読了:人は、こんなことで死んでしまうのか!(知的生きかた文庫)[上野 正彦]

人は、こんなことで死んでしまうのか!

人は、こんなことで死んでしまうのか!

  • 作者:上野 正彦
  • 出版社:三笠書房
  • 発売日: 2024年01月17日頃

二万体の検死・解剖を行なった、元監察医が解き明かす「死のメカニズム」!

65万部を超えたベストセラー『死体は語る』の著者、上野正彦が
死にまつわる常識・迷信・疑問を一刀両断!

●「笑い死に」はあり得るのか
●カラオケで死ぬかも……
●人間の体温の限界は?
●凍死者が裸で発見される理由
●泳げる人でも溺れるのはなぜ?
●人はニオイで死ぬのか
●絞殺は首つり自殺に偽装できるか
●ゴルフ場で死者が多いミステリー

「こんなことで死んでしまうの!?」と言いたくなるような日常にひそむ死の危険から、
生と死の境界線、意外な死の真相、死の医学までを徹底解説!

「知っておけば死なずにすんだのに……」
「人体はどこまで耐えられるのだろうか……」

知っているようで意外と知らない、「こんなことで死なない」ためのトリビアを気楽に学べる一冊!

第1章 日常にひそむ死の危険(ゲップを我慢して死ぬー胃が膨らんで心臓を圧迫する/菓子の小さなかけらで死ぬー喉にものが詰まると意識を失う ほか)/第2章 生と死の境界線(呼吸停止の限界は?-理論上の限界は八分だが…/心臓停止は何分なら大丈夫?-電気ショックは心臓が完全に止まる前に ほか)/第3章 意外な死の真相(水に落ちても人は死ぬのかー水面がコンクリートに変わる/なぜ泳げる人でも溺れるのかー水の中で方向がわからなくなる ほか)/第4章 死の医学(首つりの死因は窒息死ではない?-気管が絞まるか、血管が絞まるか/首つり自殺と絞殺の違いー偽装工作は一〇〇%不可能 ほか)

ヒトの死にまつわるトリビア集。上野正彦の過去に読んだいくつかの著書はおもしろかったけれども、これは「あぁそうですか」って程度。エピソード的におもしろいものが紹介されるわけでもなく、ヒトはこういう場合にこう死ぬよっていう原理原則の話が分かりやすく綴られているだけで深みがない。ざっと読んでおけば十分かな。

人は、こんなことで死んでしまうのか!(知的生きかた文庫)[上野 正彦]
ヒトは、こんなことで死んでしまうのか(ヒトは、こんなことで死んでしまうのか)[上野正彦]【電子書籍】

読了:われはロボット 決定版(ハヤカワ文庫SF)[アイザック・アシモフ/小尾 芙佐]

われはロボット 決定版

われはロボット 決定版

  • 作者:アイザック・アシモフ/小尾 芙佐
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2004年08月06日頃

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。

ロビイ/堂々めぐり/われ思う、ゆえに…/野うさぎを追って/うそつき/迷子のロボット/逃避/証拠/災厄のとき

アイザック・アシモフの古典SF。「ロボット工学三原則」をテーマにしたロボット短編集。ロボット工学三原則は耳にしたことがありだいたいどういうものかも知っているけれども、じゃこの名作古典SFを読んだことがあるのか?と問われると、ない。それどころか、こういう短編連作だということさえ知らなかった。

wikipediaの「ロボット工学三原則」の項

ロボット心理学者のキャルヴィン博士が語る、自身の半生と関わってきたロボット開発の歴史。架空の歴史とは言え、なるほどよく考えたもんだ。ロボット工学三原則の原則をかたくなに守るはずのロボットが、その原則ゆえに想定外の動きをしたり、そこから外れる道があった場合や、穴をついたり、いろいろなエピソードが語られる。

われはロボット 決定版(ハヤカワ文庫SF)[アイザック・アシモフ/小尾 芙佐]
われはロボット 決定版[アイザック アシモフ]【電子書籍】

読了:月は無慈悲な夜の女王(ハヤカワ文庫SF)[ロバート・A・ハインライン/矢野 徹]

