右見る阿呆に左見る馬鹿

 たまには、世間の動きにおもねった話題をとりあげるのもよかろう。サッカーのワールドカップとやらが繰り広げられている次第。今朝もというか、午前0時から日本の試合があったらしいが、見てはいない。日曜日の夜遅くだというのに視聴率が3割超えていただと?おぉ、お祭りなんだなぁ。まぁ、それはいい。今日、月曜日。仕事を休んだ人は、その理由が何にせよ、サッカーの応援をがんばった人(かもしれない)認定は免れまい。(と、サッカーそれ自体の話題は取り上げないのはいかんせん自分の興味のなさゆえ)

そういうわけで、個人的にはこっちのニュースの方が今日の注目であるよ。画像きれいだよ。

読み間違いの思い込み

 そういえば先日、酔っぱらってエロトークになったとき、自分が「ていん、ていん」と連呼したらしくて、「それはなんだ?」と問われた。ほら、あれですよと、手でそのしぐさをしたら、「それは『しゅいん』」と突っ込まれた。「手淫」。そうかぁ「しゅいん」と読むのか。この年にして初めて知ったよ。「御しゅいん帳」みたいだねと言ったら、「このばちあたりが」と。

読了:沈黙の王 (文春文庫) [ 宮城谷 昌光 ]



中国伝説の夏王朝から、殷(商)王朝、周王朝、春秋戦国時代という古代中国を舞台にした短編集。古代中国の雰囲気を醸す難しい漢字とか表現とかあるけれども(単に自分が中国史に親しんでいないだけではあるが)、それでもわりとすっと読めるところは著者の実力か。

沈黙の王 (文春文庫) [ 宮城谷 昌光 ]

読了:教養としての「ローマ史」の読み方 [ 本村凌二 ]



1200年にわたるローマ史の軽めダイジェスト。「教養としての」とついていることから推察されるように、「ローマはなぜ帝国を築けたのか」「ローマはなぜ衰退したのか」の2点について、ローマ史のエピソードを通じて考察し、現代のわれわれはそれをどう生かしていくかというスタイルで記述されている。よって解釈が常に「現代のわれわれから考えるに」というフィルターがかかっているのだ。ゆえにいかんせん説教臭い。「ローマ史」の読み物としての面白さは塩野七生の「ローマ人の物語」の方が圧倒的に上。もっともそれは塩野七生はあくまでも作家として記述しているわけだし、臨場感があって面白いのは当たり前なんだけど。でもまぁ、教養として知っておくとよい最低限のローマ史の知識はこの本で得られるし、ローマ史の流れをざっと復習するにはお手軽でいいんじゃないかな。

教養としての「ローマ史」の読み方 [ 本村凌二 ]

読了:ゲノムが語る人類全史 [ アダム・ラザフォード ]



ヒトゲノム計画とか一時期流行っていたけれども、じゃ今結局何がどうなったの?ってところをヒト遺伝学を中心に述べたサイエンス啓蒙書。DNAに書かれている情報が全部わかったからと言って、克服された病はまだ一つもないという事実とか、犯罪者遺伝子が判ったとかいう荒唐無稽なことはありえないとか、ゲノム計画で神が意図したもうた計画をお手軽にくみ取れるようになったはずなんて思っていた人には残念な報告かもね。じゃゲノム計画は無駄だったのかというと、全然そんなことはない。分かったことだっていっぱいあって世間に還元されているんだよ。作者がイギリス人ということもあってヨーロッパの話題がダントツに多いのはご愛敬。ポストゲノム時代において適切なサイエンスリテラシーを身に着ける必要があるという警鐘が一番ためになったかも。また脚注が作者の人柄を反映していてすごく面白い。とくにスパイダーマンの下りはニヤッとした。

ゲノムが語る人類全史 [ アダム・ラザフォード ]

書くことがないと書けばいい

書くことがなければ、書くことがないと書けばいい。
ん~~、書くことが本当にないのか?何にもない一日を過ごしたのか?と問われると、地味なことはいろいろあったけれども、書くネタとしてまとまるものがない。最近平日を中心に更新するようにしているけれども、はっきり言って最近書き散らしていることってホントつまらない。せめて書くからにはオチをつけた小話くらいにまとめたいというのが本音。ただこんなことがあったとだけ書くのは不本意である。不本意ならやめてしまえ?

