前広って誰やねん!!

この日記もどきを定期的に見に来てくれている人はごく限られたほぼ身内の数名なんだけれども、ネット検索結果から訪問してくださる方もまれにいらっしゃいます。ネット検索からは「ご如才なきことながら」という言葉を調べていていらっしゃる方が多いようです。

ご如才なきことながら、仕事納めさせていただきます

すみません、当サイトは言葉の定義や成り立ちを説明する学術サイトではなく、「ただ日常でこういうことがあったよ」という日常報告サイトなので、検索結果からお越しいただいた方のお役には立てていないかと思います。

さて本日は、その「ご如才なきことながら」メールをいただいた彼と、仕事の打ち合わせでチャットをしていたのですが(ラフは相変わらず在宅勤務が続いております)、締めに「間に合わなければ前広にお伝えします。」と書かれていたのです。言葉を知らないラフは「前広さん?誰それ?」とか思った次第です。

「前広」の使い方や意味、例文や類義語を徹底解説! | 「言葉の手帳」様々なジャンルの言葉や用語の意味や使い方、類義語や例文まで徹底解説します。

辞書を引いて(ネットだけど)意味を知ったわけだけれども、「『前広に』なんて使わねぇよ」と一人毒づいてみたり。普段の直接の会話ではごく普通の言葉しか使わないのに、書き言葉になると(チャットでさえ)途端に固くて日常では見かけない官僚系婉曲語彙を駆使してくる彼には一目置いてみたいものです(置くとは言わない)。中途半端なカタカナ語ビジネス用語を濫用されるよりかはこっちの方が個人的には好きだけれどもさ。自分が言うのもなんだけれども、彼はかなりの変態日本語遣いなのだという考えを新たにした昨今なのでありました。

「社長は課長だったんです!!」

S吹奏楽団の仲間と親睦飲み会の席で、ある女性が突然次のようにのたまった

「聞いてください!!うちの社長は課長だったんです!!」

その場にいた全員、彼女が口にした日本語の意味が取れずに「この女はいったい何を言いだしたんだ?」。

彼女はさる非営利系の団体に勤めているのであるが、その団体は各センターみたいなものをいくつか持っている。彼女は、その中の1つで働いている。そして彼女が属しているセンターみたいな所の一番偉い人のことを彼女は「社長」と呼んでいるのである(会社ではない非営利系団体の中のいくつかあるセンターのトップなのだから、「社長」ではなく「センター長」とか「所長」だろうとか思うのだが、彼女にとっては「社長」らしい)。そしてその「社長」の指示の出し方や仕事のやり方が、彼女の合理的精神とは相容れないようで、これまでにも「社長」について、よく愚痴をこぼしていたのである(愚痴をこぼすだけでなく、職場でも直接「社長」本人にダメ出しをしているらしい)。

おそらく、彼女の発言に出てきた「社長」というのはその「社長」のことであろうことは理解した。でも「社長が課長だった」とはどういう意味だ?

よくよく聞いてみたところ、彼女が「社長」と呼んでいる人が、非営利系団体全体の中では「課長」相当の役職だったということらしいのだ。いつも「社長」と呼んでいた人が実はそういう立場の人だったことに彼女が勝手に驚いただけなのだが、それが上述の突拍子もない日本語となったわけであった。(そして同じセンターに彼女が言うところの「副社長」という人もいるのだが、その人は「係長」相当だったらしい)

仕事の合理化は結構だが(実際彼女は仕事ができる)、彼女が口にする独りよがりな合理化された日本語発言はちょくちょく必要な要素が足りていなくて結構おかしい。まぁそこが彼女が皆から愛されている理由の1つではあるのだが。

読了:なんで僕に聞くんだろう。[幡野広志]

なんで僕に聞くんだろう。

なんで僕に聞くんだろう。

  • 作者:幡野広志
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2020年02月

ガンになった写真家になぜかみんな、人生相談をした。恋の悩み、病気の悩み、人生の悩み。どんな悩みを抱える人でも、きっと背中を押してもらえる。webメディア・cakes史上最も読まれた連載の書籍化!!37コラムを選び、加筆修正。

「先の長くない友人のためにも、子供を産みたい」のウソ/批判と批難はまったく違う。批難の底にあるもの/コミュニケーション能力とはなにか/ファイティングポーズをとらないで勝ち得る恋愛など、ない/夢や目標を叶えられなかった人ほど「おまえには無理だ」という/ジャイアンが嫌い、ジャイアンのお母さんはもっと嫌い/「周囲の理解が必要」でも、すべて耐えなきゃいけないわけじゃない/ガン患者になんと声をかければいいか?/それは娘さんが非行にはしったのではなく、あなたの非行です/人が生きる理由〔ほか〕

