読了:日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]



 東京に戻ってくる新幹線の中で読んだ一冊。前から読みたいと思っていたんだけれども、確かに面白かった。もともとは理系向けの専門雑誌に掲載されていた記事。日本人の書く英語論文の添削をしてきた著者の経験から、日本人の奇妙な英語がなぜ生まれるのか、ネイティブはどういう発想をしているのかについて具体的な例文(これがまたもとの掲載が掲載だけに論文系の堅い例文)をあげながら解説される。主に冠詞や前置詞、副詞などの細かい語のレベルの話が本書の大半を占めているが、語の選択を誤ると論の展開もおかしくなる点は納得。でもまぁ、新書なので、これを読んだから自然な英文が書けるようになる指南書とかは期待できない。こういうことがあるよ、こういうところに気を付けるといいんだよというエッセイ程度で読むのが吉か。著者も言うように、自然な英語に習熟するには「読んで、読んで、読んで」「書いて、書いて、書いて」いくしかないのだ。今年はちゃんと英語勉強しようかな(抱負として宣言できないところが弱い)。

日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]

病気名外来語は難しい

 海外に住むと困るのは病院らしい。症状を伝えるのも難しいらしいが、問診表も書くよりも前に何が問われているのかさえ分からないとか。

そういえば中学の英語の教科書に、盲腸で入院している友達を見舞うシチュエーションがあった。盲腸というか虫垂炎はappendicitis(アペンディサイティス)なのだが、中学英語にしてはかなり難易度の高い単語だよね。でもまぁ、中学生あたりが日常の当たり障りのない病気で入院するとなると、虫垂炎くらいが適当なのだろうな。ガンで入院とか重すぎるし(でもcancerは習ったような気がするのはなんでだろう)。ちなみにappendicitisとappendix(付録とか付記とかで本とか書類の最後についていることが多い)が同じ語源だということに気づいたのはつい最近。

コアなユーミンファンにとっては「ミエロジェーナスロイケミア」(Myelogenous Leukemia)というものは常識であろう(歌詞に出てくる)。ちなみにこれはドイツ語で骨髄性白血病。

読了:量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために【電子書籍】[ 片山泰久 ]



20世紀に発展した科学分野の一つが量子力学。その入門書。量子力学とは何かを数字や式を使わずに概要を紹介する良書。著者は1978年没で本書は1967年刊行なのでもう50年前の本だ。実際本書では素粒子という概念の登場あたりで終わっており、量子力学の新しい知見は当時より格段に広がっている。量子力学が20世紀に広がったとはいえ、それまでにも知られていた現象を説明できるようになり、さらに新しい見方ができるようになったということを踏まえて、量子力学を通して科学の意義を問う姿勢は非常に共感できる。

量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために【電子書籍】[ 片山泰久 ]

分子進化の中立説

 ラフが専攻していた分野は「分子遺伝学」なのである。そういう影響もあって、自分の進化論の考え方の核としているものは、木村資生先生の提唱した「分子進化の中立説」である。中立説はダーウィンの進化論(いわゆる自然選択説)を否定する理論かのように書かれているサイトなんかもあるけれども、自分の理解では対立する考え方ではない。

wikipediaの「中立進化説」の項

AI幻想

 Amazonのドラマ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」で、日本のIT企業が主催するクラシックコンサートでAIロボットが登場する。このAIロボットはモーツァルトの全ての曲をインプットされており、モーツァルトのごとく発想できるという設定。コンサートでは、2つの演目が用意されており、1つ目はこのロボットが「フィガロの結婚」序曲の指揮を振り(オーケストラメンバーは人間)、2つ目はモーツァルトが途中で死んでしまったために未完となった「レクイエム」の続きをこのAIロボットが作曲したのでそれを初演する(指揮は主人公であるプロの指揮者)。で、モーツァルトを敬愛する主人公の指揮者はこのAIロボットに反発するわけだが……。

 主人公は「そんなにAI化したいのなら聴衆もAIにすればいい」なんてことも言っており、これにはとても共感した。芸術においては提供(サービス)する側=作者(奏者)という関係を想定するから、AIは作家の代わりということを真っ先に思い浮かべがちだけれども、受け手がAIだっていいわけだよ。AIが人間のように考えるのであれば、人間のように感じることもAIの目指す目標ととらえることも可能であり、そうであるなら聴衆のAI化を考えたっていいわけだよ。AI聴衆?アマチュア作曲家、アマチュア指揮者、アマチュア演奏家の中には、人間のように感じてくれて評価してくれるならそういう存在を欲する人もいるんじゃないかとか思ったり思わなかったり。案外需要があったりしてね(ラフはそういうのいやだけれども)。

