読了:さよならドビュッシー(宝島社文庫)[中山七里]

さよならドビュッシー

さよならドビュッシー

  • 作者:中山七里
  • 出版社:宝島社
  • 発売日: 2011年01月

ピアニストからも絶賛!ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。ピアニストを目指す遙、16歳。祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生するー。第8回『このミス』大賞受賞作品。

順番としてはこの「さよならドビュッシー」が先で、その続編が先日感想を書いた「おやすみラフマニノフ」。都合こっちを読むのが後になってしまった。

読了:おやすみラフマニノフ(宝島社文庫)[中山七里]

いやぁ、これも面白かった。全身大やけどを負った音楽高校の女子高生が数か月後のピアノコンクールに挑む話なんだけれども、「いやぁぁぁぁ、女子高生にこんな過酷な運命背負わせるなんて……」と思いながらも、その圧倒的な面白さにやはりページを繰る手が止まらない。寝る前にちょっとずつ読もうなんてことのできる本じゃないよ。一気読みしてしまった。

探偵役、岬先生やっぱり全能。こっちが先なので岬先生の説明とかはこっちの方が詳しい。これを踏まえて「おやすみラフマニノフ」だったところもあったのね(知らなくても全く問題はなかったのだが)。2編の時系列的には今回の話と「おやすみラフマニノフ」は独立した事件と話でありながら、ほぼ同時期で同時進行していたってことになるんだろうけれども(数か月こっちのほうが先だけれども、かぶっている期間がある)、そうしたら岬先生ってばなおさら全能感際立ってないかい?

コンクールの息の詰まる主観描写はすさまじい。予選を読んだらショパンの練習曲集Op.10を聞きたくなって、おもわず音源アルバム引っ張り出してきましたよ。

さよならドビュッシー(宝島社文庫)[中山七里]
さよならドビュッシー[中山七里]【電子書籍】

読了:おやすみラフマニノフ(宝島社文庫)[中山七里]

おやすみラフマニノフ

おやすみラフマニノフ

  • 作者:中山七里
  • 出版社:宝島社
  • 発売日: 2011年09月

第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに秋の演奏会を控え、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり…。ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実!美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。

いやぁ、おもしろかった。面白すぎてページを繰る手が止まらなくて一気読みしてしまったよ。音楽好きにはたまらんのではないかと。

一応、ミステリーではあるんだけれども、それ自体はそんなに大したものではないし、どっかで聞いたことのある設定だなぁって感じ。

この作者の神髄は、なんといっても演奏される曲の展開描写の妙。どのような演奏なのかをまるで楽譜を見ながら曲を聴いているかのような追随体験できる。そして登場人物のその時の五感や心情を主観的に交える。これがもう本当に読んでいてスリリングなんだよ。知っている曲だとなおさら、「あぁそういう曲だった、確かにそういう感じだった」とか頭の中で曲が鳴ってしまうんだよ。メインのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はもちろん、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲も素晴らしい描写。

音大生の生態も割とリアルなんじゃなかろうか。登場人物の性格を楽器の性格に合わせすぎというか型にはまりすぎている気はするんだけれども、あぁ確かにこの楽器奏者はこういう感じの人いるいるとか思っちゃったよ。それにしても岬先生、出来過ぎじゃね?

おやすみラフマニノフ(宝島社文庫)[中山七里]
おやすみラフマニノフ[中山七里]【電子書籍】

読了:夜明けのすべて(文春文庫)[瀬尾 まいこ]

夜明けのすべて

夜明けのすべて

  • 作者:瀬尾 まいこ
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日: 2023年09月05日

PMSで感情を抑えられない美紗。パニック障害になり生きがいも気力も失った山添。友達でも恋人でもないけれど、同志のような気持ちが芽生えた二人は、自分にできることは少なくとも、相手のことは助けられるかもしれないと思うようになりー。人生は苦しいけれど、救いだってある。生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。