著者は1983年生まれだから今37歳かな。34歳の時に多発性骨髄腫で余命3年の宣告を受けた写真家・狩猟家。ガンであることを公表するとSNSで悩み相談をしてくる人が現れ、読者相談人気コラム連載を持つようになり、それを書籍化したものが本書。いわゆる人生相談本。この著者のすごいところは、書きっぷりに悲壮感が全くないということ。そして嫌味のないユーモアにもあふれていること。そして言いたいことを言うんだけれども、説教臭さや道徳的な考えや世間体からの指摘は一切しない(むしろ「そんなの自分はする気はないし、相手も僕に相談するくらいだから望んでいないだろう」という感じ)。

著者の返答の基準はわりとしっかりとして揺らぎがない。人生における優先順位がはっきりとしている。まず自分、そして自分の息子(2歳。何よりも今後の世界を自分または妻よりも長く生きていくのだ)と愛する妻。自分や妻の親族に対しても、こういうことをしてくる彼らは自分の人生には不要で余計なおせっかいなので嫌いとはっきり書いている。

ぼくが守るべきものは彼の人生ではなく、ぼくの人生です。

だから相談者の相談内容もきっちりと読み込んだうえで、そこに偽善のにおいをかぎ取ればちゃんと指摘する。あなた(相談者)が優先すべきことは他人の思いではないと。そしてまた、自分の都合の良い解釈をしてしまっていることに気づいていないのであればそのこともきっちりと指摘する。そもそもが、相談者の悩みのほとんどは人間関係。人間関係であれば、身近な人に相談して自分で対処するしかないように思うが、人というのはそういうしがらみを知らないだろう人に相談しがちなのだ(知らないからこそ慰めてもらえると思っているような相談だってあるくらいだが、そういうところも著者は相談文面から読み取ってその甘さをきちんと指摘する)。そういうわけで「なんで僕に聞くんだろう。」なのだ。

「なんで僕に聞くんだろう。」というタイトルどおり、ぼくはいつもこの疑問の壁にぶつかっている。相談がくることに不満があるわけじゃない、人間関係がすでに構築された身近な人が親身になって相談にのってあげたほうが、ぼくよりも適任だと考えているからだ。

著者は自分が特別にできた人間だとはまったく思っていないが、相談されたからには(他人からであろうが)、息子から将来同じようなことを問われたとしたら、どう答えるだろうかという基準で返信している。どんな辛辣なことを書いても、そこにはやはり愛がある。これがこの人生相談が大人気になっている理由なのであろう。

幡野広志|note

なんで僕に聞くんだろう。[幡野広志]
なんで僕に聞くんだろう。[幡野広志]【電子書籍】

僕はやっぱり英語ができない – [a-z]*venue

venue(会場)とavenue(通り)とrevenue(収益:費用を引く前の収入のことらしい。収益から費用を引いたものが利益profitとか言われても……)が綴りが似ていて嫌。avenueはまだ耳目に触れるのでいいけど、venueとrevenueは出会うたびにいつも迷いが生じる(英語のできる人にとっては全然違うんじゃんかと突っ込むのだろうが)。venueはplaceじゃダメなのか?とか思う。revenueなんて日本語でさえビジネス関係の話題でもないと使わんぞ。社会人として経営会計の基本くらいは知っておくべきなんだろうけれども、ラフはその方面ではポンコツなので実務の言葉は(日本語であっても)ひどく苦手なのだ。

「annual revenue」とか出てきても、「(神社とかの)例大祭会場?」とか思っているうちに「何言ってんだ?」状態に陥っている。(年収とか歳入の意味だってさ)

venueの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
avenueの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
revenueの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

読了:日本人の英語(続)(岩波新書)[マーク・ピーターセン]

アメリカ人は日本人をthe Japaneseというのに、自分たちをthe Americansといわず、Americansというのはなぜだろう。「読めるけれど書けない」とよく言われる日本人の英語だが、どこまで的確に読み取っているのだろう。楽しい文例と徹底比較を通じて英語の新しい世界を広げてくれる、ベストセラー『日本人の英語』の待望の続編。

1 小指に結んだ赤い糸/2 ここはカンザスじゃないみたいよ/3 花椿と赤いねこ車/4 ぼつぼつ寝ませんか/5 心の揺れから生まれる言葉/6 ことばの情景

前作では日本人の書く英語論文を添削する英語ネイティブの経験から感じたことの小論が中心だった。

読了:日本人の英語 (岩波新書) [ マーク・ピーターセン ]