読了:フェルマーの最終定理 (新潮文庫) [ サイモン・シン ]



一時期大ブレークした数学ノンフィクションをようやく読んだよ。数論の出来はじめから、フェルマーの予想(彼自身は証明したと言っているが、紙面が足りなくてここには書けないとだけ走り書きを残している)、350年にわたる証明へのチャレンジの歴史、数学者ワイルズによる証明の道のり、そしてフェルマーの最終定理証明後に残されたものは?。モジュラーあたりから証明の詳しいところは分からなくなったけれども、背理法、帰納法といったことさえわかっていれば大筋を見失うこともなく読み進めていける。数学上の証明ってこんなに厳しいものなんだなぁと思うものの、それでもチャレンジせずにはいられないってところが人の人たる所以でもあるんだなぁ。そして多くの日本人数学者の業績もワイルズの証明に寄与してるんだなぁとか思いながら一気に読んだ。

wikipediaの「フェルマーの最終定理」の項

フェルマーの最終定理 (新潮文庫) [ サイモン・シン ]

通勤手段

 職場のN課長が「通勤が面倒くさい。どこでもドアか、空飛ぶ自動車、開発されないかなぁ」とのたまった。実現の可能性という点では後者に断然分があるわけだが、「空飛ぶ自動車」を「地面を走れる飛行機」と考えればもはや実現されているものと言える。実際に通勤で使えるかどうかは別問題であるが。

読了:十字軍物語 (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]




抜群に面白かった。そうかぁ、十字軍時代の200年に、地中海の突き当り中近東の海沿いにはキリスト教諸国があったんだなぁ。全然知らなんだ。

昔習ったおぼろげなる世界史の知識でラフが「十字軍」について知っていることすべて

■イスラムの勢力拡大に危機感を感じたビザンツ帝国皇帝からの応援要請を受け、ローマ教皇が呼びかけた中世ヨーロッパの聖地奪還運動。イェルサレムは奪還したもののすぐに奪い返されている。第4次十字軍はあろうことかビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを陥落させる。結局はうまくいかなかった宗教運動。

こんなくらいしか知らなかったんだよ。ドラマにしても映画にしても文学にしても、とにかくモチーフにされることの多い十字軍の歴史を、塩野七生がまとめてくれたんだから面白くないわけがない。

説き起こしは、「カノッサの屈辱」から。第1巻は第1次十字軍を中心に、中近東におけるキリスト教諸国の起こりと聖地イェルサレムの奪還。第2巻は、大した成果はなかった第2次十字軍をちょろっと述べるが、基本的にはその前後のキリスト教諸国の出来事を。第3巻では第3次十字軍から第8次十字軍までと十字軍後日譚。そして締めくくりは「アヴィニョン捕囚」。「カノッサの屈辱」から「アヴィニョン捕集」と教皇権の絶頂から衰退までが、十字軍の歴史を包含している。十字軍の失敗がローマ法王の権力の失墜を招いたわけではなく、十字軍はヨーロッパの世俗の諸侯や王たちのパワーバランスを崩してしまったことで、教皇の権力の失墜を招いたと述べる点は納得。

また、イスラム側の状況もきちんと追ってくれているので、アイユーブ朝、マムルーク朝の勃興が十字軍と密接にかかわっている点を改めて認識できた点は、感動的ですらあった。

十字軍物語 第一巻 神がそれを望んでおられる (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]
十字軍物語 第二巻 イスラムの反撃 (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]
十字軍物語 第三巻 獅子心王リチャード (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]
十字軍物語 第四巻 十字軍の黄昏 (新潮文庫) [ 塩野 七生 ]