぶん)を出産した。しかし、5月5日生まれは不吉、殺すようにと田嬰は命じる。必死の母・青欄が秘かに逃がした赤子は、奇しき縁で好漢風洪(ふうこう)に育てられる。血風吹きすさぶ戦国時代、人として見事に生きた田文こと孟嘗君とその養父の、颯爽たる人生の幕開け。宮城谷昌光の大作『孟嘗君』全5冊を、ひとつにまとめてお届けします。

孟嘗君といえば漢文で習う、食客が鶏の声の真似をし函谷関を抜けて秦国から脱出するエピソードが有名だよね。正直言って孟嘗君といえばその話しか知らないんだけれども、これは新聞小説として掲載されていた孟嘗君の生涯を描いた大作。前半(3巻あたりまで)は、運命に翻弄される赤子の孟嘗君なのでしゃべらないし、主人公は養い親の風洪(後半では名を改めて白圭)。この孟嘗君が人との関係を大切にし様々な人物と関わり、慕われ、やがて各国の宰相を歴任するまでになっていく。

中国の歴史ものにありがちなようにとにかく登場人物が多い。古代中国戦国時代の数々の有名人をはじめ、関係者がてんこ盛り。しかもどの人物もみんな主人公であるかのようなその描写が濃厚でおなか一杯。それぞれの人生が綾なす織物の糸のように出会ったり別れたりを繰り返す。同盟を結んだり裏切ったりもしょっちゅう。また登場人物の名前や地名は日本では日ごろ使わないような漢字が使われていたりでなかなか覚えられない。一人の人物でも名前や役職とか家族関係とかで複数の呼ばれ方をする。それにもかかわらずすごく読みやすいのだ。新聞小説ということもあるんだろうけれども、人名や地名のルビを数ページごとに頻繁に何度も振ってくれるし、なじみのない言葉や用語は適宜解説してくれる。人物のエピソードや、再登場のときは前回登場した時の説明も入れてくれて、とにかく親切。一気に読み切った。

孟嘗君 全5冊合本版(孟嘗君)[宮城谷昌光]【電子書籍】

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