読了:AI vs.教科書が読めない子どもたち [ 新井 紀子 ]



AIに東大入試を合格させる「東ロボくん」プロジェクトの責任者による話題の著書。現時点でのAIの実態を説明する科学記事の前半と、それをうけてAIによって仕事を奪われるという危惧を理解するための教育調査報告とその対策展望の後半よりなる。

「東ロボくん」プロジェクトの経験からAIに得意なこと、不得意なことを説明していく。AIはコンピュータである限り数学のロジックに直さなければ利用できないこと、入試問題で高得点を取ることができるようになってはきたが、フレームワーク問題が存在すること(チェスのAIはチェスのことしか解決できない)や、入試問題そのものやAIが導き出したその解答の意味をAI自身は理解しているわけではないこと(統計的に処理して作り出したものでしかない)などが説明される。

後半では、じゃAIが得意なことや苦手なことを、人間はどれくらい対応できているのか?というテストをしたところ、なんと簡単な理論文の読解さえできない層が存在することが明らかになった。教育がまずは目指さなければならないことは、最低限「教科書に書かれていることを読めばわかる」ことであるという。これができないと、単なる統計処理しかできないAIと能力の差別化が図れず、AIによって仕事を奪われることになるだろうという。

ラフはAIに関しては、割と楽観しているのでAIに仕事を奪われて仕事がなくなるということは、まぁ当分(ここ数十年くらい)心配する必要はないんじゃないの?とは思っている。シンギュラリティの到来に関しても、今のAIの設計を根本的に変えるような革新的思考や技術が生まれない限りは、来ないだろうなぁと考えている。

AI vs.教科書が読めない子どもたち [ 新井 紀子 ]

読了:ファンタジーランド 【合本版】狂気と幻想のアメリカ500年史【電子書籍】[ カートアンダーセン ]



今、とても話題になっている書籍。事実よりも、自分が望む幻想を真実として信じ込む現代アメリカ人の特質を、その建国からの歴史とともに、主に宗教の変遷を軸に描いた作品。「フェイクニュース」とか「オルタナティブ・ファクト」なんて言葉が一般に使われるようになる今日の現象は、アメリカの建国以来の歴史を振り返ってみればさもありなんということか。世界で一番キリスト教的な国アメリカはいかにして生まれて形成されたのか。

歴史上初の、プロテスタントによる実験国家としてはじまったアメリカ。何を信じるか、何をするかを自分自身で決められる個人主義国。なんでもショービジネス化(宗教でさえも)し、発達したエンターテイメントメディアで拡散することにより、自分の好きなことを好きなようにとらえるファンタジーランドと化していくアメリカの歴史。一方で建国の父たちに代表される啓蒙主義、合理主義を尊重したきた国でもある。この両者を危うくなることはあってもバランスをとってきたのがアメリカという国なのだが、1960年以降、自分が信じているものに反することは真実ではないとする風潮に大きく傾いていく。良識を権威ととらえ、それを嫌うアメリカ人の気質が、極端な空想や陰謀論、疑似科学をますます受け入れていく。

「歴史は繰り返さないが韻を踏む」。現在の偏りが再びバランスを戻すこともあるかもしれない。しかし、それを待っている時間はない。ファンタジーランドの住民であってもよいが、その人が信じているものが人に危害を加えるようなものとなってしまうものであってはならない(ワクチン接種が自閉症を起こすと信じて子供のワクチン接種を拒否するなど。これは公衆衛生的に害をなす)。

ラフは、創造論(インテリジェント・デザインを含む)、進化論の対立のくだりはとてもおもしろく読んだ。こんなことが大真面目に裁判沙汰になるアメリカってクレイジーだなとは前々から思っていたけれども、この本を読んで、なるほどそういうバックグランドがあるなら、科学も宗教も考え方(一つとしての意見=その人にとっての真実)なんだから、創造論を本気で信じちゃっている人がいるってそういうことなんだなと思ったり思わなかったり。

ファンタジーランド 【合本版】狂気と幻想のアメリカ500年史【電子書籍】[ カートアンダーセン ]

2001年宇宙の旅

古い映画を見たいと思って、通してじっくりと見たことのない「2001年 宇宙の旅」を見ることにした。ほぼ説明・セリフなしのこの作品をこの時間(2時間半)、家のモニターで見るのはつらいかも。これはスクリーンで見ないと面白くない作品だね。

HAL9000のHALとはIBMをアルファベット順で1文字ずつずらしたものだ(シーザー暗号)という話を昔聞いたなぁ。出所は覚えてないけど。

HALが誕生した日付は作中でも述べられているが、じゃタイトルの2001年とは作中ではどのシーンなのか?月のシーンから木星探査に向かうシーンの間には18か月が経過しているというし。スターチャイルドの誕生した時?(いや、2001年というのが特定の年を指すものではなく、近未来というもの(21世紀)を表現したものだということは分かってはいるよ)

wikipediaの「2001年宇宙の旅」の項

読了:ハロー・ワールド [ 藤井 太洋 ]



「IT系の開発者にとってアマゾンは通信販売の会社ではない。」

インターネットの自由を良心的に信奉する一人のIT技術者が、仲間とともにインターナショナルに(主にアジア圏)活躍するIT小説。これ、IT技術者以外の人が読んでわかるんだろうか?語の簡単な説明はあるけれども、結構難しいぞ。今流行りのGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)をはじめとしてTwitterとかドローンとかはともかく、リポジトリの考え方とか仮想通貨(というかブロックチェーン)の技術的な知識がない読者は面白がれるのだろうか?IT技術をネタにしたエンターテイメント。自分は結構面白く読んだけれども。

