サクッと読めるネット文章読本。SNSを中心とした媒体に掲載する、わかりやすい文章を書くための、共感を得る文章を書くための指南書。とってもわかりやすく読みやすく、しかも前向きで気持ちよく読める。そうだねぇ、こういう心持で文章を書けたらいいなぁと思った。凝った文章を書く必要はなく、自分の興味のあることを、人にわかるように書くにはどこに気を付けるかという点を改めて認識できた。いつでも気軽に手に取って、文章を書くということに対する気持ちを新たにしたくなる本。
カテゴリー: 読書
読了:ヴァロワ朝 フランス王朝史2 (講談社現代新書) [ 佐藤 賢一 ]
カペー朝に続くヴァロワ朝の歴代フランス王の紹介。カペー朝からヴァロワ朝への移行はどういうものだったのかという前書きがおもしろい。カペー朝は父親から息子へと直系男子でつながっていった王朝。その最後に男系が途切れてしまい傍系のヴァロワ伯シャルルが継いだものがヴァロワ朝。だからそんなに突飛な王朝ではない。むしろわざわざ王朝名を改める必要があったのかさえ疑問。傍系が王位を継ぐという出来事は実はヴァロワ朝の途中で2回起こっている。ところがこれはヴァロワ朝交代とはみなされていない。なぜか?ヴァロワ朝第三代王シャルル五世が王位継承について明文化したためであろう。
ヴァロワ朝は、この王位継承に関してイギリスともめたことから始まる。イギリス王エドワード三世は、カペー朝の女系を挟んだ直系の孫であることから、フランス王位を主張したのだ。ここに英仏百年戦争が始まる。百年戦争の末期にはジャンヌ・ダルクの登場、そしてルネサンスの時代へ。同時期の大航海時代に現在のカナダへ進出、宗教改革が起こると新教徒とのユグノー戦争と主要な出来事がてんこ盛りの王朝。カペー朝では有力な豪族の一つであったフランス王が、フランス王国の王たる地位を確固たるものにしていく時代なのだ。
歴代の王の紹介が駆け足で進むため、歴史ドラマを追うよりかは、こういう出来事がありましたという感じ。ところどころ地図は挿入してくれるのだけれども、いかんせん少ないので、フランスに疎い自分には大量のフランスの地名を押さえるのに苦労。人名も相当大変。
十五世紀の末にはシャルル八世が子なくして隠れ、王位はオルレアン公ルイのものとなった。オルレアン公家の祖はシャルル五世の第二王子で、シャルル六世の弟のルイである。シャルル八世からすれば、三代前に本家から分かれた分家の当主が、オルレアン公ルイなのである。
前書きの一節だけれども、シャルルとルイだらけで、一読しただけでは誰が誰か抑えきれない。さて、実際にここに登場している人物は何人でしょう。
母のルイーズ・ドゥ・サヴォワにはアングーレーム伯領、アンジュー公領、メーヌ伯領、ボーフォール伯領を、姉のマルグリットにはベリー公領の年貢収入を、その夫で義兄のアランソン公シャルルにはアルマニャック伯の旧領とノルマンディ州総督職を、叔父のルネ・ドゥ・サヴォワにはプロヴァンス・セネシャル職を贈り、まずは肉親に手厚く報いた。次が即位前から仕えた側近たちの番で、ポワシィ卿アルトゥス・ドゥ・グーフィエを宮内大侍従に、その弟のボニヴェ卿ギョーム・ドゥ・グーフィエを提督に、ラ・パリス卿ジャック・ドゥ・シャバンヌを元帥に、ロートレック副伯オデ・ドゥ・フォワを同じく元帥とギュイエンヌ州における国王総代に、ブリオン卿フィリップ・ドゥ・シャボをボルドー市長兼守備隊長に、それぞれ抜擢してみせた。
それぞれの領地と役職と個人名を押さえるのは自分には無理。というかここで重要なのは個々の名ではない。これだけの関係者が一度に重用されたという点さえ理解すれば十分かと。
ヴァロワ朝のあとは、傍系の傍系であるブルボン伯が継ぐブルボン朝へと。絶対王政を極め、フランス大革命まで続く王朝。
歴史小説家で直木賞作家でもある著者の作品であるが、誤字、脱字が目立つ。ちゃんとチェックされなかったのだろうか?「汚名挽回」をプロがものした文章では初めて見たよ。直してあげなよ。
読了:科挙 中国の試験地獄 (中公新書) [ 宮崎市定 ]