今作は、書く方は前作で述べたから、じゃ今回は読む方。日本人がネイティブの使う英語のニュアンスをどこまでくみ取れているかということを取り上げていく軽めのエッセイ集(なので前作よりはるかに親しみやすく読みやすい)。いわゆる英文法の教科書には書いていないところまで踏み込んだ、冠詞の使い方に始まり、ゲルマン系の短い動詞と前置詞や副詞を組み合わせた多様な表現の使い分けなど、事細かに英語ネイティブの感覚を説明していく。大切なのは文脈でどういう使い分けがされるのかという点なのだ。日本人がさっと読み流してしまう英文であっても、英語ネイティブはそこでどういった印象を受け取っているのかなどおもしろい。日本人の英語理解だけでなく、反対に英語ネイティブが日本語に対してどう感じているのかなども、英語から日本語、また日本語から英語への、映画の字幕訳や文学作品の訳の違いなどから例を挙げて具体的に説明が供される。言語にはそれぞれのネイティブの文化が根差していることがわかる。

川端康成の「山の音」の作品で限られた範囲に登場する各登場人物がそれぞれに使う複数ある「やさしい」という言葉(日本語ネイティブなら同じ単語だけれどもシチュエーションによって意味しているニュアンスがちょっとずつ違うことは感じ取れるし、場合によっては同じ言葉だけれども意味をあえてずらして解釈しておかしみを出す効果などもある)を、ある著名な英語訳ではどのように訳し分けているのか。一方で日本語では「分からないわ」と「知らないわ」では受ける印象が違うが、英語ではどちらも「I don’t know.」が普通だ(そうはいっても文脈からその違いは英語ネイティブだってちゃんと捉えている)。

日本語と同じように冠詞のないスラブ系ネイティブの英語初心者は冠詞を抜かして「I read book yesterday.」とか言いがちだそうだが、それだと英語ネイティブにとっては「どの本だよ」と突っ込むわけだし、一方で冠詞のルールが厳密なフランス語ネイティブだと「I play the tennis.」とか言いがちなんだって。それはもうそれぞれの言語(ひいては文化)の違いがあるのだから、そういうことが起こるのは仕方のないことで初学者のうちは間違えて当然なもんだと。でも、どの言語であれその言語を学ぶのであれば、きちんと意図を感じとって伝えることのできるようにしたいものだ。というわけで結論は前作と同じで、自然な英語に習熟するためには興味のある分野でいいから徹底して多くの実例にあたって学んでいくしかないよと。

それにしても、この著者の日本語の能力はすごい。自身の日本語の能力を謙遜してはいるのだが、一般生活者としての日本人でさえそんな細かい違いまできちんと認識していないぞ(場合によっては日本人なのに日本語に不自由だったりする人だっているぞ)というようなことまで、誤解のないように丁寧でしっかりとした日本語を駆使して日本人相手に日本語の文章で説明するのだから舌を巻く。

日本人の英語(続)(岩波新書)[マーク・ピーターセン]
続 日本人の英語(日本人の英語)[マーク・ピーターセン]【電子書籍】

技術用語としての「レガシー」と「枯れた」もの

 東京オリンピックは延期されましたが、競技場だのなんだのを作る口実として盛んに「レガシー」という言葉が使われておりましたね。次の世代、未来へ残すに値する将来も活用できる「遺産」としての建造物を作ろうという狙いで(実際にそういう意図が本当なのかお題目なのかは知りませんが)。

 IT業界には「レガシーシステム」という言葉があります。これは概してネガティブな印象を受ける言葉で、むしろ時代遅れの「負の遺産」という感じです。昔々のメインフレーム時代に構築された基幹システムであることが多く、今でも銀行系のシステムはこれで動いているとか動いていないとか(ラフはへなちょこなので、シビアなお金と命がかかわるシステムには怖くて関わりたくない)。レガシーシステムをモダンな技術に移行する legacy migration というのがそういう企業のIT命題だったりもするわけです。でも、何とかしたいと思っても不用意に手のつけようがなくて手をこまねいてしまうものでもあったりして、うかつに移行プロジェクトに関わるとデスマーチに巻き込まれたりひどい目に遭う場合があります。

レガシーシステムとは – 意味の解説|ITトレンドのIT用語集

 IT業界では「枯れた技術」という言葉もよく使われます。これはどちらかというとポジティブな言葉です。一般的には「オワコン(終わっているコンテンツ)」みたいな印象を受けるかもしれませんが。「枯れた技術」とは、「広く使われてきたので、その知識や活用法のノウハウが十分に蓄積されているため、安心して使える技術」という感じなのです。