右手

 ローマ字入力で「項目の実行順序」と入力したい場合、右手ばっかり使う。

Rは「右手の法則」あるいは「右ねじの法則」と言われているものを「右手こいこいの法則」という。「右手こいこいの法則」と唱えながら、右手で親指を立てたネコの手を作って、クイックイッと手招きする感じの動きをするのだがとてもかわいい。

読了:遺伝子ー親密なる人類史ー 【電子書籍】[ シッダールタ ムカジー ]



 全編にわたり何度か登場する著者の家族のエピソードが、実は身近な遺伝子という思いを強くする。

 上巻は、19世紀後半ダーウィンの進化論とメンデルの実験から始まって、現在の遺伝子組み換え技術に至る、遺伝子の正体を明らかにしていく生物史。高校生物~大学教養生物で習う内容だけれどもエキサイティングな読み物としてとてもまとまっていて非常に面白い。上巻だけでも読む価値十分にあり。

 下巻は人類遺伝学(ヒトゲノムプロジェクト、遺伝子治療、遺伝子診断)の話題。実際の例をいくつか、どんな患者がどんな経緯でどんな治療を受けて、それにかかわる科学者や医者がどうなったか臨場感あふれる筆致で具体的に描かれていて、すごく面白い。遺伝子組み換えからゲノム編集に向かう中で科学的側面だけでなく、倫理面を含めた社会的側面も無視できなくなってくる現状と未来。

 日本語訳はとても正確でそのうえ丁寧で好感が持てるが、まれに??な訳(語彙レベル)あり。

遺伝子ー親密なる人類史ー 上【電子書籍】[ シッダールタ ムカジー ]
遺伝子ー親密なる人類史ー 下【電子書籍】[ シッダールタ ムカジー ]

右見る阿呆に左見る馬鹿

 たまには、世間の動きにおもねった話題をとりあげるのもよかろう。サッカーのワールドカップとやらが繰り広げられている次第。今朝もというか、午前0時から日本の試合があったらしいが、見てはいない。日曜日の夜遅くだというのに視聴率が3割超えていただと?おぉ、お祭りなんだなぁ。まぁ、それはいい。今日、月曜日。仕事を休んだ人は、その理由が何にせよ、サッカーの応援をがんばった人(かもしれない)認定は免れまい。(と、サッカーそれ自体の話題は取り上げないのはいかんせん自分の興味のなさゆえ)

そういうわけで、個人的にはこっちのニュースの方が今日の注目であるよ。画像きれいだよ。

読了:ゲノムが語る人類全史 [ アダム・ラザフォード ]



ヒトゲノム計画とか一時期流行っていたけれども、じゃ今結局何がどうなったの?ってところをヒト遺伝学を中心に述べたサイエンス啓蒙書。DNAに書かれている情報が全部わかったからと言って、克服された病はまだ一つもないという事実とか、犯罪者遺伝子が判ったとかいう荒唐無稽なことはありえないとか、ゲノム計画で神が意図したもうた計画をお手軽にくみ取れるようになったはずなんて思っていた人には残念な報告かもね。じゃゲノム計画は無駄だったのかというと、全然そんなことはない。分かったことだっていっぱいあって世間に還元されているんだよ。作者がイギリス人ということもあってヨーロッパの話題がダントツに多いのはご愛敬。ポストゲノム時代において適切なサイエンスリテラシーを身に着ける必要があるという警鐘が一番ためになったかも。また脚注が作者の人柄を反映していてすごく面白い。とくにスパイダーマンの下りはニヤッとした。

ゲノムが語る人類全史 [ アダム・ラザフォード ]

読了:フェルマーの最終定理 (新潮文庫) [ サイモン・シン ]



一時期大ブレークした数学ノンフィクションをようやく読んだよ。数論の出来はじめから、フェルマーの予想(彼自身は証明したと言っているが、紙面が足りなくてここには書けないとだけ走り書きを残している)、350年にわたる証明へのチャレンジの歴史、数学者ワイルズによる証明の道のり、そしてフェルマーの最終定理証明後に残されたものは?。モジュラーあたりから証明の詳しいところは分からなくなったけれども、背理法、帰納法といったことさえわかっていれば大筋を見失うこともなく読み進めていける。数学上の証明ってこんなに厳しいものなんだなぁと思うものの、それでもチャレンジせずにはいられないってところが人の人たる所以でもあるんだなぁ。そして多くの日本人数学者の業績もワイルズの証明に寄与してるんだなぁとか思いながら一気に読んだ。

wikipediaの「フェルマーの最終定理」の項

フェルマーの最終定理 (新潮文庫) [ サイモン・シン ]