前半は良かったんだけれどもなぁ。抱えているもののどうにもならなさ加減と今後の不安は割とリアル。そして自分のことさえままならないのに他人のことを構っていられない、周囲も理解するのが難しいし実のところ対処の仕方を知らない。そんな中でなんとか生活を保ちつつやりすごす日々。後半は話がうまくいきすぎじゃない?夜明け早すぎない?短中編なので、この夜明けの早さにびっくり。そんなお手軽に世の中うまくいくなら苦労せんよと思ったり思わなかったり。いや、さわやかで良い話にまとまっているけれどもさ、現実はもっとままならないよって。

夜明けのすべて(文春文庫)[瀬尾 まいこ]
夜明けのすべて(夜明けのすべて)[瀬尾まいこ]【電子書籍】

読了:幼年期の終り(ハヤカワ文庫)[アーサー・チャールズ・クラーク/福島正実]

幼年期の終り

幼年期の終り

  • 作者:アーサー・チャールズ・クラーク/福島正実
  • 出版社:早川書房
  • 発売日: 1979年04月

ハインライン「夏への扉」に続く古典SFを読もう第2弾は、アーサー・クラーク「幼年期の終り」。

読了:夏への扉〔新版〕(ハヤカワ文庫SF)[ロバート・A・ハインライン/福島 正実]

詩的な表現がクラークらしいんだけれども、結末はちょっと哀しい話だった。それが宇宙の上位者の摂理に基づいた運命というものなのか。

冷戦時代、ソ連とアメリカどちらが先に宇宙に到達するかという正念場に、突然地球各地に現れた異星人オーバーロードの大型宇宙船。そこから1世紀半に渡る人類とオーバーロードの関係が3つの時代で描かれる。当初はかたくなに人類に姿を見せなかったオーバーロードであったが、その先進的な技術でもって人類の差しあたっての問題を解決してしまった。人類はもはや戦争や飢えに苦しむことはなくなった。それでいてオーバーロードは人類に対して過剰な干渉はしてこないが、去るわけでもない。まるで人類を観察しているかの如く。彼らが地球へやってきた目的は何なのか。

幼年期の終り(ハヤカワ文庫)[アーサー・チャールズ・クラーク/福島正実]
幼年期の終り[アーサー C クラーク/福島 正実]【電子書籍】

読了:もうすぐ絶滅するという紙の書物について[ウンベルト・エーコ/ジャン・クロード・カリエール]

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

  • 作者:ウンベルト・エーコ/ジャン・クロード・カリエール
  • 出版社:CCCメディアハウス
  • 発売日: 2010年12月

紙の本は、電子書籍に駆逐されてしまうのか?書物の歴史が直面している大きな転機について、博覧強記の老練愛書家が縦横無尽に語り合う。

本は死なない/耐久メディアほどはかないものはない/鶏が道を横切らなくなるのには一世紀かかった/ワーテルローの戦いの参戦者全員の名前を列挙すること/落選者たちの復活戦/今日出版される本はいずれもポスト・インキュナビュラである/是が非でも私たちのもとに届くことを望んだ書物たち/過去についての我々の知識は、馬鹿や間抜けや敵が書いたものに由来している/何によっても止められない自己顕示/珍説愚説礼讃/インターネット、あるいは「記憶抹殺刑」の不可能性/炎による検閲/我々が読まなかったすべての本/祭壇上のミサ典書、「地獄」にかくまわれた非公開本/死んだあと蔵書をどうするか

ヨーロッパを代表する二人の知の巨匠(ともに故人)による「紙の本」をテーマとした座談会。本というものに関して次々と二人の知識が開陳される。その博覧強記ぶりがすごい。知の巨匠であっても自分の本棚に入れてある本というのはすべて読んでいるわけではなく、読まなければいけないものでもなく、「読んでもいいかな」という本の集合でいいという話題には救われる。

阿呆というのは、間違えるだけでは飽き足らないんですね。間違った考えを強く声高に肯定し、主張し、みんなに聞いてもらいたがります。阿呆な連中の騒々しさといったら驚くほどです。「今では確かな筋からの情報により次のようなことがわかっています……」と言ったあとに続くのは、とんでもないデタラメなんです。
「珍説愚説礼賛」より

地球人の大半は、書店や図書館とは縁のない生活をしています。そういう人々にとっては、書物は無意味な代物です。
「祭壇上のミサ典書、「地獄」にかくまわれた非公開本」より

