「カレーうどんの汁が跳ねるんだったら、裸になって風呂場で食べればいいのよ」

うちの彼氏(R氏)は、食べること・料理に対しては異常なまでの関心を寄せる。おいしいものを、おいしく食べて、おいしいお酒を楽しむためにはすさまじいまでの情熱を傾けるのだ。

一方のラフは「食事ってさ、そりゃおいしいもの食べられたら嬉しいけれども、一人暮らしだと、口にするのもはばかられるほど不味くなければ、とりあえず腹が膨れればそれでいいんじゃない?」とか思ったりなんかしているわけですよ。彼氏には許しがたい発想なんだとは思うけどさ。基本的にワンプレートで何とかならないかと考えることが多くて、丼の類(というかぶっかけ飯)単品とかがヘビーローテーション。どんぶり茶碗にご飯入れて、その上におかず乗せてしまうだけ系みたいな感じの。サイドディッシュ(副菜?)とか椀物の類もなくても全然平気。彼氏に言わせれば「もはや餌(飼料)」。

そういうこと分かっているのに、電話で必ず「(今日は)何食べた?」と確認してくるので、言葉にしにくい謎飯を作ってしまた時など説明が超面倒くさくなる。言葉だけで説明してもなんだから、たまには食べたものを晒してみる(というわけでロマンチックではないがこれはR氏への公開ラブレターである)。

先日鍋いっぱいに作ってしまった、水っぽい小間物(ゲロの婉曲表現なんですって)カレーは冷凍ストックにしてある。いきさつは次のとおり。

ラフはとんでもない物を作っていきました。見た目が悪くたいしておいしくもない水っぽいカレーです。

えぇ、「翌日に残ったカレーでリメイクレシピだって?カレーなんてものはたくさん作ったとしても、おかわりが止まらなくてその日のうちに食べきっちゃうものなんだから、翌日に残ったカレーでリメイクなんてレシピは物理的に不可能」とまで言い切っていたあのラフが冷凍ストックにしてしまっていたんですよ。人は変わるもんだなぁ(遠い目)。もちろん先日の水っぽい謎カレーはどこをどう間違えて失敗したかについては彼氏から愛あるダメ出しをしっかり食らっております。

今日は、その冷凍ストックの一部を使ってカレーうどんなどを作ってみましたよ。めんつゆと牛乳を加えて味を調えて、見た目はおそろしくましになった。あたかもカレーうどんっぽく見えるでしょ?もちろん晩御飯はこれ単品です。

カレーうどん
リメイクカレーうどん

彼氏と電話でカレーうどんの話をしていたら、「カレーうどんって汁が跳ねて机の周りや服とか汚れちゃうよね」って話になって、「だったら(カレーうどんは)裸になって風呂場で食えばいいんだよ」というシュールな提案をされた。この子は変態だわ。R……、おそろしい子!

おそろしい子 (おそろしいこ)とは【ピクシブ百科事典】

ラフはとんでもない物を作っていきました。見た目が悪くたいしておいしくもない水っぽいカレーです。

冷蔵庫に、いい加減使い切らなきゃならないキャベツとナスが野菜室に鎮座されていらっしゃいました。ま、適当に炒めてカレー味でもつけとけばビールのつまみにもなるかと思い始めて作業を始めたわけだ。思い付きなのでレシピなんてものはまったく見ずになんちゃってで作業を始めたのだ。「あ、そういえば豆腐も使い切らなきゃ」と思い出し、ひょっとしてカレー味の豆腐チャンプルー風のものができるんじゃないかと。さらに冷凍庫のストック野菜を調べてみると霜付けになってしまっている冷凍シメジもあるじゃないか。とにかく切り刻んだ野菜と崩した豆腐を入れて炒め始める。

そしたら、火加減が強めだったため「あぁ、このままだとキャベツが焦げそうだ」となってきて、なぜかこういう時は料理酒で何とかするラフは、怪しい目分量で少な目なはずの量をぶち込んでみたら、そのうち野菜や豆腐や冷凍シメジからも大量の水分が出てきて、なんだかスープみたいな事態になってきてしまった。でもカレー粉を使うと一度決めたラフは融通が利かないので、そこにカレー粉をぶち込む(他にも多少の調味料は加えている)。