月は無慈悲な夜の女王

月は無慈悲な夜の女王

  • 作者:ロバート・A・ハインライン/矢野 徹
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2010年03月05日頃

2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。

 古典SFを読もう第3弾はハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」(第1弾「夏への扉」もハインライン)。タイトルだけは知っていたけれどもどんな話なのかはこれっぽちも知らない。読んでみなければ。

 近未来、流刑の地としての月では、その子孫たちも増えて地球とは異なる都市や文化を形成していたものの、地球政府により搾取されていた。そのことに不満を抱く月世界人たちは地球政府への不満を募らせている。月世界人のコンピュータ技師であるマニュエル(通称マニー)は、月世界をコントロールする中央計算機のメンテナンスに従事していたが、この中央計算機が自我を持っていることに気付き「マイクロフト」(通称マイク)と名付けて交流をはじめる。やがてマニーは少数の仲間とともにマイクを使って月独立を目指す。

 マニーが主人公でそれを支えるマイクという感じの月世界独立物語になるかと思いきや、革命から月世界独立まではすべてマニーの古くからの知り合いである教授とマイクによって裏で綿密に計画され進められているのだ。マニーはしばしば事後に知らされるため、事の中心にいるもののよくわからないまま革命や地球との交渉・戦争に翻弄されている印象を受ける。しかしそれさえも教授とマイクによる計画のうちだったのかもしれず、月世界独立後の教授とマイク無き世界に残るマニーに対してあえてそうしていたとも考えられるのだ。これが読後に一抹の寂寥感を覚える要因になっているのかもしれない。

月は無慈悲な夜の女王(ハヤカワ文庫SF)[ロバート・A・ハインライン/矢野 徹]
月は無慈悲な夜の女王[ロバート A ハインライン/矢野 徹]【電子書籍】

読了:図書館巡礼[スチュアート・ケルズ/小松 佳代子]

図書館巡礼

図書館巡礼

  • 作者:スチュアート・ケルズ/小松 佳代子
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 2019年03月20日頃

知の集積所としての図書館は、生と死、渇望と喪失といったあらゆる人間ドラマの舞台でもある。アレクサンドリア図書館からボドリアン図書館まで、古今の偉大な図書館の魅力を語り、文献の保守・保存・獲得に心血を注いだ「愛書家」たちのエピソードを活写する。

本のない図書館ー口誦伝承とソングライン/アレクサンドリア最後の日々-古代の書物とその保管/完璧を追求してーコデックスの台頭/「忌まわしい者たちの掃き溜め」-ルネサンスの再発見/誰もが自由にー大量の書物があふれかえる印刷時代/「蛮族さえしなかったこと」-ヴァチカン図書館/図書館に秘められたものの歴史ー図書館設計の妙技と秘宝/本の管理者ー史上最高の司書と最悪の司書/放蕩の真髄ーヒーバー、バイロン、バリー/火神ウルカヌスへの憤怒ー火事と戦争で破壊された図書館/伯爵ー書物の略奪者と本泥棒/「図書館の内装はささやくように」-ピアポント・モルガン図書館/栄光のためにーフォルジャー・シェイクスピア図書館/修道士殺しー架空の図書館/ラブレターー未来の図書館

図書館にまつわるエピソードの数々を紹介してくれる。歴史から建物、書物から印刷術、司書からコレクターや作家。図書館を軸としてそれにまつわる興味深いものから面白おかしいものまでさまざまな話題が提供される。図書館とは単なる書物を格納し開陳する建物というだけでなく、人類の歴史や生き様の一側面を反映してきたものなのだなぁ。図書館や書物に対する愛に溢れた一冊。

高所の図書のために梯子が使われだしたのはここ最近のことでそれ以降司書の転落事故が激増した話、多くのコレクターが偽物をつかまされている話、貴重な蔵書をそうとは知らずに売っぱらってしまった図書館の話。ウンベルト・エーコ(「薔薇の名前」著者)と対照的なトールキン(「ホビットの冒険」「指輪物語」著者)の出版に至るまでの紆余曲折エピソード。現代の図書館の役割、デジタル化とインターネット時代のこれからの図書館にまで思いを馳せる。