この新書はすこぶる面白い。中国、隋の時代に始まり清朝末まで実施された有名な官吏登用試験「科挙」のエピソードを楽しめる。もっとも複雑化した清朝末の科挙を例に受検案内のような説明がある。どんな勉強をする必要があるか、受験資格は、試験は何年おき、どこで実施されるか、当日のスケジュールは、どんな問題が出るのか、解答用紙ならびに解答の仕方は、採点は誰がどのように行うのか、合格発表の方法は?こういったことが悲喜こもごものエピソードとともに紹介される。科挙を受験するために必要な資格を得るための学校の試験、そして実際の科挙試験があるわけだけれども、とにかくハードな試験なので当然のように不正が横行する。人生のかかった命がけの試験だけに受験者の不正、試験官の不正も相当なもの。それを防ぐためにどのような対策がなされたのか。そして実際的な中国人の思想が生んだ科挙の位置づけの落とし所とは?科挙のメリット・デメリットの考察まで。この本、1963年の出版なんだけれども、面白さはとっても現代的だ。
読了:ラブコメ今昔 (角川文庫) [ 有川浩 ]
「クジラの彼」に続く、自衛隊を舞台にしたラブコメ短編集の第二弾。自衛隊とラブコメって取り合わせがすごいよね。笑わせて、ホロっといかせる運びはさすが有川浩。とりわけ会話のテンポが絶妙。へぇ、自衛隊ってこういう組織なんだってところも興味深い(自衛隊合憲違憲に関する意見は関係なしで)。個人的には「クジラの彼」の方が面白かったかな。ブルーインパルスの話はサスペンス?って感じ、エピローグのスピンオフも笑いの要素がもう少し欲しかったかも。「ラブコメ」を名乗るからにはね。
読了:「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる [ 立花岳志 ]
情報化社会を幸せに生きるハウツー本というか、全体的に多幸感あふれるキラキラ人生指南書。ちょっとまぶしすぎる。
好きなことを仕事にしてたくさんのお金を稼ぎ、多くの人の幸せに貢献して心身ともに豊かに満たされて生きる人生
こういう人生を目指して生きてみませんか?というのだ。「好き」というか自分の興味のあることをブログを通して発信し続け、セミナーや勉強会を開き、やがて本を出版、人脈が広がり、お金も儲けられる。そして稼いだお金には感謝しながらより高みに向けて活かし充実した人生を送る。著者が成功してきたルートと経験を紹介して、僕みたいになりたくないですか?という。価値観の相違なんだろうなぁ、それはそれで幸せだろうけれども、それ以外にも幸せの道はあるよなぁ、というのがラフの感想。
科学的根拠などはないのです。でもこれが、宇宙の法則なのです。
こうまで言われちゃうと、ちょっと宗教がかってちょっとね。
読了:オイラーの公式がわかる (ブルーバックス) [ 原岡 喜重 ]
「オイラーの公式」って知ってる?指数関数と三角関数が虚数を使うことで関連付けられている式。なんでこんな等式が成り立つの?この式の意味は何?って思うものだよね。それを、高校生でもわかるように説明しているブルーバックス。微分の定義からeを底とする指数関数、sin, cosの三角関数を微分するとどうなるか。そして、それらの関数をテイラー展開するとどうなるか。そうすると、公式が見えてくるんだよね。こんなシンプルにわかっちゃっていいわけ?ってくらい感動もの。この「オイラーの公式」の使いどころは、sin, cosは互いに影響しあう関数だけれども、それを1つの指数関数として扱うことができる、つまり計算が簡単になるという点。「オイラーの公式」についてのひとしきりの証明と説明が終わった後に、実際の応用として、振り子、交流回路、電場と磁場(マックスウェル方程式)の計算を軽くやってのけるのだが、この時にオイラーの公式でいかに計算が楽になるのかが実感できる。(説明すれば高校生でも理解できる内容ではあるけれども、一般的には大学の教養課程の最初のころにやるような内容)
「博士の愛した数式」という映画化もされた小説があるけれども、あの中にも登場していたなぁ。オイラーの公式の変数にπを入れた時の等式が(下記wikipedia参照)。
読了:1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 [ デイヴィッド・S・キダー ]
1日1ページ(実はページ数は1日2~3ページ)で、世界の教養に触れられるという雑学本だ。月曜日は歴史、火曜日は文学、水曜日は視覚芸術(美術とか建築とか)、木曜日は科学、金曜日は音楽、土曜日は哲学、日曜日は宗教というテーマ。広く浅く、主に歴史に沿って各分野の各論が紹介される。あとがきにあるように、これで興味を持ったら、さらに本を探していろいろ読んでみてくださいねというあくまでも教養入門本。なので記事内容は初心者にもやさしく読みやすい(とりわけ豆知識はほぼゴシップ)。ある程度知っている分野に関してはあきらかに物足りない。書かれているテーマはほぼ欧米の歴史に沿ったもの。なかでもアメリカに関係あるものは多い。歴史において「建国の父たち」や「南北戦争」の話題が複数回取り上げられる。音楽では「アーロン・コープランド」に2回分も割かれている(なのに「ガーシュイン」と「バーンスタイン」は合わせて1回分にまとめられていたりもするが)。