出来上がったものは、なんだか見た目が微妙に嘔吐物に似た(崩した豆腐が大貢献)、それでいておそろしく水っぽいカレーが出来てしまった(カレーというほどのとろみもないのだが、スープカレーでは絶対にない代物)。そんなにおいしいわけではないが、なんとか食べられないこともないというカレーが鍋いっぱいにできてしまった。

体調悪いのに次々やってくる雑用仕事に翻弄される在宅勤務の一日

今日も在宅作業だったんだけれども、今日はとりわけ恐ろしく忙しかった。まず朝からおなかの調子が悪くて、1時間ごとにトイレにこもりに行くくらい腹下し状態がひどくて。

朝会(Zoom会議)もやばかったんだけれども(終わったら速攻でトイレに駆け込む)、午後には別の人と別件のZoom打ち合わせ。これも打ち合わせ直前にやっぱりトイレから出られなくて、延期してもらおうか悩んだくらい。結局やったけど。そんな状態のところにメールとかSkypeとかチャットとか電話とかでひっきりなしにいろんな人から五月雨式雑用が次々舞い込む。自分がやるべきタスクは他にもあってそっちに集中しているときに、こういう横やりが続々来られて困った。

メールとかチャットとかなら返事は後回しにできるからいいけれども、直接電話かけられると出るに出られなくて困ることこの上ない。トイレに社用スマホ持って入るのはさすがに嫌だ。ラフはトイレでは心置きなく気が済むまで落ち着きたいタイプなのだ。しかも腹下しの時って、トイレをさっと済ますことができないじゃない。幸いにして急に依頼された件はどれも比較的小物なんだけれども、急いでほしいというものが多くて(本当に急いでほしい内容か?と思うものもあったが)、トイレから出てきたら今やっている作業は中断してその雑用を優先事項に回さざるをえない。それを終えないうちに次の急用タスクが飛び込んでくる。なんとか片付いたと思ったら、すかさずトイレに駆け込む。しばらく籠らざるをえない。で、這う這うの体でデスクに戻ってきて先ほどほったらかしてしまった、本来やるべきだったタスクに戻ろうとするんだけれども、何をどこまでやっていたのかを思い出すのに今度は一苦労。「俺、何やってたんだっけ?」。で、そのタスクを始めると、すかさずまた狙いすましたかのように急用(を名乗る)タスク依頼が入って来る。

というわけで、もうトイレにラップトップを持ち込んで今日はそこで作業をしようかとも思ったりなんかもしてさ(さすがに嫌だけど)。「体調悪いから今日は休む!!」とか朝一で宣言しておけばよかったと思い至ったのは定刻前の夕方だった。あぁ、今日という日が終わっていく。

「あれ、自分が使っていたスライドオイルってこれだったっけ?」

つつがなくS吹奏楽団の練習に行ってきた。楽器(トロンボーン)を組み立てているときにちょっとした違和感を感じる。楽器を使用する前にスライドの滑りをよくするためにスライドオイルというものを使うのである。確かA社の製品からB社の製品に昨年度切り替えたつもりだったんだけれども、今日ケースの中の定位置に入っていたのはB社の製品ではなく、かつて使っていたA社の製品だった。A社のものもB社のものもどちらもそれなりに優れた製品ではあるが、たまに変えてみたくなることってあるんですよ。で、B社の製品に変えて数か月たっているはずなのに、今日定位置に入っていたのがA社製品。「あれ、自分が使っていたスライドオイルってこれだったっけ?」。多少の混乱を引き起こしつつも、まぁ機能的には大きな差はないからいいかと思いつつも使ったんだけれども、何か腑に落ちない。原因は分からないが、これまで使っていたスライドオイルが切れたから、家の在庫から出してくるときにまだ残っていたA社製品を入れたのかな?でも最近スライドオイルを交換した記憶がない。

あぁ、楽器やっていない人にはちょっとこの違和感の正体をうまく伝えられないな。たとえて言うなら、いつも一人で事に及ぶときに使っている特定のローションメーカーがあるとするよね。で、使おうと手を伸ばしたら、いつもと違う別メーカーのローションだったくらいの衝撃だったと言えば、どのくらい違和感と衝撃と困惑と気持ち悪さを抱いたかが伝わるだろうか。(かえってわかりづらい?)