もうすぐ絶滅するという紙の書物について[ウンベルト・エーコ/ジャン・クロード・カリエール]
もうすぐ絶滅するという紙の書物について[ウンベルト・エーコ/ジャン=クロード・カリエール/工藤妙子]【電子書籍】

読了:あなたの燃える左手で[朝比奈 秋]

あなたの燃える左手で

あなたの燃える左手で

  • 作者:朝比奈 秋
  • 出版社:河出書房新社
  • 発売日: 2023年06月19日

ハンガリーの病院で左手の移植手術を受けたアサト。だが麻酔から覚めると、見知らぬ他人の手が移植されていた。

上のあらすじは公式のものみたいだけれども、ちょっと違う。ハンガリーの病院に勤める日本人医療技師のアサトは、腫瘍により左手の切断手術を受ける。左手を失ってからそれが誤診だとわかり、慰謝料はもらったものの医療技師から望まぬ医療事務へと担当が変わる。激しい幻肢痛に苛まれるアサトではあるが、左手を失って6年の後、白人の左手を自身の左手として移植手術を受けることとなる。しかし思い通りに動かない他人の左手にまた翻弄される。

メインの話はこうなのだが、ここにウクライナ人の奥さんの話と、ハンガリー、ウクライナ、ロシアの国際情勢をからめて話が進む。一度は失ったものの移植された他人の左手によってアサトが経験する物語と、祖国と戦争にまつわる喪失と受容の物語がリンクする。失うということはどういうことか、その苦しみと受容について、記憶の混乱や立場の違いや思惑の交叉を通して語られる。

あなたの燃える左手で[朝比奈 秋]
あなたの燃える左手で[朝比奈秋]【電子書籍】

読了:成瀬は信じた道をいく[宮島 未奈]

成瀬は信じた道をいく

成瀬は信じた道をいく

  • 作者:宮島 未奈
  • 出版社:新潮社
  • 発売日: 2024年01月24日頃

唯一無二の主人公、再び。…と思いきや、まさかの事件が勃発!?我が道を突き進む成瀬あかりは、今日も今日とて知らぬ間に、多くの人に影響を与えていた。「ゼゼカラ」ファンの小学生、成瀬の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使になるべくして生まれた女子大生…個性豊かな面々が新たな成瀬あかり史に名を刻む。そんな中、幼馴染の島崎が故郷に帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており…!?

ときめきっ子タイム/成瀬慶彦の憂鬱/やめたいクレーマー/コンビーフはうまい/探さないでください

前作2024年本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りにいく」の感想はこちら。

読了:成瀬は天下を取りにいく[宮島 未奈]

前作は成瀬が中学生~高校生の頃の話、今作はそれに続く高校生~大学生の話。成瀬は中心人物ではあるけれども、各短編の主人公は別にいて、それぞれの主人公が成瀬によってどう振り回されて影響を受けて成長していくかの物語。成瀬は一貫して頭はいいのだけれどもエキセントリック。そうはいっても、今作では変人成瀬にも思うところはあって、それなりに心動かされているという描写がちらほら見受けられる。お気楽に読める痛快青春コミカル小説。今作もローカルネタが熱すぎる。「膳所から世界へ」

成瀬は信じた道をいく[宮島 未奈]
成瀬は信じた道をいく(「成瀬」シリーズ)[宮島未奈]【電子書籍】

読了:生命進化の物理法則[チャールズ・コケル/藤原 多伽夫]

生命進化の物理法則

生命進化の物理法則

  • 作者:チャールズ・コケル/藤原 多伽夫
  • 出版社:河出書房新社
  • 発売日: 2019年12月16日頃

そこには美しい単純性がある。生物と無生物の間を分ける物理法則。進化の謎に迫る驚異の発見!「生命の本質を突く物理法則」、進化と物理学を統合する新たな試み。地球外生命という宇宙的な規模まで広がる壮大な生物論。

生命を支配する沈黙の司令官/群れを組織化する/テントウムシの物理学/大小さまざまな生き物の体/生命の袋/生命の限界/生命の暗号/サンドイッチと硫黄/水ー生命の液体/生命の原子/普遍生物学はあるか/生命の法則ー進化と物理法則の統合