図書館巡礼[スチュアート・ケルズ/小松 佳代子]
図書館巡礼 「限りなき知の館」への招待[スチュアート ケルズ]【電子書籍】

読了:ヒトコブラクダ層ぜっと(上)(下)(幻冬舎文庫)[万城目 学]

ヒトコブラクダ層ぜっと(上)ヒトコブラクダ層ぜっと(下)

ヒトコブラクダ層ぜっと(上)

  • 作者:万城目 学
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2021年06月23日頃

シュメール・メソポタミア文明をテーマにした軽妙洒脱な冒険ファンタジー。怒涛の展開で一気読み。コメディタッチな部分もあり気楽に読める。銀亀(ギンガメ)は「ギルガメッシュ」の、榎土(エノキド)は「エンキドゥ」のもじりだね。

珍妙なタイトルだが、文庫化の際には「ヒトコブラクダ層戦争」に改題している。

ヒトコブラクダ層ぜっと(上)[万城目 学]
ヒトコブラクダ層戦争(上)(ヒトコブラクダ層戦争)[万城目学]【電子書籍】
ヒトコブラクダ層ぜっと(下)[万城目 学]
ヒトコブラクダ層戦争(下)(ヒトコブラクダ層戦争)[万城目学]【電子書籍】

読了:毒殺の化学[ニール・ブラッドベリー/五十嵐加奈子]

毒殺の化学

毒殺の化学

  • 作者:ニール・ブラッドベリー/五十嵐加奈子
  • 出版社:青土社
  • 発売日: 2023年07月26日

古今東西、様々な物質が毒殺に用いられ、毒はフィクションでも現実世界でも人々の関心を引きつけてきた。実際の毒殺事件に用いられた11の物質を紹介し、毒がいかにして私たちの息の根を止めるのかを明らかにする。犯罪と化学、医学を掛け合わせたスリリングな科学ノンフィクション。

パート1 死を招く生体分子(インスリンとバーロウ夫人のバスタブ/アトロピンとアレクサンドラのトニック/ストリキニーネとランベスの毒殺魔/トリカブトとシン夫人のカレー/リシンとゲオルギー暗殺事件 ほか)/パート2 土壌由来の死の分子(カリウムと悪夢の看護師/ポロニウムとサーシャの無差別な腸/ヒ素とムッシュー・ランジェリエのココア/塩素とラフキンの殺人看護師)/結び 死神の庭園

序で毒とは何か、毒殺の方法などの概論を軽く述べ、そのあとに続くのは毒物に関する各論。第1部は生体分子の毒、インスリン、アトロピン、ストリキニーネ、トリカブト、リシン、ジゴキシン、シアン化合物を。第2部は土壌由来の毒、カリウム、ポロニウム、ヒ素、塩素を。これらの物質に関する歴史的背景、生体への作用機序、その毒を用いた主要な毒殺事件および裁判等のあらましなどが述べられる。おそらくこれは生理化学教授である著者の大学講義ネタ帳を一般読者向けにまとめたものなんじゃないかなぁ。とにかく面白いのだ。こんな授業だったら喜んで聴講する。生体への作用機序の解説が秀逸で分かりやすい。

昔から使われてきた定番の毒物はもちろん、東欧やロシアが関与したと思われる最近の毒殺事件は未解明な部分が多いにしてもスケールのデカさというかやっていることが大げさすぎて荒唐無稽なバカバカしさまで感じてしまうようなところがかえっておそろしい。とはいえ、著者も言うように物質はあくまでも物質であり、結局はそれをどのように用いるか使う人によるという点は重要。量により毒にも薬にもなるものが多く、それらの物質によって解明された生体の仕組み、そしてその作用機序による医療や薬学への応用も多いのだ。

毒殺の化学[ニール・ブラッドベリー/五十嵐加奈子]

読了:ドストエフスキー 黒い言葉(集英社新書)[亀山 郁夫]