そろそろ、ラフも記憶力が怪しくなってきたということなのだろうか。いや、もともとの記憶力も怪しいのだが。

夜中に台所でぼくは思い付きで料理を作りたかった

最近、生活のリズムが乱れてきていて、寝る時間がバラバラ。あまりにも眠い時は、仕事終わってさくっとごはん食べた後、19:00頃から寝てたりするんだけれども、そうすると当然のように日付変わるくらいに目が覚めたりなんかする。

本日も、日付が変わるころ、隣の部屋から卒業式の呼びかけみたいなコールがしばらく聞こえてきて(ただし成人した男女一人ずつによる)、「なんだろなぁ」と目が覚めた。そのコールはしばらくしてやんだのだが、目が覚めてしまったので、おもむろにキッチンで料理なんか始めてみた。とりあえず味付き玉子でも作ってみるかなぁと準備をしていたら、ふとあまっている冷凍野菜を片付けたいからキーマカレーでも作るかと思い付き、行動に移す。深夜に何やってんだ。しかも作っただけでなく、作ってみたから食べてみるとか午前2時に食った。

キーマカレー
深夜に作ったキーマカレー

あぁ、朝が来るなぁ。寝るか。数時間後に仕事だけど。

【困っています】コンビニにおけるマイバッグとキャッシュレス決済の相性の悪さ

レジ袋が有料になったじゃないですか。サッカー台のあるスーパーはまだいいんだけれども、困っているのがコンビニ。

商品をもってレジに行きます。「温めなくていいです、袋はいらないです」と前もって言ってから、いそいそと持ち帰り用のマイバッグを用意して(時には並んでいるときから用意はしているけど)、店員さんが会計を始めるやいなや「終わったものから詰めさせてもらいますね」と声掛けしてから、レジを通した商品をマイバッグに入れていくわけです。そしてすべて詰め終わる間際に「支払いは○○PAYで」とか言ってから、スマホをわざわざ操作して該当の○○PAYアプリを探し出して起動してバーコード出すまでの時間がまたわらわらとかかってしまい(この時点でまだ完全に商品を詰め終わっていないこと多し)、その手間取る自分の気恥ずかしさ(特に後ろに並んでいる人がいるとさらに気まずい)。なので「手間取ってしまってすみません」と店員さんに謝ったりなんかして。もちろん店員さんはマイバッグに詰めてくれることはなく、手持ち無沙汰に見守っていてくれるんだけれどもさ。この手際の悪さはやっぱり消費者側だけの問題なのかなぁ。コンビニでのマイバッグとキャッシュレス決済っておそろしく相性が悪いような気がして、その気まずさに耐えかね、最近コンビニに行くのを躊躇している。

一人でこんなかなしい思いをするのはゴメンなので、ただいま同類募集中。効率的なレジでの身のこなし方などのTipsがあればぜひ教えてほしいよ。

「朝、昼、晩、夜、汝はビールを飲むべし。然らずんば軽蔑されん」

「ノンアルコール飲料は昼間でも気兼ねなく飲むことができる」って文言を見かけたんだけれども、「普通のアルコール飲料でも俺は昼間から気兼ねなく飲むことができるぜ」と思いながら、昼間から家で一人ビールをたしなむ土曜日。

パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」的なビール小話を一つ。
“Beer is proof that God loves us and wants us to be happy.” – Franklin and the American Experiment

前広って誰やねん!!

この日記もどきを定期的に見に来てくれている人はごく限られたほぼ身内の数名なんだけれども、ネット検索結果から訪問してくださる方もまれにいらっしゃいます。ネット検索からは「ご如才なきことながら」という言葉を調べていていらっしゃる方が多いようです。

ご如才なきことながら、仕事納めさせていただきます

すみません、当サイトは言葉の定義や成り立ちを説明する学術サイトではなく、「ただ日常でこういうことがあったよ」という日常報告サイトなので、検索結果からお越しいただいた方のお役には立てていないかと思います。

さて本日は、その「ご如才なきことながら」メールをいただいた彼と、仕事の打ち合わせでチャットをしていたのですが(ラフは相変わらず在宅勤務が続いております)、締めに「間に合わなければ前広にお伝えします。」と書かれていたのです。言葉を知らないラフは「前広さん?誰それ?」とか思った次第です。