地球上の生命の多様性を見ると、進化はあらゆる方向へと奔放に展開しているように思うことがある。しかし実際には、生物学の範疇以前に進化は物理法則によって大きく制限されていることを忘れがちである。本書では地球生命の進化が物理法則によってどのような制約を受けているのかを、マクロレベルからミクロレベルへと論を展開していく。個体群レベルから始めて、重力をはじめとする地球規模の物理法則によるところから、個体レベル、細胞レベル、分子レベル、原子レベル、そして量子レベルまで、そこに物理法則がどのように生命活動を制限するか(生命活動の制限は進化の制限となる)を各ステージごとに文献と考察を交えて解説していく。

そしてこれらの論は、宇宙生物学の立脚点となる。現在、人類が確認できる生命圏は地球しかない(N=1問題)。しかし、宇宙のどこかに地球外生命が存在するとして、それらの生命体はどのような進化をしたものであろうか?宇宙に遍在する進化を制限する物理法則は同じであることから考えれば、ある程度の範囲の制限と考察が可能となる。炭素ではなくケイ素を主体とする生命、溶媒として水ではなくメタンを使う生命は存在しうるのか?遺伝暗号の仕組みは地球の生命とは違ったものを構築できるのか?これらの疑問にも一定の制限がかかるはずではないか?

物理学を踏まえた生物学の発展の先に生まれた宇宙生物学の研究者・教育者として第一線で活躍する著者による渾身の力作。

生命進化の物理法則[チャールズ・コケル/藤原 多伽夫]
生命進化の物理法則[チャールズ・コケル/藤原多伽夫]【電子書籍】

読了:詐欺師の楽園(白水Uブックス)[ヴォルフガング・ヒルデスハイマー/小島 衛]

詐欺師の楽園

詐欺師の楽園

  • 作者:ヴォルフガング・ヒルデスハイマー/小島 衛
  • 出版社:白水社
  • 発売日: 2021年09月30日頃

金持ちで蒐集家のおばに育てられたアントンは十五歳で絵を描き始めた。完成した絵はおばの不興を買うが、屋敷を訪れたローベルトおじは絵の勉強を続けるよう激励する。実はこのローベルトこそ、バルカン半島の某公国を巻き込み、架空の画聖をでっちあげて世界中の美術館や蒐集家を手玉に取った天才詐欺師にして贋作画家だった。十七歳になったアントンはおじの待つ公国へ向かったが…。虚構と現実の境界を軽妙に突く傑作コミックノヴェル。

この小説は手記の形態をとっている。そしてこの手記は次の書き出しで始まる。

プロチェゴヴィーナ公国のレンブラントと称せられる画家アヤクス・マズュルカ――美術史上最大の意義をになう人物のひとりとされているこの巨匠は、実はかつて実際にこの世に存在したことはない。彼の作品は後世の偽作であり、彼の評伝は虚構である。

手記には、黒幕の贋作画家ローベルトおじの壮大な企ての全貌と、国境紛争に巻き込まれて若くして死んだこととされ悲劇の英雄画家に祭り上げられてしまう私の数奇なる運命が描かれる。この手記は、一連の出来事の裏側を告白しているものであるが、決して不正を告発しているわけではない。そのためか、そこはかとなくうさん臭くてどこまでがホントのことなの?っていう感じを醸しているのもおもしろい。全体を通してちょっとした喜劇である。真贋評論や芸術論をもてあそび、またそれに翻弄される人間のバカバカしさを巧妙に描いている。

詐欺師の楽園(白水Uブックス)[ヴォルフガング・ヒルデスハイマー/小島 衛]

読了:やりなおし世界文学[津村 記久子]

