或る夜のこと。友達の家に何人かで集まって遊んでいるとき、コンビニエンスストアに食料の買い出しにゆくことになった。「僕、行こうか」と私が名乗りをあげると、「じゃあ、あたしも行く」とSさんが云った。どきっとする。今、Sさんは「じゃあ、あたしも行く」って云わなかった?「じゃあ」ってなんだ?-恋なんて縁がないと思っている人に贈りたい、人気歌人の恋愛エッセイ集。
「ときめき」延長作戦/いちゃいちゃ界/苺狩り/理想の男性像/「似ている」事件/性的合意点/次の恋人/好意の数値化/一次会の後で/料金所の女神〔ほか〕
歌人による軽妙洒脱なダメ男恋愛エッセイ。著者の恋愛観のダメっぷりや女性に対して抱く幻想が面白おかしく描かれている。女性が読むと、このダメ男っぷりが母性本能をくすぐるようでかわいいと思えるようなのだが(実際後書き解説にそう書いてある)、男から見ると「そうそう、そうなんだよ」と共感することしきりな点多し。恋の駆け引きは苦手だから、こういう場合はこういう解釈をすると明確にルール化してもらえると助かるとか(もちろん本気では言っていない)、常識人の著者からすると珍妙でありながらワイルドな発言(「今、東名を歩いている」とか)をさらっと吐きくさって女性の心を鷲掴みにする男への羨望とか。とにかく言うことがいちいち面白いのだ。著者は、女性に幻想を抱いている独りよがりなダメ男っぷりを開陳し、もてない男を演じているが、ちゃっかり運命の女性(=妻)がすでにいることをしれっと漏らしてしまったりもする。なんだこの男は、面白すぎるぞ。むしろこういうことが言える男になりたいぞ、俺は。
■ もしもし、運命の人ですか。(角川文庫)[穂村 弘]
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