「前広」の使い方や意味、例文や類義語を徹底解説! | 「言葉の手帳」様々なジャンルの言葉や用語の意味や使い方、類義語や例文まで徹底解説します。

辞書を引いて(ネットだけど)意味を知ったわけだけれども、「『前広に』なんて使わねぇよ」と一人毒づいてみたり。普段の直接の会話ではごく普通の言葉しか使わないのに、書き言葉になると(チャットでさえ)途端に固くて日常では見かけない官僚系婉曲語彙を駆使してくる彼には一目置いてみたいものです(置くとは言わない)。中途半端なカタカナ語ビジネス用語を濫用されるよりかはこっちの方が個人的には好きだけれどもさ。自分が言うのもなんだけれども、彼はかなりの変態日本語遣いなのだという考えを新たにした昨今なのでありました。

僕はやっぱり英語ができない – 「英語圏の人は日本人のラフには想像もつかないような突拍子もない行動をとることもあるに違いない」

いやね、分かってはいるんですよ。ラフが英語を苦手としているのは、英語に触れている時間と経験が圧倒的に足りていないからなんだってことは。それでもやらないよりはましとちょっとずつでも勉強を続けているわけですよ。

さて、今日のリスニング例文では、オフィスの引っ越しをしたらしいんだけれども大切な書類の入った箱が見つからなくて同僚に聞いたら「見かけてない」との話。で、その同僚が次のように続けたわけさ。

Maybe you should call the moving company and have them check their truck.

「and」がろくに聞き取れていないので、「ウニョウニョウニョウニョ~」とどこで切れるのかわからない英文が流れる間「何をおっしゃっているのかしら?」と耐えているだけのラフ。短文なら聞き取れることが多い「call」も「コゥ?cow?牛?」とか思っていたりする。shouldの後に来るのは動詞の原形と知識ではわかっていても、ラフの頭の中ではすでに「牛をすべきってどういうこと?」とか考えだしている。日本人のラフには理解が及ばないだけで、英語圏の人はなんか知らんけどきっと「牛をする」ってことがあるんだろう。「へい彼女、ちょっと俺と牛しない?」とか。「the moving comapny?(ハウルの)動く会社?」。そのあとに続いている「and」より後の「ウニョウニョ」は次の単語の羅列「half then check there track」だった(音がそれっぽく拾えているところは前よりも進歩か?)。文法的にまったく文章になっていないのでさらに混乱を極めたことは言うまでもない。これがラフのリスニング能力の現状だ(文法力を実際の英文で生かしておそらくこうだったのでは?と捉え直すなんてことはまったくできていない)。

一方、リーディングの例文では、職の応募要項で次のような項目があったわけさ。

You should also include the contact details of a representative at each of your last three employers who can attest to your suitability for this work.

海外(主にアメリカ)ドラマとか映画で、転職の際には前雇用者の紹介状が必要だったり、人事担当者が応募者の前職場への人物照会とかやっているのをよく見かけるけれども、あれのためねと結びついたのは後からである。最初はいい加減に単語の羅列として読んでいたので(というか眺めていただけ<ちゃんと読め)、「contact」を「contract」と見間違え、さらに「attest」を「arrest」と見間違えた。その結果ラフの頭の中には「応募者を拘束する過去の雇用者との契約?拘束というのはお縄になった?縄で縛るとか?SMプレイ(性風俗)か?その詳細な雇用契約書が必要?悪趣味な雇用募集広告だなぁ」と突拍子もないことを考えていたのだ。最初っから文構造を押さえて意味を取ることを放棄して、単語(しかも見間違えている)の羅列でイメージを作っているのだ。

間違った解釈で間違ったイメージを抱いても、「英語圏の人は日本人のラフには想像もつかないような突拍子もない行動をとることもあるに違いない。まぁ文化の違いってやつだよね。」と勝手に対処してしまうことが多いのだ。でも同じ人間なんだしそんな奇天烈なことはそうそうありえないということを平気で忘れている。ましてや簡単な日常ビジネスコミュニケーションの話なんだから。

読了:ラッシュライフ(新潮文庫 新潮文庫)[伊坂 幸太郎]