やりなおし世界文学

やりなおし世界文学

  • 作者:津村 記久子
  • 出版社:新潮社
  • 発売日: 2022年06月01日頃

ギャツビーって誰?名前だけは知っていたあの名作、実はこんなお話だったとは!古今東西の92作。物語の味わいを凝縮した世界文学案内。

ギャツビーは華麗か我々か?-スコット・フィツジェラルド『華麗なるギャツビー』/あるお屋敷のブラックな仕事ーヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』/「脂肪の塊」は気のいい人なのにーモーパッサン『脂肪の塊・テリエ館』/流れよ理不尽の破滅型SF-フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』/こんな川べで暮らしてみたいーケネス・グレーアム『たのしい川べ』/スパイと旅する人間模様ーサマセット・モーム『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』/頑張れわらの女ーカトリーヌ・アルレー『わらの女』/レモンの上司がパインとはーアガサ・クリスティー『パーカー・パイン登場』/技と感動のくだらなさーフレドリック・ブラウン『スポンサーから一言』/終わりのない夜に生まれつくということーアガサ・クリスティー『終りなき夜に生れつく』〔ほか〕
【本書で扱った名作】
『華麗なるギャツビー』 『ねじの回転』 『脂肪の塊・テリエ館』 『流れよ我が涙、と警官は言った』 『たのしい川べ』 『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』 『わらの女』 『パーカー・パイン登場』 『スポンサーから一言』 『終りなき夜に生れつく』 『かもめ』 『ストーカー』『新編 悪魔の辞典』『ムッシュー・テスト』 『闇の奥』 『ノーサンガー・アビー』 『813』『 続813』 『クローム襲撃』 『長いお別れ』 『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』 『山月記・李陵 他九篇』 『スローターハウス5』 『るつぼ』 『スペードの女王・ペールキン物語』 『灯台へ』 『黄金の壺 マドモワゼル・ド・スキュデリ』 『遠い声 遠い部屋』 『知と愛』 『アラバマ物語』 『樽』 『たんぽぽのお酒』 『料理人』 『ワインズバーグ・オハイオ』 『響きと怒り』 『人間ぎらい』 『城』 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 『ゴドーを待ちながら』 『幸福論』 『肉体の悪魔』 『オー・ヘンリー傑作集』 『欲望という名の電車』 『チップス先生、さようなら』 『蜘蛛女のキス』 『世界の中心で愛を叫んだけもの』 『人形の家』 『ペスト』 『夜と霧』 『長距離走者の孤独』 『子規句集』 『クレーヴの奥方』 『ドリアン・グレイの肖像』 『一九八四年』 『椿姫』 『マルテの手記』 『ボヴァリー夫人』 『リア王』 『マクベス』 『赤と黒』 『君主論』 『自由論』 『マンスフィールド短編集』 『日々の泡』 『マルタの鷹』 『クリスマス・キャロル』 『幼年期の終わり』 『風にのってきたメアリー・ポピンズ』 『緋文字』 『孫子』 『宝島』 『ジキルとハイド』 『アッシャー家の崩壊 黄金虫』 『ハイ・ライズ』 『マイ・アントニーア』 『外套・鼻』 『深夜プラス1』 『カヴァレリーア・ルスティカーナ―他十一篇』 『完訳 チャタレイ夫人の恋人』 『バベットの晩餐会』 『カンディード』 『ずっとお城で暮らしてる』 『ヘンリー・ライクロフトの私記』 『九百人のお祖母さん』 『サキ短編集』 『山海経』 『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』 『怪談』 『津軽』 『ラ・ボエーム』 『鼻行類』 『金枝篇』 『カラマーゾフの兄弟』 『荒涼館』

古今東西92作とはいうものの、近現代小説が多い。中でもSF小説が手厚い印象。題名だけは知っているけれども読んだことがない小説、昔読もうとして挫折した小説、昔読んだけれどもピンとこなかった小説、こういった類の作品を改めて読んでみての感想エッセイ。関西人らしい軽妙な「知らんがな」ノリによる紹介が愉快。

身もふたもない、あるいは鼻持ちならない、どうしようもない人間が描かれていようとも、そこに人間というものの本質をしっかり捉えようとしている作者の想いを考察する視点はよい。こんな紹介されたらどの本も読みたなってまうやん。

紙の本で、この活字サイズで、上下2段組のぎっちりな様は、目にも精神にもちょっとつらかった。

やりなおし世界文学[津村 記久子]