ドストエフスキー 黒い言葉

ドストエフスキー 黒い言葉

  • 作者:亀山 郁夫
  • 出版社:集英社
  • 発売日: 2021年07月16日頃

ドストエフスキー生誕から二〇〇年目の二〇二一年、世界は新型コロナウイルスの感染拡大という誰も予想しなかったかたちで転換期を迎えている。激動の時代を生き、コレラ蔓延というパンデミックも経験した作家が鋭い直感と深い洞察から生み出した言葉には、今を生き抜くためのヒントが含まれているのではないか。資本主義の行方、暴力、信仰などについて残された言葉の数々は、予言のようにも響く。ドストエフスキー初心者にも、熟読者にも衝撃的な現代への提言。

金、または鋳造された自由/サディズム、または支配の欲求/苦痛を愛する、または「二二が四は死のはじまり」/他者の死を願望する/疚しさ/美が世界を救う/intermission 「神がなければ、すべては許される」/「全世界が疫病の生贄となる運命にあった」/夢想家、または「永遠のコキュ」/不吉な道化たち/神がかりと分身/破壊者たち/父殺し、または「平安だけがあらゆる偉大な力の…」

著者を「カラマーゾフの兄弟」の訳者としては知っていた。「黒い言葉」とあるが、ロシアにとって「白」は雪または氷に覆われた色で、「黒」は春になって雪解けによって現れる豊かな土壌の色らしい。ドストエフスキーの作品や手記、またドストエフスキー研究者たちによる言葉を織り込んで、ドストエフスキー並びに帝政末期のロシアについて語る。これが異様におもしろい。「神がなければ、すべては許される」の章がとりわけおもしろかった。文学作品についてもその作品が生まれた背景、その時代の空気を知っていた方が断然面白く読めるんだなぁと痛感。昔読んだはずだがすっかり忘れている「カラマーゾフの兄弟」、積読になったままの「罪と罰」、読んでみようかなと思った。

ドストエフスキー 黒い言葉(集英社新書)[亀山 郁夫]
ドストエフスキー 黒い言葉(ドストエフスキー 黒い言葉)[亀山郁夫]【電子書籍】

読了:物理の4大定数 宇宙を支配するc、G、e、h(幻冬舎新書)[小谷 太郎]

物理の4大定数 宇宙を支配するc、G、e、h

物理の4大定数 宇宙を支配するc、G、e、h

  • 作者:小谷 太郎
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2022年07月27日頃

光速c、重力定数G、電子の電荷の大きさe、プランク定数h。これらの基礎物理定数は日常から宇宙までを支配する法則が数値となったものだ。我々はふだん物理定数など意識せずに暮らしているが、この値が違えば太陽はブラック・ホールと化し、人類は地球にいられず火星に住むハメになり、宇宙の姿は激変する。本書では人類がいかにして4大物理定数を発見したか、そのことでどんな宇宙の謎が解け、またどんな謎が新たに出現したかを解説。相対性理論、宇宙の構造、素粒子や量子力学までわかる画期的な書!

第1章 光速cで特殊相対性理論がわかる(宇宙のどこで測っても変わらない量/4大定数は「偉い」物理定数 ほか)/第2章 重力定数Gで宇宙の構造がわかる(地球が丸いのも重力のおかげ/「重さ」と「質量」は別のもの ほか)/第3章 電子の電荷の大きさeで素粒子がわかる(電気現象は電子と陽子という粒々が起こしている/電気の量を測るには ほか)/第4章 プランク定数hで量子力学がわかる(ラスボス・プランク定数h/プランク定数は考案者にも謎の定数だった ほか)/第5章 物理の4大定数で単位が決まる(単位とは「物理定数の何倍であるか」を述べたもの/メートルの誕生 ほか)

物理の4大定数、光速のc、重力定数のG、電子の電荷の大きさのe、プランク定数のhについての入門書。これらの物理定数がどのように定義されて、その値はどのように計測されてきたのか、またその定数は物理現象の何を表しているのかを分かりやすく解説してくれる。もし物理定数がこの値と違っていたら、この世界はどのようになるかという思考実験付。高校生や、「物理学なんて勘弁してくれぇ」な大人でも親しめるように、式をほぼ使わず平易な言葉で書かれ、そして随所に「これは覚えなくていいです、わからなければ飛ばしていいです」とあるので気楽に読める。とはいえ、光速は相対性理論、電子は素粒子理論、プランク定数は量子力学の話なわけで、いくら平易な言葉でわかりやすく解説してくれても、日常の実感からは想像しがたい世界は具体的にイメージしづらいよなぁというのがこの手の話。

