上のあらすじは公式のものみたいだけれども、ちょっと違う。ハンガリーの病院に勤める日本人医療技師のアサトは、腫瘍により左手の切断手術を受ける。左手を失ってからそれが誤診だとわかり、慰謝料はもらったものの医療技師から望まぬ医療事務へと担当が変わる。激しい幻肢痛に苛まれるアサトではあるが、左手を失って6年の後、白人の左手を自身の左手として移植手術を受けることとなる。しかし思い通りに動かない他人の左手にまた翻弄される。
メインの話はこうなのだが、ここにウクライナ人の奥さんの話と、ハンガリー、ウクライナ、ロシアの国際情勢をからめて話が進む。一度は失ったものの移植された他人の左手によってアサトが経験する物語と、祖国と戦争にまつわる喪失と受容の物語がリンクする。失うということはどういうことか、その苦しみと受容について、記憶の混乱や立場の違いや思惑の交叉を通して語られる。
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