ハロー・ワールド [ 藤井 太洋 ]

読了:日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]



 東京に戻ってくる新幹線の中で読んだ一冊。前から読みたいと思っていたんだけれども、確かに面白かった。もともとは理系向けの専門雑誌に掲載されていた記事。日本人の書く英語論文の添削をしてきた著者の経験から、日本人の奇妙な英語がなぜ生まれるのか、ネイティブはどういう発想をしているのかについて具体的な例文(これがまたもとの掲載が掲載だけに論文系の堅い例文)をあげながら解説される。主に冠詞や前置詞、副詞などの細かい語のレベルの話が本書の大半を占めているが、語の選択を誤ると論の展開もおかしくなる点は納得。でもまぁ、新書なので、これを読んだから自然な英文が書けるようになる指南書とかは期待できない。こういうことがあるよ、こういうところに気を付けるといいんだよというエッセイ程度で読むのが吉か。著者も言うように、自然な英語に習熟するには「読んで、読んで、読んで」「書いて、書いて、書いて」いくしかないのだ。今年はちゃんと英語勉強しようかな(抱負として宣言できないところが弱い)。

日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]

病気名外来語は難しい

 海外に住むと困るのは病院らしい。症状を伝えるのも難しいらしいが、問診表も書くよりも前に何が問われているのかさえ分からないとか。

そういえば中学の英語の教科書に、盲腸で入院している友達を見舞うシチュエーションがあった。盲腸というか虫垂炎はappendicitis(アペンディサイティス)なのだが、中学英語にしてはかなり難易度の高い単語だよね。でもまぁ、中学生あたりが日常の当たり障りのない病気で入院するとなると、虫垂炎くらいが適当なのだろうな。ガンで入院とか重すぎるし(でもcancerは習ったような気がするのはなんでだろう)。ちなみにappendicitisとappendix(付録とか付記とかで本とか書類の最後についていることが多い)が同じ語源だということに気づいたのはつい最近。

コアなユーミンファンにとっては「ミエロジェーナスロイケミア」(Myelogenous Leukemia)というものは常識であろう(歌詞に出てくる)。ちなみにこれはドイツ語で骨髄性白血病。

読了:量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために【電子書籍】[ 片山泰久 ]



20世紀に発展した科学分野の一つが量子力学。その入門書。量子力学とは何かを数字や式を使わずに概要を紹介する良書。著者は1978年没で本書は1967年刊行なのでもう50年前の本だ。実際本書では素粒子という概念の登場あたりで終わっており、量子力学の新しい知見は当時より格段に広がっている。量子力学が20世紀に広がったとはいえ、それまでにも知られていた現象を説明できるようになり、さらに新しい見方ができるようになったということを踏まえて、量子力学を通して科学の意義を問う姿勢は非常に共感できる。

量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために【電子書籍】[ 片山泰久 ]

分子進化の中立説

 ラフが専攻していた分野は「分子遺伝学」なのである。そういう影響もあって、自分の進化論の考え方の核としているものは、木村資生先生の提唱した「分子進化の中立説」である。中立説はダーウィンの進化論(いわゆる自然選択説)を否定する理論かのように書かれているサイトなんかもあるけれども、自分の理解では対立する考え方ではない。

wikipediaの「中立進化説」の項

AI幻想

 Amazonのドラマ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」で、日本のIT企業が主催するクラシックコンサートでAIロボットが登場する。このAIロボットはモーツァルトの全ての曲をインプットされており、モーツァルトのごとく発想できるという設定。コンサートでは、2つの演目が用意されており、1つ目はこのロボットが「フィガロの結婚」序曲の指揮を振り(オーケストラメンバーは人間)、2つ目はモーツァルトが途中で死んでしまったために未完となった「レクイエム」の続きをこのAIロボットが作曲したのでそれを初演する(指揮は主人公であるプロの指揮者)。で、モーツァルトを敬愛する主人公の指揮者はこのAIロボットに反発するわけだが……。

 主人公は「そんなにAI化したいのなら聴衆もAIにすればいい」なんてことも言っており、これにはとても共感した。芸術においては提供(サービス)する側=作者(奏者)という関係を想定するから、AIは作家の代わりということを真っ先に思い浮かべがちだけれども、受け手がAIだっていいわけだよ。AIが人間のように考えるのであれば、人間のように感じることもAIの目指す目標ととらえることも可能であり、そうであるなら聴衆のAI化を考えたっていいわけだよ。AI聴衆?アマチュア作曲家、アマチュア指揮者、アマチュア演奏家の中には、人間のように感じてくれて評価してくれるならそういう存在を欲する人もいるんじゃないかとか思ったり思わなかったり。案外需要があったりしてね(ラフはそういうのいやだけれども)。

右手

 ローマ字入力で「項目の実行順序」と入力したい場合、右手ばっかり使う。

Rは「右手の法則」あるいは「右ねじの法則」と言われているものを「右手こいこいの法則」という。「右手こいこいの法則」と唱えながら、右手で親指を立てたネコの手を作って、クイックイッと手招きする感じの動きをするのだがとてもかわいい。