物理の4大定数 宇宙を支配するc、G、e、h(幻冬舎新書)[小谷 太郎]
物理の4大定数 宇宙を支配するc、G、e、h[小谷太郎]【電子書籍】

読了:孟嘗君 全5冊合本版(孟嘗君)[宮城谷昌光]【電子書籍】

孟嘗君(1)

孟嘗君(1)

  • 作者:宮城谷 昌光
  • 出版社:講談社
  • 発売日: 1998年09月

斉の君主の子・田嬰(でんえい)の美妾・青欄(せいらん)は、健やかな男児・田文(でんぶん)を出産した。しかし、5月5日生まれは不吉、殺すようにと田嬰は命じる。必死の母・青欄が秘かに逃がした赤子は、奇しき縁で好漢風洪(ふうこう)に育てられる。血風吹きすさぶ戦国時代、人として見事に生きた田文こと孟嘗君とその養父の、颯爽たる人生の幕開け。宮城谷昌光の大作『孟嘗君』全5冊を、ひとつにまとめてお届けします。

孟嘗君といえば漢文で習う、食客が鶏の声の真似をし函谷関を抜けて秦国から脱出するエピソードが有名だよね。正直言って孟嘗君といえばその話しか知らないんだけれども、これは新聞小説として掲載されていた孟嘗君の生涯を描いた大作。前半(3巻あたりまで)は、運命に翻弄される赤子の孟嘗君なのでしゃべらないし、主人公は養い親の風洪(後半では名を改めて白圭)。この孟嘗君が人との関係を大切にし様々な人物と関わり、慕われ、やがて各国の宰相を歴任するまでになっていく。

中国の歴史ものにありがちなようにとにかく登場人物が多い。古代中国戦国時代の数々の有名人をはじめ、関係者がてんこ盛り。しかもどの人物もみんな主人公であるかのようなその描写が濃厚でおなか一杯。それぞれの人生が綾なす織物の糸のように出会ったり別れたりを繰り返す。同盟を結んだり裏切ったりもしょっちゅう。また登場人物の名前や地名は日本では日ごろ使わないような漢字が使われていたりでなかなか覚えられない。一人の人物でも名前や役職とか家族関係とかで複数の呼ばれ方をする。それにもかかわらずすごく読みやすいのだ。新聞小説ということもあるんだろうけれども、人名や地名のルビを数ページごとに頻繁に何度も振ってくれるし、なじみのない言葉や用語は適宜解説してくれる。人物のエピソードや、再登場のときは前回登場した時の説明も入れてくれて、とにかく親切。一気に読み切った。

孟嘗君 全5冊合本版(孟嘗君)[宮城谷昌光]【電子書籍】

読了:人生の約束(幻冬舎文庫)[山川健一]

人生の約束

人生の約束

  • 作者:山川健一
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2015年11月

IT企業のカリスマ経営者である祐馬。仕事に没頭する日々の中、かつての共同創業者であり親友の航平が、故郷で死んだことを知る。同じ頃、会社では不正取引が発覚し…。何もかも失った祐馬が、友の愛した故郷、家族や仲間達のため選んだ道とはー人生は失くしてから気づくことばかり。孤独の先にかけがえのない大切なものを見出す感動小説。

2016年の映画「人生の約束」のノベライズ。もとの映画がまったくノーマークだった(その存在さえ知らんかった)。結構な俳優が出てるんだね。

映画のノベライズなので、なんだか浅くて臭い。いや、ストーリーは面白いんだよ。「映像の作品が先でそれをノベライズしたんだなぁ」という感じ。男の友情物語ではあるんだけれども、映画のあらすじを読んでいるみたい。小説としての深みや緻密さが足りない。

人生の約束(幻冬舎文庫)[山川健一]
人生の約束[山川健一]【電子書籍】