枯れた技術 – Enpedia
枯れた技術こそ、安定する。 | 情報を見極める力がつく30の方法 | HAPPY LIFESTYLE

やっぱり僕は英語ができない

僕は英語ができないシリーズだ。

もう恥ずかしくなるくらいほんのちょっとずつだけれども通勤電車の中では英語の勉強をしているのですよ。主にヒアリングを。つくづく思い知るのは、やっぱり人というものは、よく聞き取れなかったフレーズは自分が知っているものに脳内で強引に結び付けてしまうものなのだということ。

今日は題材は、空港のカウンターで乗る予定の便の確認をしたら機材トラブルでその便がキャンセルになっていてどうのこうのっていう話だった。


  1. 「11ぴきのねこ」
  2. 「due to mechanical problems」の「due to」が「じゅういち」に聞こえて「え?11?『じゅういち』って日本語じゃん……」。そして、11ということで、ラフの頭の中にはもはや空港ではなく、1機の飛行機とその機体を見上げる「11ぴきのねこ」(馬場のぼる)の絵が浮かんでいるのだ。

    11ぴきのねこ|絵本ナビ : 馬場 のぼる みんなの声・通販

  3. 「オフィーリア」
  4. さらに話は進み、今日は他の便もすでに満席なので、明日の早朝の便とおわびの宿泊施設を手配してくれるんだけれども、

    「we can offer you a place to stay」

    の「offer you a」の部分が「オフィーリア」に聞こえてしまい、「can オフィーリア?オフィーリアなんて動詞知らないぞ?オフィーリアできる?なんじゃそりゃ?ラフの知っている一番有名なオフィーリアといえばこれだよ」

    オフィーリア
    John Everett Millais / Public domain

話の内容を自分事としてとらえると分かりやすいよというアドバイスがあるけれども、ラフの頭の中はこんなものが頭に浮かんでいるので、まず状況の理解がすんなりといかないのである。

物騒なドキュメント

プログラムの実行結果、すなわち出力情報のことを「返値」(あるいは「戻り値」、英語ではreturn value)というが、これは「かえりち」と読む。「かえりち」はIMEの変換ではまず最初に「返り血」が出てくることが多く、そのまま提出された物騒なドキュメントをまれに見かける。

ご如才なきことながら、仕事納めさせていただきます

職場的には30日が年内最終出勤日なのだけれども、月曜日だけ出勤するのもあれなので有休を取得することにして、本日を年内最終出勤としました。本日仕事納めです。

午前中に部内の方から「この作業お願いしますね」メールをいただいたのであるが、そのメールの文言がものすごく固く、そのあまりにもの固さに失神しそうになった。

メールのタイトルを指して「頭書の件」とか、「~頂き度くようお願い致します。」「~できるように取り進め頂けると幸甚です。」とか。締めくくりは「ご如才無き事ながら、~もお願い致します。」

ちなみに「ご如才なきことながら」というのは、「既に十分ご承知とは思いますが、念のために申し上げますと」みたいな感じの意味(知る人ぞ知る官僚表現)。実用に供されているのを見たのは初めてだよ。

そんな大したことは頼まれていないたった数行のメールにここまで書かれると、もはや慇懃無礼の極みである。むしろ才能である。差出人のことを変な奴だとは思ったけれども、自分と同類・同じ匂いの人かもとか思ったことは内緒。

僕はやっぱり英語ができない – 「リコピン」とはトマトなどに含まれる赤い色素である

人間の脳はうまく聞き取れなかった表現があると、自身の知っている語彙や言い回しで補おうとする傾向があることは多くの人が経験しているのではなかろうか。これは日本語だけでなく不慣れな言語に対しても起こりうるわけで。ラフの場合は英語のリスニングがまったくできない。

さて、ミュージカル「オペラ座の怪人」の主要曲に「Think of me」というナンバーがある。この歌い出しがしばらく前まで「リコピ~ン」と聞こえて仕方がなかったのである。まぁ聞いてみてくれたまえ。

いや、もちろん曲のタイトルにもなっている「Think of me」と言っているわけであるが(歌い出しの言葉をそのままタイトルにする例は多いからね)、つい先ごろまでラフには「リコピ~ン」だったのである。最近ようやく「チンコーミー」くらいには聞こえるようになった。

wikipediaの「リコペン」の項

lycopeneを含む例文として心惹かれたもの

To provide an effective method for utilizing tomato juice produced as a byproduct in obtaining lycopene from the tomato. – 特許庁