視覚芸術のカテゴリは多くの建築や絵画が出てくるんだけれども、いかんせん図がほぼない本なので、どの建築や絵について解説しているのかがわからない。google画像で絵のタイトルなんかで検索しながら読むのがよいかと。
個人的に面白かったのは「文学」と「哲学」。「文学」カテゴリでは著者名とかタイトルはよく知っているけれども、内容はまったく知らない本とか、あらすじを紹介してくれているのは面白い。「ユリシーズ」ってそういう話だったんだ。メルヴィルの「白鯨」、「誰もが知っているけれども実際に読んだことがある人は少ないだろう」には「うんうん」とうなずいてしまった。自分も登場人物は知っていても読んだことないもん。「哲学」カテゴリでは、よく見かける言葉だけれども哲学では世間一般的な意味では使われていない言葉に面食らう。今使っている言葉の定義からきちんとやっておかないと議論もへったくれもないということを垣間見、「だから哲学って誤解されるのでは?」と思うことしきり。
読了:自虐の詩 (竹書房文庫) [ 業田良家 ]
ここのところ立て続けに、ネット上でこのマンガに言及する記事を2本目にしたので読んでみた。ん~~、ラストを読んで思い出した。これ映画化されているよね。ラストシーンだけは覚えていたよ。これまでまったく覚えていなかったということは、そんなに映画はおもしろくなかったのかも(見たことさえも忘れるくらいだし)。
前半(上巻)は、ダメダメな男とそれに惚れている薄幸の女の貧乏な同棲日常生活が描かれる4コマ漫画。正直、絵も好きではないし、ストーリーもたいしたことないし、お約束落ちのちゃぶ台返しも面白いとは思えなかった。ところが、後半(下巻)で、女の過去が描かれだすと(特に中学時代)、がぜん面白みを増すのだ。じゃ、後半だけ読めばいいのかといえば、そうではない。前半があったから、この過去の回想が生きてくる。人に歴史ありなのだ。そして中学当時の親友と再会するラストで感動するのだ。
読了:物語エルサレムの歴史 旧約聖書以前からパレスチナ和平まで (中公新書) [ 笈川博一 ]
イスラエルの歴史を通史として復習しておこうと思って読んでみた。イスラエルの歴史としては、旧約聖書の時代、新約聖書およびローマ時代、第1次大戦以降の現代史を押さえておけば、まぁいいかなということを再確認。現代史は著者の経験を踏まえたエッセイ風でわかりやすかった。話題ごとに歴史の叙述が前後したり、何の話をしているのかがつかみにくかったり、若干読みにくい(落ち着いて前後の文を改めて読み込めばなんとかわかるのだが)。
読了:AI vs.教科書が読めない子どもたち [ 新井 紀子 ]
AIに東大入試を合格させる「東ロボくん」プロジェクトの責任者による話題の著書。現時点でのAIの実態を説明する科学記事の前半と、それをうけてAIによって仕事を奪われるという危惧を理解するための教育調査報告とその対策展望の後半よりなる。
「東ロボくん」プロジェクトの経験からAIに得意なこと、不得意なことを説明していく。AIはコンピュータである限り数学のロジックに直さなければ利用できないこと、入試問題で高得点を取ることができるようになってはきたが、フレームワーク問題が存在すること(チェスのAIはチェスのことしか解決できない)や、入試問題そのものやAIが導き出したその解答の意味をAI自身は理解しているわけではないこと(統計的に処理して作り出したものでしかない)などが説明される。
後半では、じゃAIが得意なことや苦手なことを、人間はどれくらい対応できているのか?というテストをしたところ、なんと簡単な理論文の読解さえできない層が存在することが明らかになった。教育がまずは目指さなければならないことは、最低限「教科書に書かれていることを読めばわかる」ことであるという。これができないと、単なる統計処理しかできないAIと能力の差別化が図れず、AIによって仕事を奪われることになるだろうという。
ラフはAIに関しては、割と楽観しているのでAIに仕事を奪われて仕事がなくなるということは、まぁ当分(ここ数十年くらい)心配する必要はないんじゃないの?とは思っている。シンギュラリティの到来に関しても、今のAIの設計を根本的に変えるような革新的思考や技術が生まれない限りは、来ないだろうなぁと考えている。