ラッシュライフ

ラッシュライフ

  • 作者:伊坂 幸太郎
  • 出版社:新潮社
  • 発売日: 2005年05月

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場ー。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

 エンターテイメント小説としては今は池井戸潤のほうが人気あるのかな。でも、ラフはビジネスエンターテイメント小説にはどうも食指が動かない。読めばきっと面白いんだろうけれども。また百田尚樹のビジネス英雄譚みたいな伝記っぽいものもあまり好まない。そうなのだ、ビジネスというものに根本的に興味がないのだ。

 なので、若干ファンタジー色が強いものの一般の市井人が主役で日常を苦悩しながらも生きていく、そしてちょっとした事件に巻き込まれて奇想天外な展開をしていくが、人生を生きることに絶望しない伊坂幸太郎の小説は好きなのだ。伊坂幸太郎が仙台在住なので仙台を舞台にした作品も多く、本作も主に仙台市街で話が展開される(仙台駅や市街の通り名やアーケードのある商店街の位置関係などを知っていると面白く読めるかも。ドラマなんかでこのシーンは東京のあそこだ!とかわかるとうれしいみたいな感じ?)。

 並走する4つの物語と書いてあるけれども、ちょっと弱めのもう1つのグループがあって全体で5つの話が並行して進んでいく。駅前に新たにオープンしたカフェや、展望台のある駅前ビルで開催されているエッシャー展、駅近くで道行く人に好きな日本語の調査をしている外国人などどの話にも出てくるガジェットがあって、それぞれの話が並行して進行していることを示唆する。正直言うと常識的にはあり得ない設定もちらほら出てくるけれども、そこは伊坂幸太郎の絶妙なファンタジー描写で「まぁそういうことでいいか」と流せる。とりわけ、軽妙洒脱でさりげない教養溢れる会話は伊坂幸太郎ならではで楽しめる。そして各話で出てくるエピソードや小道具がそれぞれほかのエピソードにも登場してきたりすることで、だんだんと話が整理集約されていく。それぞれのエピソードは独立しているけれども完全に別個ではない。しかも読者がちりばめられた仕掛けをパズルのように組み立てていく過程でわかってくるのは、各エピソードが実は同じ時刻に同時進行しているのではなかったということ。各グループの出来事は日が一日ずつずれていたのだ。

「人生がリレーだったらいいと思わないかい?」
「リレー?」
「私の好きだった絵にそういうものがあってね。『つなぐ』という題名だった。それを観て思ったんだ。一生のうち一日だけが自分の担当で、その日は自分が主役になる。そうして翌日には、別の人間が主役を務める。そうだったら愉快だな、と」
「そうだとしたら、お前の出番はいつだよ」
 佐々岡はあまり考えなかった。「昨日だよ。君と久しぶりに会えて楽しかった。昨日は私が、私たちが主役だった」
「子供じみた考えだな」
「昨日は私たちが主役で、今日は私の妻が主役。その次は別の人間が主役。そんなふうに繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように続いていけばいいと思わないか? 人生は一瞬だが、永遠に続く」
「人の一日なんてどれも似たり寄ったりだよ。俺たちの昨日も、おまえのカミさんの今日も、別の人間の明日だって、重ねて一度に眺めてみればどれも一緒に見えるさ」
「そんなことはない」と佐々岡は笑った。

 そうか、この物語の仕掛けはこれだったんだね(ネタばれゴメン)というわけ。これは市井の人への人生賛歌だな(登場人物はことごとくとんでもないことに巻き込まれたりやっていたりするけれども)。こういうところが伊坂幸太郎のエンターテイメントの気持ちいいところなんだよね。

「私には賭けるものなんてない」
「もし金庫があったら、俺のアドバイスを聞けよ」
「アドバイス?」
「泥棒なんていう孤独な仕事を続けているとな、誰も自分の言うことを聞いてくれない事実に愕然とするんだ。人は誰かに忠告されたい。同時に誰かにアドバイスしたいと思っている。そういうものだ」
「そういうものかい?」
「誰だって人生のアマチュアだからな。他人に無責任なアドバイスをしてだ、ちょっとは先輩面したいんだ」

ラッシュライフ(新潮文庫 新潮文庫)[伊坂 幸太郎]
ラッシュライフ[伊坂幸太郎]【電子書籍】